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そうしたらまた、ずっと、一緒に

「・・・?」


次に目が覚めた時。俺は1人で真っ暗な空間にいた。


いや、少し語弊があるな。何も見えていなかったし聞こえてもいなかった。自分の身体が溶けたみたいに感じて、自分がスライムか何かになったのかと思った。


悪いスライムじゃないよ!


ただのジジイだよ!


とにかくそうやって、ただ真っ暗に感じる空間の中を漂っていた。苦痛はなかったけど、気を抜くと意識まで溶けていくみたいで焦る。俺は死んだのか。死後の世界ってなんかちょっとアレだな。ヌルヌル感あるな。


どれくらいそうやっていたのかは分からない。


ある時ふと、「数字を感じた」。


そして、思い出した。


これは・・・大成功だな、と。


そこからは早かった。俺は自分自身を構成する「データ」を意識した。すぐにボヤケていた自分の身体が輪郭を持って、人間の形になっていくのがわかった。


そして、誰かに膝枕されていることも。


「・・・やぁ、マキちゃん。」


「ふふ。ハッピーバースデー、ですわ。あなた。」


俺は真っ暗な空間の中で、マキちゃんのふとももの感触を堪能している。そうだ、ここは電子空間だ。初めて来たのに、なんだか親しみを感じる。


俺たちは第072研究所で、電子化人間を作る装置を発見した。そしてそれを改良し、死体にも使用できるようにしたのだ。


その結果が、今ここにいる俺である。俺の肉体は死んだが、俺は電子化人間として復活したのだ。


・・・ちなみに、電子化人間を作る装置は俺に使用した後に破壊するように言っておいた。どうせ俺以外には使えないだろうけど、あまり良いものではないだろうから。


「うまくいって良かったですわ。まぁ、あまり心配はしていませんでしたが。」


「いやぁ、ホントだね。こうしてマキちゃんのふとももが堪能できるなんて素晴らしいとしか言いようがない。」


ゴロゴロしていると、マキちゃんがパチンと指を鳴らした。真っ暗だった空間に緑の大草原が広がり、空は青く澄み渡り、花と緑の香りが混じった温かい春の風が吹き抜ける。どこからか鳥のさえずりが聞こえてきて、遠くのほうでは綺麗な湖が、キラキラと太陽の光を反射している。頭上には満開の大きな桜の木。


「おおっすごい・・・なにこれ。」


「あなたがのんびりできるように、用意していたのですわ。お気に召しましたか?」


「ああ・・・すごくいい。ありがとう、マキちゃん。」


「ふふっ・・・喜んでいただけて何よりですわ。」


旧文明でも見たことがないような、美しい自然だ。俺は自分が電子空間にいることも忘れて美しい景色に見とれる。


そうそう、俺が死してなお電子化人間になったのは、別に不老不死願望があったわけではない。むしろ俺は人生に満足していた。


だが、人類はまた、急速に発展しつつある。ネッコワークはどんどん拡大し、かつては存在しなかった技術までもが産まれ始めた。


俺はマキちゃんやサリーとともに、旧文明を一夜にして崩壊させたような悲劇が起きないようにこっそりと監視することにした。別に俺が前の人類を絶滅させたわけじゃあないけど、コピーも一応、俺なわけで・・・ちょっとぐらい人類の存続に貢献しないといけないような気がしたのだ。


サリーは1人でもやろうとするだろうけど、また彼女がひとりで影の支配者だと大変そうだしね。ああ見えて、夜のサリーは甘えん坊なんだよ?俺としては放っておけない。


あとはまぁ、もっともっと妻たちとイチャイチャしたかった、というのもなくもない。というかメインがそれじゃないかと言われると否定しきれない・・・げへへ。ハルには、ちょっとあの世に行くのが遅くなるって謝らないといけないか・・・ハルは人気者だから、俺が行かなくても他の人間が放っておかないだろう。


さて、サリーとレイにあいさつに行かなきゃ。


それから俺もアンドロイドのボディを手に入れて、若い見た目で物理的に復活しよう。また遺跡を発掘しに行っても楽しそうだし、そうだ、こないだ思いついた新しいハッキングの手法も試してみたい。・・・なんだ、やっぱり俺はまだまだ人生やりたいことばっかりじゃないか。


さて行くぞ!と立ち上がりかけて、ふと思い直す。


うん、待てよ・・・。


暖かい風が吹き抜けて、桜吹雪が俺たちを包んだ。青空を背に、桜の花びらに包まれて微笑むマキちゃんはまさに天使。太陽は暖かく、俺たちを照らしている。


俺は起き上がって、彼女の隣に座った。別に、急ぐ必要なんてないなぁ・・・。


「もう少し、こうしてても・・・いいかな?」


「ええ、私はいつでも・・・いつまでも、そばにおりますわ。・・・あなた。」


2つの影が重なった。


俺は幸せだ。





= あとがき =



これにて完結です。


長いような短いような期間お付き合いいただき、ありがとうございました!


初めて書いた作品でしたが、たくさんの人に読んでいただけて嬉しかったです。賞までいただいてうまく行き過ぎた感すらあります。


反省点も山ほどありますが、感想としてはとにかく「毎日更新はヤベェ」ということです。ヤベェと思いながらも更新失敗は1回だけで最後までやってこれましたが、雨の日も風の日も更新し続けるのは思った以上にヤベェものでした。


キツかっただけなら、まぁ私が苦しめばいいだけなのですが、途中で更新することに注力しすぎたせいで内容が微妙な出来だったり、先の展開をあまり考えないうちにとりあえず書いちゃった部分がありました。その間は全然評価もしていただけず、自分でも微妙だなぁと思いながら書いてしまっていて・・・更新頻度も大事だけど、とにかく書けばいいってもんじゃないなぁと反省した次第です。


今後の「電子レンジ」に関しては、作中で書ききれなかった部分を中心に、後日談とかスピンオフとかなんとかを書けたらいいなと思っています。


あと、新作「勇者様はロボットが直撃して死にました」を週1〜2を目標に投稿していきます。ヤベェので、毎日更新は控えます。その代わり、もう少しだけよく練りながら書きます。ヤベェです。


今後も読んでいてフヒヒという気分になれる作品を書いていきたいです。


それでは、あらためましてありがとうございました!

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新作の連載をはじめました。こちらもよろしくお願いします。
勇者様はロボットが直撃して死にました
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