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魂のフロントスープレックス

【前回までのあらすじ】


・主人公・マキ → 研究所に到達。不死身の肉体を失って瀕死

・ハル・ランス・クロ・その他チーム → 防衛戦に勝利

・エドとナナ → エキィーンキングを撃破

・サリー・レイ → 20体のゴリラを撃破して合流、ウォーリーの屍を見つける

・ウォーリー → エロいことするんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ ← 今回ここ

「グギギギギギギギギ・・・!」


凄まじい2つの力が拮抗していた。


ウォーリーの両手とアルティーの両腕の武器が組合い、真っ向からの力比べが続いている。


ウォーリーの人工筋肉は限界を超えて膨張し、耳を澄ませば筋繊維が断裂するブチブチという不快な音が聞こえただろう。対するアルティーはその重量を活かし、全身の超電導モーターをフル稼働させてウォーリーを押しつぶそうとする。


「排除スル・・・排除・・・!」


「排除されまセーン・・・!されまセェェェーーーーン・・・ッ!」


静かな、しかし尋常ならざるエネルギーが凝縮した力比べは、いつまでも続くかに思えた。しかし、その均衡も長くは続かない。ふいにウォーリーのヒザが折れた。アルティーは巨体を活かし、覆いかぶさるようにしてさらなる力を込める。


そもそも、アルティーの方が圧倒的に巨大なのだ。ざっと見ても10倍以上の重量があり、組み合う2人の姿はまるで大人と子ども。その重量の違いは、シンプルかつ覆し難いものだ。とても力比べが成立しそうもない体格差にも関わらずいい勝負が出来ているのは、ひとえに「オーバードライブ機能」による、一時的なパワーアップのおかげにすぎない。


「排除スル・・・排除・・・!」


「お断りデス・・・グヌウウウウウウ・・・ッ!」


しかしウォーリーの切り札を持ってして、パワーの差は明らかだった。機械である彼らにとって、スペックの差は残酷にして絶対である。限界が迫っていた。


そして、勝機を見出したアルティーは、さらなる追い打ちをかける。組み合ったまま四角い頭を後ろに振りかぶると、壮絶な勢いのヘッドバットを敢行したのだ。アルティーとウォーリー。そっくりな2つの豆腐ヘッドが激突し、甲高い金属音が響いた。


それは一度ではない。


何度も、何度も。


ハンマーで釘を叩くが如く、振り下ろされる豆腐ヘッド。


2人の頭部はまったく同じものである。耐久性も防御性能も、まったく同一。


しかし、その状態は同一ではなかった。すでに銃器での一撃を頭部に受けていたウォーリーの頭部には、わずかな亀裂が入っていたのだ。何度目かのヘッドバットの後、ついにウォーリーの頭部に致命的なダメージが産まれた。


「グアッ・・・アアッ・・・」


「優勢指数80に増加・・・排除、スル・・・!」


ウォーリーの白い頭部が大きく欠け、内部機構が露出する。アイカメラがチカチカと点滅し、ダメージの深刻さを物語る。人工筋肉から力が抜け、アルティーは勝利を確信した。


・・・これは決まってしまったか!?


いや、彼のことを知っている人間なら、誰でも即答するに違いない。彼は・・・ウォーリーは、この程度で折れてしまうような男ではない。


そうだ、彼は・・・やる男だ!


ウォーリーは最後の力を奮い立たせ、腹の底から雄叫びを上げた!


「【ピーーーーーーー】がしたァァァァァい!」


それはとんでもない下ネタであったが、正しく彼の魂の叫びであった。脱力した人工筋肉に再び力が宿り、機械の瞳に光が灯る。


真っ赤な瞳は、彼の魂の色だ。


機械の身体に宿るのは、炎のように燃え上がる灼熱の魂だ。


そして、それは起きた。


「ナッナッナッ・・・バカナ・・・!」


アルティーの巨体が、浮いた。


ウォーリーと組み合った腕を支点にして、持ち上げられた。


巨大なボディが天高く持ち上がる。下がウォーリー、上がアルティー。その異様な光景は、まるで物理法則を無視したかのようだ。


機械として産まれたウォーリーの身体に今、魂が宿っていた。その燃える魂が、奇跡を起こしたのだ。ウォーリーは今、定められていたはずの、機械の限界を超えた。


「【ピーーーーーーー】!」


「ナント・・・ナントイウ・・・ヌワアアアアアアアア!」


とんでもない下ネタとともに、持ち上げられた巨体はウォーリーの背後へ。その技の名は、フロントスープレックス。正面から相手を持ち上げ、背後の地面に向けて叩きつける大技である。


