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本当のラスボス

【前回までのあらすじ】


・主人公、やっとハッキングする

「え?終わり?」


俺は、思わず声を上げた。だって、ほら、これ・・・ラスボス戦じゃん?もっとこう、メラゾーマがメラだったり、ロードローラーでぶっ潰されたりとか・・・いろいろあるんじゃないの?こんな、世間話をしてる間に終了していいの?


「終わりよ。この通り、バラバラにしたわ。」


声の方に目をやると、サリーがバラバラになったコピーの残骸を見下ろして息を吐いていた。そういえばサリー、今日は服がとても綺麗というか、汚れたり破れたりしていない。あのゴリラの群れを相手に全然苦戦しなかったのだろうか。サリーさん半端ねぇ。


「マスター・・・。」


ミンがその様子を見て、静かに泣いている。


彼女の生みの親で育ての親で主人であるコピーが殺されたのだから、心中穏やかであるはずはない。だが取り乱して暴れたり攻撃してくるような様子もないので、気にする必要はないだろう。彼女はどうも、道を誤ったコピーを止めたかったようだし・・・っていうか俺もコピーと話し合いとかしたかったんだけど、ノータイムでぶった斬られてしまった。サリーさん半端ねぇ。


「じゃあ・・・なんか不完全燃焼な感じあるけど・・・帰ろっか。あれ?レイいなかった?」


「レイなら、隣の建物を壊しに行ってもらいましたわ。・・・ああ、ご主人様のナノマシンを復活させるためにも、ナノマシン生成施設は壊さない方が良かったですわね。急いで止めに行きましょう。」


「レイの攻撃力を考えたら、もう建物なんて残ってないかもしれないわね。」


「え、サリー、そんなに今のレイってスゴイの?」


「ええ、胸はないけど強烈な戦闘能力よ。」


「胸は・・・ないのか。」


「ご主人サマには、自由にできるおっぱいが山ほどあるではないデスカ!小さくたって、おっぱいはおっぱいデスよ(力説)!」


「ええ・・・なんでウォーリー、ガチで怒ってるの・・・?なんかすみません・・・。」


来た時と違い、みんなでドヤドヤしながら建物を出て行く。昔はこうやって群れている人間が苦手だったけど、いざ自分が群れてみると悪いものではない。俺もそのうち車を無駄に光らせたり髪の毛をモヒカンにしたり盗んだバイクで走り出したりしてしまうかもしれない。まぁ迷惑かけるほど人類は生き残ってなさそうだし、多少はブイブイ言わせてもいいと思う。ダメかな?


そんなことを考えながら研究所を出た。その時。


「!?」


突然、大きな爆発音が響いた。見れば隣の建物の入り口が吹き飛び、コンクリやガラス辺が飛び散っている。


「レイ、派手にやってるな・・・。」


「・・・レイじゃ、ないですぅ・・・。」


俺のつぶやきに答えたのは、弱々しいレイの声だ。それは爆発した方、もうもうと上がる煙の中から聞こえた。俺たちの視線が声の方に集中する。


煙の中から、ズシン、ズシンと、重い足音が響いた。凄まじい重量を感じさせる足音。それは不吉な響きを孕んでいて、俺の心を寒くする。


ズシン。


ズシン。


ズシン。


煙の中から現れたのは、足音と比べてとても小さな人影。それは俺とほとんど変わらない身長で、俺と似たような細身のシルエットの・・・いや、これはもう誤魔化しようがない。


それは「俺」だった。


「俺」が、右手でレイの髪の毛を掴み、引きずりながらこちらに向かって歩いてくる。レイの身体にはすでに下半身がなく、顔や身体も傷だらけで黒く煤けている。


「俺・・・!?いや、レイ!」


俺の声に、レイは消え入りそうな声で答えた。


「この身体になってから、レイはホントに滑りっぱなしですぅ・・・。きっと乳さえあれば・・・。」


下半身が吹っ飛んでるのに乳のことを気にするあたり、まだまだ余裕あるな・・・。レイを引きずっている方の「俺」は、俺の5メートルほど手前で立ち止まった。その姿はどこからどう見ても俺だが、しかしその表情は俺にできるとは思えないほどに暗く歪んでいた。俺はこの顔に覚えがある。


そいつは低い、しかし俺と同じ声で言った。


「思ったんだ。」


「・・・?」


「前回は、急いでテラフォーミングしたせいで失敗した。設定が甘かったんだ・・・時間もなかったしな。おかげで俺は孤独に悩まされ、世界は無茶苦茶になった。」


「・・・。」


「だから、今回は、ゆっくりと、設定する時間があったほうがいいと思ったんだ。だから、ナノマシン生成施設の物体構築ナノマシンを利用して、この『ボディ』を作った。前に空飛ぶ研究所に行った時に、『ボディ』の設計データを気まぐれに回収しておいてよかったよ。マキちゃんが喜ぶかと思って、取っておいたんだ。」


「・・・そのボディは、ひょっとして。」


「ああ、これは『成果物Ver.3723』だよ。前にマキちゃんが入っていた究極のボディだ。初めてアンドロイドのボディに入ってみたが・・・ふん、悪くないな。」


「・・・マジか。」


「俺」・・・いや、コピーは、最強のアンドロイドボディに自身をインストールしたのだ。ヤツは手に入れたばかりの顔で、これ以上ないほど恐ろしい表情を浮かべた。それはゾクゾクと背筋が寒くなり、吐き気がするような笑顔だった。


「このボディの力は知ってるな?この無敵の力で、お前たちを殺す。マキちゃん以外、全員だ。それから、ゆっくりとテラフォーミングの準備をすればいい。そうだろ?今度はたっぷりと時間をかけて、完璧な世界を作る・・・俺とマキちゃんのための、理想の世界を。ふふふふふふ・・・・。」


あまりに不気味な雰囲気のために思わず後ずさりしてしまう。本当にコイツは俺なんだろうか。俺ってこんなに病んでしまう感じなんだろうか。凹むなぁ・・・。


いや、今はそれよりもレイだ。ヤツの近くにいるのは不味い。


「コピー、お前・・・いいから、バカなこと言ってないでレイを離せ!お母さんが泣いてるぞ!」


「俺にもお前にも母親なんていないだろうが・・・そうだ、まずはレイとかいう、この女からだ。見ていろオリジナル。お前の仲間が死ぬところを、ひとりずつ、しっかりと、その目でな。」


暗い声でそう言うと、コピーは右手に掴んだレイの身体を軽々と持ち上げ、俺に見せつけるように突き出した。ボロボロのレイが俺を見て、申し訳なさそうに笑った。


「ご主人さまー・・・申し訳ないのですぅ・・・。」


「やめろ!レイを離せって言ってるだろうが!」


慌てる俺を見て、コピーは心底嬉しそうに笑った。そして。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーっ!」


絶叫とともにレイの身体が崩壊していく。


ヤツのボディ『成果物Ver.3723』に搭載された能力は「絶対領域」。半径3メートル以内の原子を自由に操作し、すべてを作り出し、そしてすべてを破壊する究極の能力だ。


レイは、俺の前で分解されて塵になり・・・消えた。


「レイ!レーーーーーーイ!」

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