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突入開始

【前回までのあらすじ】


・エドとナナ → エキィーンキングと決死の戦闘中

「それじゃあ・・・ここは任せたよ。」


ナナとエドが必死の戦いを始めるより2時間ほど前。俺たちはファイヤーアントの人たちが発見した、第072研究所に通じる地下通路の入り口にいる。


地下通路と言っても、見た目はただの岩山に開いた人工のトンネルである。今までもきっとたくさんのレイダーがお宝目当てに侵入してきたのだろう。要するに普通の遺跡だ。今まで研究所にたどり着く人間がいなかったのは、単に内部が複雑に分岐しているのと、凶悪なナマモノが多く生息しているせいだと思われる。


この入り口には、ハルとランスさん、イヌのクロとネコのシロ、それからファイアーアントのメンバー30名が残る。予想される敵の増援を足止めし、敵の本体に向かう俺たちへの追撃を防ぐ役割だ。


といっても今のところ、周囲には草の1本も生えていない乾いた荒野が広がっているばかりで、敵の姿はない。ここまで対策が見られないとなると、コピーは本当に、この侵入ルートを把握していないのかもしれない。


「ここは任せて。後ろは安心していいわよ。」


「ああ。とっとと片付けてこい。」


ハルとランスさんが、それぞれ大きな銃をかついで笑った。足元ではクロが久々にハルと一緒にいられて嬉しいのか、それとも戦いの予感に心を踊らせているのか、尻尾をブンブン振っている。シロはいつもどおり、クロの頭の上で熟睡だ。


ランスさん親子の達人的な射撃能力に加えて、クロの強烈なプラズママシンガン。それに加えてファイヤーアントの30名が加われば、相当な戦力が集中しているといえるだろう。


全員で突入しても良いような気がするのだが、トンネル内部では何が待ち受けているのか分からない。毒ガスなどの即死トラップがある可能性を考慮して、簡単には死なないメンバーで行くことになった。


「それじゃ、サリー、ウォーリー、行こう。」


サリーは黙って頷き、ウォーリーも親指を立てて見せた。


「ウォーリー、イリスさんとのお別れは済んだの?」


「問題ありまセン。必ず戻りマスし。」


「・・・そっか、それもそうだね。」


頼れる男の言葉を聞いて歩きだそうとすると、背後からグッと服の裾を引っ張られるのを感じた。頭だけで振り返るのと同時に、柔らかい感触が俺の唇を塞ぐ。


「・・・!?」


「・・・んっ・・・。」


そっと糸を引いて離れた唇の先に、顔を真っ赤に染めたハルがいる。うつむいて、俺と視線を合わせないようにしていた。最近のハルさんは大胆だ。もちろん大歓迎だけど。


「にーさん、あのね・・・。」


「おっ・・・う、うん・・・なななんデスか・・・?」


ハルは顔を上げて、俺の目をまっすぐに見た。その目は潤み、いつもの元気なハルに色っぽさと可愛らしさが加わっていて・・・思わず戦闘前に出てくる生物の本能に従ってしまいそうになる。ハルは、その濡れた唇で、はっきりと宣言した。


「アタシ、にーさんの子ども、産むわ。」


「・・・おっ・・・えっ・・・それは・・・」


「・・・いや?」


ハルは狙っているのだろうか。これを天然でやっているとしたら彼女は天才だ。胸元が油断している巨乳美少女に、潤んだ瞳で「自分の子どもが産みたい」と言われて嫌がれる男が存在するわけがない。彼女のマッチョな父親がすぐ横で見ているとしても、絶対にノーとは言えないだろう。少なくとも俺には無理だ。


「嫌じゃないです。」


ハルは花が咲いたようにパッと笑った。その笑顔だけでご飯3杯いけるよ。


「良かった!最低でも3人は産むからね!」


「おお・・・うん、わかった。ありがとう。」


「だから・・・」


「んん?」


「ちゃんと、帰ってきてね?」


最後の言葉は尻すぼみになって、最後の方は聞き取れなかった。だから俺は安心して欲しくて、きっぱりと言う。


「大丈夫だよ、ハル。みんなが連れて帰ってくれるから。」


ハルはポカンとして聞いていたが、マキちゃんとサリーが微笑み、ウォーリーが親指をグッと立てるのを見て笑った。


他人任せと言うなかれ。俺が口で約束するより、ずっと信頼してもらえるのだから。


「もう、なんだか・・・にーさんらしいね。みんな、にーさんをよろしくお願いします。」


そう言って、ハルはお辞儀した。皆も笑って請け負った。


「ああ、ハルも、自分の命を最優先するんだよ?・・・あの、その、俺の・・・子ども、産んでくれるんだろ?」


俺の言葉に、ハルはまたパッと顔を赤くした。最初に言ったのはハルなのに。俺も恥ずかしくて真っ赤になる。


「わかった。なるべく傷のない身体で待ってるからね!」


「うん・・・えっと・・・なんだ・・・楽しみに、してる。」


「えへへ・・・にーさんの、エッチ!」


「うぉっほん!」


ラブコメ展開に終わりを告げたのは、野太い咳払いだ。声の主である彼女のマッチョな父親が俺を見るので軽くビビッたが・・・特に怒っているわけではないらしい。


「そういうのは父親の見てないところでやりやがれ・・・。まぁなんだ。とっとと行って、帰ってこい。」


「了解です。ランスさん・・・お義父さん?」


「ケッ!まだ早ええよ!」


いつの間にかミリィさんも近くに来て、俺たちのやり取りを生暖かい目で見守っていた。


「イリスさんはウチの非戦闘員と一緒に『アリノス』で安全な場所に保護しているから安心して。みんなどうか無事で、また会いましょう。」


ミリィさんの頼れる言葉に安心して、俺たちは今度こそ足を踏み出す。アタックチームの作戦開始だ。


「ミリィサマがいれば安心デスね。行きまショウ、『ウォーリーと愉快な仲間たち』!」


「ええ、時間がもったいないわ。『チーム・サリー』行動開始!」


「参りましょう、『マキちゃん親衛隊』の皆さん!」


適当に号令をかけるメンバーたち。俺は突っ込まずにはいられなかった。


「みんな、チーム名作るなら統一してよ・・・。」

あけましておめでとうございます。

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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