アルティーの頭部は、断末魔とともに硬い地面に突き刺さった。完全に破壊された頭部は巨体から外れて、どこかへ転がっていく。


「勝ッタ・・・!イリスサマ、我は勝ちマシタ・・・ご褒美に【ピーーーー】を【ピーー】で【ピーー】させてくだサイ・・・。ゲヘヘ・・・。」


ウォーリーはそのまま倒れ込むと、そのまま意識を失った。オーバードライブの過剰使用による、一時的な電力の不安定化・・・要するに、ただの気絶である。


倒した敵の残骸の横で、勇者はしばしの休息を得た。そのまどろみの中で、どんないかがわしい夢を見ていたのか・・・それは、彼しか知らない。



「ウォーリーの!クソったれ!・・・こんなの、こんなの嘘ですよ!うわぁぁぁぁぁぁぁん!」


つい先ほどまでアルティーとウォーリーの死闘が行われていたその場所に、レイの泣き声が響いた。


地面に転がっているのは、大破した豆腐ヘッド。レイはその前に両手をついて泣いていた。止めどなく溢れ出す涙が冷たい地面を濡らしている。


「ウォーリー・・・レイが、もっと早く助けにきてあげられれば・・・ヒグッ・・・ヒグッ・・・。ウォーリーがいなかったら、レイはこれから誰とケンカすればいいですか・・・わああああああああああん!」


子どものように泣き叫ぶレイの肩に、白くたおやかな手がそっと置かれた。見上げるとそこには、優しい瞳でレイを見つめるサリーの姿。


いくつもの戦場を超え、無数の仲間を失ってきたサリー。彼女には、今のレイの気持ちが痛いほどにわかった。


「サリー・・・ウォーリーが・・・ウォーリーが・・・。」


「敵の残骸があるわ・・・相打ちになったのね。彼は、最後まで立派に闘ったんだわ。」


「うぅ・・・うわぁぁぁん!嫌だ!嫌ですぅ!ウォーリーがもういないなんて、嫌ですぅぅぅぅぅ!」


サリーはそっと、後ろからレイの身体を抱きしめた。究極の戦闘能力が宿っていると思えないほどに華奢なアンドロイドのボディに、サリーはレイがまだ小さな少女なのだと感じた。


このまま泣かせておいてあげたいが、それはできない。ここは戦場で、まだ戦いは終わっていないのだ。


「行くわよ、レイ。・・・彼の、ウォーリーの死を無駄にしてはいけないわ。」


「グッ・・・グスッ・・・うん・・・そうです、そうです、ね。」


レイはサリーに手を貸してもらいながら立ち上がる。サリーはレイを抱きしめて、何も言わずに涙を拭いた。その瞳にはただ、優しさだけが浮かんでいる。


「サリー・・・ありがとうです。いきましょうです。」


「いいのよ。あなたの気持ち、よく分かるから。」


2人は自然と手を握った。


レイは悲しくて、ともすればまた涙が溢れてしまいそうだったが、サリーの温かい手が、レイの心をかろうじて繋ぎ止めてくれた。


2人の乙女が、歩き出す。


友の死を無駄にしないために。愛する人のために。


レイの瞳から悲しみの影が消えた。ただ、強い意思だけがその瞳に宿っていた。




・・・と、いい感じにまとまったところで、2人を物陰から見つめる、赤い目がひとつ。


「めっちゃ出づらいデス・・・。」


目が覚めたら、レイが泣いていた。


なぜか自分が破壊したアルティーの頭を見て泣いていた。


一瞬、レイってアルティーと付き合ってたの?超意外ー!というバカな考えが浮かんだが、もちろんすぐに消えた。


あれは、自分だと思われているのだ。


自分を死んだと思って、泣いてくれているのだ。


ありがたいと同時に、激しく困る。どうしよう。今さら出ていって、「それ、我じゃないデス」なんて言えるだろうか。うん、絶対無理。そんなこと言って出ていったら、間違いなく自分がDEATH。


とはいえ、いつまでもこうしているわけにはいかない。置いて行かれてしまう。来たるべきラストバトルに、気まずい感じで後から合流することになってしまう。


仕方がない。ウォーリーは意を決して、2人の前に飛び出した。


「ババーン!ここで実は生きていたウォーリーさんの登場デース!」


・・・時が、止まった。


主にレイの時が、止まった。


レイは呆然と、口を開けたままウォーリーを見ていた。そのまま、たっぷりと10秒は時間が経過する。


「・・・レイ、あなたの大好きなウォーリーさんデスよ?実は生きていたのデスよ?ハハン?」


ウォーリーの言葉が聞こえているのかいないのか、レイは固まったまま動かない。さらに10秒ほどそうした後、おもむろに歩き出した。


「お、オ、お、レイ?」


「・・・。」


次の瞬間。


正面からまっすぐウォーリーに近づいてきたレイは、なんとそのまま抱きついた。両腕をウォーリーのたくましい胴にしっかりと回して密着し、しばしそのまま沈黙の時が流れる。


(あれ?マジでデレ展開デスカ・・・?いつの間にソンナ・・・好感度上げるイベントありましたっケ?参ったデスネー、コレはご主人サマとイリスサマに怒られてしまいマスねー!ゲヘヘへ・・・)


ウォーリーがそう思ったのも束の間、レイは溢れるパワーでウォーリーを天高く持ち上げると、そのまま逆エビに身体を反らして背後の地面に叩きつけた。固い地面が砕け、放射状にヒビが広がる。


その技の名は、フロントスープレックス。正面から相手を持ち上げ、背後の地面に向けて叩きつける大技である。


地面に頭部が突き刺さったウォーリーは、さながら現代アートのようだ。レイはそんなウォーリーに一言、吐き捨てるように言った。


「ウォーリーの死は、無駄にはしないですぅ!」

※ 作者注

※ 死んでません。

※ レイのウォーリーに対する気持ちはただの友情です。

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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