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植林計画

「このあたりがねぇ、とーさんが新しい作業場のために買ったけど、そのままほったらかしになってる土地だよ。」


ハルに案内されてやってきたのは、ハルの家から歩いて10分ほどのところにあるサラ地である。申し訳程度の柵で囲まれているだけで何もない、まっさらな土地だ。雑草の1本も生えていない、乾いた茶色の土地が広がっている。広さはちょっとした陸上競技場ぐらいはありそうで、かなり広い。クロが嬉しそうに走り回っている。あいつ本当に自立兵器か?


「すごいな…むちゃくちゃ広くない?」


「そーね、とーさんはこの辺じゃ人気者だからね。適当な広さの土地を探してたら、友達が安く譲ってくれたんだってさ。で、勢い込んで買ったはいいけど、広すぎて使い方が決められなくてそのままになってるってわけ。」


はー、人気者だと土地まで安く買えるのか。冷凍前は人気どころか、生きた人間とほとんど接触せずに生きてたから知らなかったぜ。それにしてもこんなに広いとは、とても都合がいい。


マキちゃんをハルとランスさんに紹介した後、もちろん木にハッキングする手法も2人に披露した。最初は半信半疑だった2人も、目の前で適当な部品の生成を実演したので、信じざるを得なかったようだ。


「コイツはヤバイ技術だ…お前さん、これは秘密のままにして、コッソリ利用する程度にしておいたほうがいいな。少なくとも準備もなしにホイホイと人目に晒すのはヤバそうだ。もちらん、聖霊様のことも含めてな。」


ランスさんは素敵な重低音ボイスでそう言った。やはり隠して正解だったらしい。今後は慎重に使うことにしよう。当面はランスさんの部品探しに限定して・・・そう思ったのだが、少し問題があった。町に生えているプラズマライフルの木が少なすぎるのだ。


今までは町外れに生えている、2〜3本の木を利用していた。しかしほとんど毎日部品を生成させていたことで、木が明らかに弱り始めてしまった。小さいパーツを数時間かけて生成するような使い方であればそうそう弱ることはないと思っていたのだが、そうでもなかった。頻繁に部品を生成しすぎているのか、それとも町に自生している木は、ジャングルに生えているものより生命力が弱いのかもしれない。それに、適当な路上に生えてる木を使いつづけると、人に見られてしまう可能性がある。今のところうまくいっているが、いずれ好きな部品を自由に生成して、お手軽に入手しているところを目撃されてしまうだろう。


そこで考えたのが、プラズマライフルの木そのものの栽培である。人目につかない場所で木を育てて、そこから欲しいものを生成すれば万時解決である。そこで昨晩、ハルが作ってくれた美味しい夕食を食べながら質問してみた。


「ハル、プラズマライフルの木って栽培できないのかな。どうやって増えるんだ?タネとかあるの?」


「なにいってんのよ。おしべとめしべがたくさんぶら下がってるじゃない。」


「…え?」


「だからー。いつも使ってるプラズマライフルって呼んでるのがあの木のおしべで、マガジンって呼んでるのがめしべだよ。」


「…え?なんだって?」


つまりこういうことらしい。人間がやってきて、適当なプラズマライフルに適当なマガジンを装填する。これが受精。弾を撃ち尽くして、マガジンを捨てる。もうこの時点で受精したマガジンはタネになってて、捨てたマガジンから芽が出て、木が生えてくる。


「なんでこんなおかしな仕組みなの…?」


「べつにおかしくないよ?いい武器を実らせれば人間や野生の人型ロボットが使う。誰かが使えば世界中にタネが運ばれるし、プラズマライフルを使うところは戦場だから、養分になる死体も多い。理にかなってるでしょ。自然ってのは良く出来てるんだから。」


「自然・・・しぜん・・・?」


語っているハルはなぜかドヤ顔全開である。とにかくこれがこの世界の自然らしいので、納得するしかない。


とにかくこの土地を、立派な「俺専用プラズマライフルの林」いや、「俺専用プラズマライフルの森」にしてやることに決めた。それにはいくつかの準備と実験が必要だ。


段取りをアレコレと頭の中で組み立てていると、路地の向こうから見知らぬ男がノシノシと歩いてきた。でかい。俺よりも頭一つ分は身長が高く、太ってはいないが、かなりがっしりとした体格。黒い髪を短く刈り込み、その日焼けした顔は引き締まっていて、いかにも真っ直ぐなスポーツマンという雰囲気を出している。その顔は荒々しくも整っていて、若武者といった雰囲気。要するに、とてもイケメンだ。つまるところ、俺の苦手な・・・いや、「とても」苦手な人種であることがひと目でわかった。こんな爽やかイケメンとか、何もかもが俺と対極すぎて絶対友達になれない。そう思っていたが、ありがたいことに友達になる必要はまったくないことがすぐにわかった。


イケメンは俺の目の前までやってくると、なんの遠慮もなく唸りを上げて右手を振るい、俺の顔面をぶん殴った。「ぶん殴った」という表現がまさにぴったりの、情け容赦のない見事な一撃である。視界が回転し、首がゴキリと音を立てた。地面に倒れて口の中に鉄の味が広がる。もちろんナノマシンのおかげで痛くはない。


「貴様ッ!!ハルさんになにをしたッッッ!!!」


ハルが慌てて倒れている俺に駆け寄り、優しく抱き起こしてくれる。別に痛くもないし意識もハッキリしている。というかこの数秒で今のダメージはほぼ治ってしまった。すぐに立ち上がれるが、せっかくなので成り行きに任せる・・・お嬢さん、胸が当たってますよグヘヘ。


「にーさん、大丈夫⁉︎・・・ちょっとガイ!アンタいきなりなにするのよ!」


ハルに睨まれて、ガイと呼ばれたイケメンは少したじろぐ。


「い、いや、俺はハルさんが悪い男に引っかかってると聞いて・・・それで・・・。」


だれが悪い男だ、だれが。


『ご主人様、15歳の女性に抱き起こされてグヘヘとか言われるのは、一般的な倫理観に反する行為かと思われます。』


心を読むなコラ。

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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