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お宝

「アニキ!オレ・・・オレ、一生ついていきます!」


ウォーリーのハッキングが完了したころ、床にへたり込んで失禁していたガイが復活して俺に飛びついてきた。一体どうした。っていうか下半身がぐっしょり濡れてて汚いからマジでやめてほしい。


「あんな化け物を、不思議な呪文で眠らせちまうなんて・・・さすがハルさんが選んだ男です!」


一部始終を見ていたガイだが、あの時ウォーリーと交わした言葉は全て旧文明の言葉だったので、意味が分かっていないのだろう。話の内容が分かったらさぞかしガッカリするに違いない。それにしてもこの変わり身の早さよ。


「オレ、ホントにもうダメだと思いました!なのに、指一本動かさずに勝っちまうなんて・・・!!男の中の男ですね!ケーブル剥いできましょうか⁉︎」


「ええ・・・いや、ケーブルはいらないよ。ズボン履き替えたら?」


ガイが俺にヘコヘコしていると、通路からクロとハルがやってきた。マキちゃんが呼んでくれたらしい。


「すごいねにーさん、こんな大きな番人を、ホントにやっつけちゃったの・・・?ついでにガイもやっちゃった・・・?」


ガイをやっちゃったってなんだ。っていうかアレですよ、感動の再会シーンですよ。抱きついてもいいんだよ?


「ホントにすごいねぇ・・・!!さすがは聖霊様・・・!!」


「えっ・・・?今回は、ちゃんと俺ががんばったんだよ?ハル?」


「またまたそんなこといってー!」


「そうですよハルさん!アニキは長距離用高圧送電ケーブルのように凄い男だったんです!あの熱い戦い、ハルさんにも見せてやりたかったぜ!あの時、今まさに殺されそうなから化け物の気をそらすため、『待てぃ化け物!!ガイを殺す前に、俺がお前のケーブルを引きちぎってくれるわ!!』って・・・」


「やめて!ケーブル剥ぎらしい演出で俺の活躍を脚色するのやめて!」


とにかく、ようやくお宝とのご対面タイムだ。もうガイと勝負する必要はなさそうだが、ここまでやったんだからなにかしらのご褒美はほしい。


「皆様、お待たせいたしました。倉庫の扉を開きますわ。」


ホログラムのマキちゃんが出てきて、宣言した。いつもクールなマキちゃんが、ソワソワしているのがわかる。そりゃそうだ、400年以上も欲しがっていたアンドロイド用のボディがもうすぐ手に入るのだから。俺の隣で、マキちゃんを初めて見たガイが「アニキ・・・聖霊様も・・・アニキパネェ、マジハンパネェ」とか呟いていたが、説明が面倒なのでもちろん無視だ。


大きな倉庫の扉がゆっくりと開き、広い倉庫の内部が明らかになっていく。完全に開くのも待ちきれず、俺たちは中に飛び込んでいった。


「にーさん、この棚にあるの、新品のAIチップだよ!!ひとつ50万ボルはするのに、200個ぐらいケースに入ってる!!」


「アニキ、獲物をパクったりしないので、見せてくださいね・・・うおっ、こいつはこの世に斬れないものはないっつう話の、超振動サーベルか?おとぎ話の武器だと思ってたぜ・・・!あっちにあるのは反物質バズーカか?すげぇ・・・!!」


倉庫内はかなり広く、壁に備え付けられた商品保全システム搭載の棚に、所せましと物品が並んでいる。ハルとガイの話を聞くだけでも、ずいぶん価値のあるものばかりらしい。だが俺はそんな2人をよそに、どんどん倉庫の奥へと進んでいった。


『ご主人様、こちらです。そのまままっすぐ。急いでくださいまし。』


マキちゃんに急き立てられて、倉庫の1番奥に鎮座する、ワゴン車ぐらいの大きさがあるカプセルの前にやってきた。


「マキちゃん、これ?」


「間違いございません。アンドロイドボディ用の、商品保全カプセルですわ。」


そう、ついに目的のアンドロイド用ボディを発見したのだ。ここまできたら俺も年貢の納め時である。身体を手に入れたマキちゃんがどれほどウザ・・・賑やかなのか想像するだけでウンザリするが、同時に楽しみなのも本当だ。


マキちゃんが興奮しながらカプセルのコネクタにアクセスする。保全されているボディの情報を読み取り、梱包を解除するためだ。


ついにマキちゃんに身体がついちゃうのかー。今のままでも良いと思うんだけどなー。でもなー。


だがすぐに、全てが思い通りにはならなかったことを知る。マキちゃんの様子がおかしいのだ。明らかに落胆している。


「・・・ど、ど、ど、どうした?マキちゃんさん?」


「ご主人様は、クソ陰湿で変態っぽいですが、こと性癖においては普通ですわね・・・。」


「え?なに?どゆこと?」


「ロリコンではいらっしゃらない、むしろ胸の大きい女性がお好みだと認識しております。修正できる範囲ならともかく、こうも骨格レベルで違うと・・・無理ですわ。」


「マキちゃんさん?さっきから何の話?」


「ええ、それにAIも搭載済みですし、無理やり追い出すのはかわいそうです。やはり私のボディにはできませんわね。・・・なんでもございませんわ、ご主人様。現物を見て頂ければよろしいかと思います。アンドロイド、起動開始。現地語データファイルをアップロード。」


マキちゃんがそういうと、カプセルのフタがゆっくりと開いた。中から白い煙がもうもうと立ちのぼり、少しずつ晴れていく。中に小さな人影が見える。座ったりかがんだりしているのかと思ったが、そうではない。立っている。二本の足で立っているが、とても小さい。俺の腰の少し上ぐらいまでしか身長がなさそうだ。


「このアンドロイドは、子ども型・・・いや、ストレートに言って、『幼女型』なのか・・・。」


「左様です。イエスロリータノータッチ、ですわね・・・。」


マキちゃんが意味不明なことをつぶやく。よほどショックだったらしい。


現れたのは、まごう事なき小さな女の子。背中まで伸びた長い髪は銀色。白いワンピースを身につけた身体は小さく、6〜7歳ほどと思われる。真っ白いワンピースを身につけているが、それに負けないくらいの白い肌。閉じた瞳から覗く睫毛は長く、とても可愛らしい、まるで人形のような整った顔立ち。


これはこれは・・・マキちゃんやハルとはまた別の方向に天使だな。自分にこんな娘がいたら、毎日さぞ楽しいだろう。おとーさんとか呼ばれてな。カッコいい父親ぶるために、さすがの俺もスーツ着て仕事に行くようになるかもしれないぞ。


そうこうしている間に、幼女の起動シーケンスが終了したようだ。ゆっくりと瞳を開け、まっすぐに俺の方を見た。可愛らしい唇が動き、言葉を紡ぐ。


「おはよう、おとーさん!・・・おとーさん?」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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