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逆プロポーズ

【前回までのあらすじ】


・サリー → 20体のゴリラと乱闘中

・ウォーリー → アルティメットグレートウォールにボコられる

・主人公・マキ → 研究所に到達。不死身の肉体を失って瀕死

・ハル・ランス・クロ・レイ・その他チーム → 防衛戦に勝利

・エドとナナ → エキィーンキングを撃破、しかしエドが・・・ ← 今回ここ

「エド・・・ナナだよ・・・エド・・・。」


少女は、泣いていた。


少女型アンドロイドは、泣いていた。


戦闘に影響が出ないよう、大きな感情のブレを抑制された彼女が、泣いていた。


座り込む彼女の前には、血溜まりに沈む小さな身体。


全身ボロボロで、至る所から血が流れている。その血溜まりは小さな身体に対してあまりに大きく、命を失うのに十分すぎるほど出血していることに疑いの余地はない。


胸の上下動はない。すでに呼吸も止まっているのか。


体温を失いつつある身体を前に、少女はただ、座り込んで泣いていた。


泣くことしか、できなかった。


「エド、やだよ・・・エド・・・。」


そこへ、ズリズリと身体を引きずりながらやってくる巨体がひとつ。


「ナナ様・・・。」


「ドラちゃん・・・エドが・・・エドが・・・。」


「ナナ様。コックピットの座席の下です。お早く。」


「え?」


言われるがままにドラちゃんのコックピットを調べると、赤い十字が入ったカンがひとつ。


「これ・・・なに?」


「ハリアードラゴンはその身体にひとつ、どんな傷病も癒やす奇跡の薬を宿しているのです。今が使い時でしょう。」


それは、医療用のナノマシンであった。もともと旧文明において、宗教上の理由などで不老不死のナノマシンを持たずに生きるパイロットのために搭載されたものである。使い捨てで効果も持続しないが、一度だけ、どんなケガでも治療することができる・・・まさに奇跡の薬である。


ナナはカンを開けて、エドの傷に振りかけた。ナノマシンは血管から体内に入り込み、瞬く間にエドの身体を治療する。


その効果は劇的だった。


「・・・あれ、生きてる?なんで?」


「エド!よかった!」


「ナナ・・・。」


まだぼんやりする頭で、エドはナナの切り傷を見た。血はほとんど出ておらず、バチバチと小さな火花が散っている。それは彼女が人間でないことを、如実に物語っていた。


「ナナ・・・ナナは、アンドロイド、なんだね。」


「・・・えっ!」


エドの言葉に、ナナは、思わず顔を伏せてしまう。


(・・・ばれちゃった。)


最初は、ちょっとしたイタズラ心だったのだ。適当なタイミングで、「じつはアンドロイドだったの!」と打ち明けるつもりだった。


だがエドと仲良くなるうちに、言い出せなくなってしまった。


嫌われるかもしれない。


もう、遊んでくれないかもしれない。


結婚してくれないかもしれない。


・・・もう、手を繋いでくれなくなるかもしれない。


そう思うと、いかに楽天的なナナでも、打ち明けることができなくなかったのだ。


ナナはエドの目を見ることができなかった。先ほどまでとは別の理由で、涙がじんわりと溢れてきた。


(なにかいわなきゃ・・・エドに、きらわれちゃう・・・。)


そんなナナを見て、エドはふっと笑った。


「良かった!」


そして、ナナの手を握った。温かい手だった。


「・・・ほぇ?」


「アンドロイドなら、ボクが直してあげられるから!レイさんで練習したから、元通りキレイにくっつけてあげられるよ。生体アンドロイドの修理にはコツがあってね・・・。」


「・・・エド・・・。」


ナナは顔を上げた。エドは笑っていた。笑いながら、修理のコツを難しい専門用語を使って説明していた。


それはいつもと変わらないエドだった。


「・・・エド、ナナのこと、キライにならない?」


「え、なんで?」


「・・・ナナ、おおきくならないよ?おとなにならないし、あかちゃんも、うめないよ?」


ナナの言葉に、エドは顔を真っ赤に染めた。どうやら、失った血液もすっかり補充されたようだ。


「ボクは気にしないけど・・・ナナが気にするなら、ボクがナナの身体を作ってあげるよ。大人の身体。」


エドは恥ずかしそうに言った。ナナは握った彼の手が熱くなるのを感じて、なんだか安心した。


「・・・ナナと、けっこん、してくれる?」


「もちろん。ナナは・・・ボクで、いいの?」


「エド・・・だいすきーーーーー!」


「ほげぬぎょぐう」


ナナが飛びつき、片方しかない腕でエドの身体を思いっきり抱きしめた。ゴキリと不吉な音がしてエドの顔が真っ赤になり、それから真っ青になる。口から泡が出始めた頃、ようやくナナはその手を離した。


エドは白目を剥いていたが、その顔はどこまでも幸せそうだった。


「ドラちゃん、たいへん!おくすりちょうだい!」


「・・・はぁ。あれはひとつしかありませぬ。」


ぐったりと横たわる彼の前に、ナナはまた座り込んでしまった。


「エド、やだよ・・・エド・・・。」

※ ギャグ時空が展開しているので、エドは死にません

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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