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初めての遺跡

「にーさん、見えてきたよー。あれがモノリス遺跡。」


俺は今、トラックの荷台に乗って荒野を移動している。俺の隣にはハルがぴったりとくっついて座り、クロがそのハルの膝に頭を乗せて、ゆったりとくつろいでいる。トラックには屋根もないので、焼けるような日差しを避けることができない。ハルは初めて会った時と同じように、ボロいマントを羽織って日よけにしている。荷台の少し離れたところにガイが座り、ハルと俺を交互に見ては貧乏ゆすりを繰り返している。まるでイチャイチャしているカップルを見てイライラしているかのような・・・ん?俺か?俺たちなのか?


『ご主人様、チェーンソーを持ったホッケーマスクの大男にはお気をつけください。最初に殺害されるのはバカップルと相場が決まっておりますわ。』


誰がバカップルだっていうんだ・・・ちょっと座る位置が近いだけだろうが。あれっハルさん、どうして腕を絡めてくるんです?柔らかいものが当たってますよ?まぁマントしてるから外からは見えないかなあはははははは


『なんなら私がチェーンソーで叩き切って差し上げますわ。』


マキちゃんの空気を察したクロがそっと立ち上がり、荷台の端に移動して丸まっている。おい、ご主人様のピンチだぞ。たまには助けてくれてもいいんだぞ。


トラックの進行方向に、高層ビル群が見えてきた。そう、荒野の真ん中に、突如として高層ビル群が存在しているのである。このビル群が通称「モノリス遺跡」。町ではこの遺跡に入り、役立つものを拾ってくることを「発掘」と呼び、発掘する人間を「レイダー」と呼ぶらしい。遺跡は野生の機械、町の言葉でいうところの「ナマモノ」が住みついていたり、凶悪な罠・・・たぶん、ビルのセキュリティシステムだろう・・・が仕掛けられていたり、番人・・・警備ロボットかな?・・・が守っていたりと、かなり危険なことで知られている。それでも普通には手に入らない貴重な物資が手に入るため、発掘に来る人間が後を絶たない。特に若者の間では度胸試し的なノリで発掘に来る者が多く、たくさん稼げる者は一目置かれるので、こぞってやってくるようだ。今乗っているトラックも、遺跡に行く者を輸送するためのレイダー用チャーター便で、比較的安く遺跡まで連れて行って貰えるし、回収した物資を運んでもらうこともできる。


それにしても、ここにきて初めて、冷凍前にあった建物を目にすることができて感動している。高層ビル・・・高層ビルだぞ?まさかただのビルを見て感動する日が来るとは。警備ロボットもいるということだし、システムが生きているビルがあるのかもしれない。うまくいけば俺に何が起きたのか、解明する手がかりを得られる可能性がある。


「貴様・・・ピクニック気分で来ているようだが、いつまでもそんな風に浮ついていられると思うなよ。」


ビルを見てそわそわしていると、ガイが鋭い目つきでこちらをにらんできた。


「発掘にかけて、町で俺より上手いやつはいない。俺が『ケーブル剝がしのガイ』と呼ばれるゆえん、見せつけてやろう・・・!」


なんだかスゴイ自信だ。その異名はカッコいいのか悪いのかよくわからないが・・・。


「ガイはね、町ではレイダーとしてちょっと有名なんだよ。まだ若いのに、色んな遺跡からケーブルを山ほど取ってきて稼いでるからケーブル剝がしって呼ばれてんの。」


ハルが小声で教えてくれる。


「・・・俺、初心者なんだけど。勝てなくない?」


それを聞いたハルは、んー、と考えるような素振りを見せてから、ニカッと笑った。まぶしすぎる笑顔に、思わず胸が弾む。


「そこはさ、『絶対勝ってやるから安心しろ!』ってカッコつける場面じゃない?・・・なんてね、なんだかにーさんなら勝ってくれるような気がするんだよねー?」


ふふっと笑いながら、ハルがさらに身体を寄せてくる。ハルに言われると、どういうわけだか本当に勝てそうな気がしてきた。


『ご主人様、いい年こいてらっしゃるのに、あまりにも簡単に小娘の手のひらの上で転がされていて、いっそ清々しいですわ。』


ほっとけ。


ほどなくモノリス遺跡の中心部に到着した。周りのどこを見ても、高層ビルに囲まれている。近くで見るとビルはものすごく古びており、全体的に埃っぽく、窓が割れている部分も目立つ。


全員トラックの荷台を下りて、いよいよ勝負の始まりだ。


「条件は簡単だ。今から4時間後にここに集合。回収したものをジャンク屋で査定して、金額が高い方が勝ち。いいな?」


「俺は初心者なんだけど、ハンデくれない?」


ガイは呆れたような表情で肩をすくめると、何も言わずに荷物を担いで歩き出した。


「ほらほらにーさん、私たちも行くよ!ぜったい、負けちゃヤだからね!」


ハルは元気に笑うと、スッと俺に顔を寄せた。ほっぺたに、柔らかい感触。


「勝利のおまじない!」


きっと俺は真っ赤な顔をしていたんだろうが、気にはならなかった。ハルも可愛らしい顔を真っ赤に染めていたからだ。


『ご主人様、さっさと出発いたしましょう。最優先回収目標はチェーンソーです。』

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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