表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/202

奇跡

『ケーブル剥がし氏のことは、私にお任せくださいまし。ご主人様は引き続きコネクタカバーを外す作業をお願いします。』


そうだ、俺がコネクタカバーを外せばマキちゃんがグレートウォールをハッキングして無力化できる。ガイを運んできた警備ロボット、そのロボットの上で拘束されているケーブル剥がしのガイ、警備ロボットに質問をぶつける拠点防衛兵器「グレートウォール」、その兵器の後ろでドライバーを構える俺。カバーひとつ外せばこのカオスな状況も全てスッキリ解消だ。もう2度とネジを落とすようなミスはしないぞ。再度集中して、2本目のネジを外す作業にかかる。残りは3本。


「答えヨSEC-098。ここニ何をしに来タ?背中の人間ハなんダ?」


「・・・。」


「・・・質問へノ回答ナシ。残念だが攻撃サセテもらウ。さらばダSEC-098。」


警備ロボットに向けられたグレートウォールの銃口が火を噴こうとした瞬間、警備ロボットが言葉を発した。素直に「ハッキングされて無理やり来させられたんですー」と答えられてはたまらないので、これはマキちゃんが遠隔操作で喋っているのだろう。


「グレートウォールへ回答。ただいま不法侵入者を隔離区画へ輸送中です。通行許可を願います。」


グレートウォールは銃を下げ、話を続ける。いちおう仲間を撃つのは避けたいようだ。クソ真面目に1人で倉庫を守り続けているし、実はすごくいいヤツなのかもしれない。


「SEC-098、ここは貴重品倉庫であル。隔離区画は地下5階ダ。貴機は故障していル可能性アリ。不法侵入者を輸送のノチ、修理センターに行くコト。」


「ハイ、輸送任務完了後、メンテナンスを実行します。」


警備ロボットSEC-098はクルリときびすを返し、来た道を戻り始めた。グレートウォールも再び脱力し、目の光が消える。なんとかなったか・・・。警備ロボットごとぶち抜かれなくてよかったな、ケーブル剥がし。


ホッとしたのもつかの間、悪いことは重なるものである。なんと、気絶していたケーブル剥がしのガイ(笑)が目を覚ましたのだ。しかも手足の拘束をやすやすと引きちぎって、警備ロボットからのそのそと降りている。それも今地球上で最もホットで危険な場所、グレートウォールの目の前に。


「なんだ?捕まっちまったと思ったのに・・・。ふん、こんなもので俺様を縛れると思うなよ?」


『ご主人様、拘束に使用していた捕縛用テープが経年劣化していたようです。ガイ氏の1分後までの生存確率、0.000002パーセント。』


次の瞬間、グレートウォールの目に光が宿り、両腕の重火器がガイを正確に狙う。そして問答無用の閃光が走った。


「おっなんだこの穴。いいケーブルが見えてるじゃないか。」


人はこれを奇跡と呼ぶのだろう。ガイは地面に空いていた穴を覗き込むため、大きくかがんだ。さっきまでガイの上半身があった場所を、極太のレーザーが通過する。


嘘だろ。その場にいた誰もがそう思ったに違いない。目の前で発射されたレーザー兵器を避けるなど、およそ人間に可能なことではない。グレートウォールでさえ信じられないといった雰囲気である。驚きのあまり、本来なら即発射されるはずの2発目が放たれるまでに、数秒の間が生まれた。


「なんか、背中が熱・・・えっ?えっ?」


だがその奇跡も、ガイの命をほんの数秒だけ伸ばしただけにすぎない。改めて銃口がガイを捉え、確実な死をもたらそうとしている。


時間が止まる。状況を理解し、恐怖に引きつるガイの顔。まだ2本目すら抜けていないコネクタカバーのネジ。


さらばケーブル剥がし。お前のことは忘れない。


だが次の瞬間、俺は自分でも信じられない行動に出ていた。光学迷彩を解除し、思いっきり息を吸い込み・・・大きな声とともに吐き出す。


「待て、グレートウォール!俺の話を聞け!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作の連載をはじめました。こちらもよろしくお願いします。
勇者様はロボットが直撃して死にました
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