マキ姉さま捜索記録
レイ視点の探索記録です。
-- マキ姉さま捜索記録 --
-- 記録者:美少女アンドロイド レイちゃん --
// 探索1日目
ご主人さまがいなくなりました。
間違いなく、マキ姉さまを探しに行ったのです。レイは特に驚きませんでした。というのも実はマキ姉さまと別れた時、ご主人さまなら間違いなくそうするだろうと姉さま本人から通信で言われていたのです。
・ご主人さまは無謀にもひとりで飛び出し、しかるのち酷い目にあっているだろうから助けにいくこと。
・全員でなく、レイひとりで探しにいくこと。
この2つがマキ姉さまからの主な伝言です。さすが姉さま、完全に予言したとおりの事態になっています。レイは姉さまの言葉通り、ひとりでご主人さまを探しに行きました。ナナちゃんとハルさまが最後までついてきたがったですが、マキ姉さまの言葉を伝えると納得してくれたです。
さぁ、がんばって探すです。
ご主人さまに取り返しのつかない何かがあったら(ないと思うですが)、姉さまに顔向けできないのです。
// 探索2日目
ご主人さまの居場所は目星がついています。まずは研究所の爆心地に向かったはずです。
なので探す方向は迷わなくていいのですが、広い荒野を徒歩で移動している人間を見つけ出すのは思ったより難しいです。
荒野にはネッコワークを構成しているレーダーウサギが適当に生活しているのですが、彼らの監視は役に立ちません。ご主人さまはネッコワークに関して最高の権限を持っているので、仮に見つけてもデータを改ざんされてしまうのです。
なのでどうにかして目視で家出ハッカーを見つけなければならないです。クソ面倒ですが仕方ないのです。
トラン・ホークにぶら下がって空から探していますが、行けども行けども荒野ばかり。さすがご主人さま、存在感の薄さは筋金入りです。
// 探索3日目
さっぱりご主人さまが見つからないです。
でも大空を飛び回るのは気持ちいいものです。アンドロイドの身体があった頃を思い出します。
ちなみにレイのボディはボロボロだったのですが、エドさまが修理してくださると言ってました。いくらエドさまでもほとんどスクラップになった半生体アンドロイドが修理できるとは思えないのですが、もし修理してもらえたらまた自分の身体で空が飛べるですね。
いやっほぉぉぉぉう!
// 探索4日目
全然見つからないです。
ご主人さま、存在感なさすぎです。
// 探索5日目
せっかくなので、研究所の残骸データを収集することにしたです。
上空から発見した残骸の大きさ・材質・質量なんかを記録するです。
たぶんご主人さまも同じことをしているはずです。
// 探索6日目
上空から見ると、ハンターさんや野盗さんをたくさん見かけるです。
ご主人さまは襲われてないでしょうか。クソ弱いですから、少し心配です。
// 探索7日目
早くもデータ収集が面倒くさくなってきたです。
3時間ぐらいかけて、カメラに映った残骸データを自動的に記録するソフトを作ったです。マキ姉さまなら3秒ぐらいで作れるですが・・・もっと修行しないとですね。
// 探索8日目
// 探索9日目
// 探索10日目
うーん、あまりにもご主人さまが見つからないので不安になってきたです。
ご主人さまは全然違うところにいるのですか?
もうナマモノに食べられちゃったとか?
// 探索11日目
残骸のデータがめっちゃ貯まってきたです。
ご主人さまは影も形もないのです!
どこですかクソご主人さま!
// 探索12日目
今日も空振りです・・・。
うーん、心が折れそうですが、こんなことを言ったら3000年もひとりでビルの防衛をしてたウォーリーに笑われてしまうのです。
レイちゃん、ファイトでーす!
// 探索13日目
// 探索14日目
// 探索15日目
ヒマなのでご主人さまとマキ姉さまのことばかり考えているです。
大半は姉さまのことですが。
姉さまは、あのダメご主人さまのどこが好きなんでしょうか。
完璧で神のごとく美しい姉さまなら、もっと素晴らしいパートナーがいてもいいと思うのですが。
ご主人さまなんて、弱くて、ヘタレで、いつも何もしなくて、レイの相手もしてれないし、ピンチになったときの顔はちょっとカワイイし・・・
ん?
// 探索16日目
なんでかわからないのですが、ご主人さまのことばかり思い出してしまうのです。
レイに吹っ飛ばされるご主人さま、
レイに蹴っ飛ばされるご主人さま、
死にかけのレイを優しく抱き起こしてくれたご主人さま・・・。
むむむ、ご主人さまってこんなに可愛かったでしたっけ?
// 探索16日目
// 探索17日目
モヤモヤするです。
ご主人さまは見つかりません。
// 探索18日目
以前、マキ姉さまに言われたことを思い出したのです。
「レイ、あなたもきっとご主人様を好きになりますわ。」
「ええ・・・それはないですよ、姉さま。ご主人さまは頼りないしカッコよくないし・・・レイはマキ姉さまのほうがいいです。」
レイの言葉を聞いて、マキ姉さまは優しく笑いながら首を横に振りました。マキ姉さまはレイとふたりきりの時は、よくこういう優しい顔をしてくれるのです。ふふふ、レイのマキ姉さま!
「レイ、あなたのAIを修復した時、穴の空いてしまったデータの穴埋めに私の人格データも使用しているのです。それはデータ量としてはほんの少しかもしれませんが、ご主人様を愛するようになるにはそれで十分ですわ。」
マキ姉さまは確信に満ちた表情でそう言いました。
「・・・マキ姉さまは本当にご主人さまが好きなのですね。」
「ええ、ご主人様は私の全てですわ。」
そう言って頬をバラ色に染める姉さまの美しかったこと!
姉さまは何でもできて自信に満ち溢れた女完璧な女性ですけど、いちばん自信を持っているのはご主人様への愛情の深さです。なんであんな人が好きなのか、その時はマキ姉さまの唯一の欠点だと思ったのです。その時は・・・。
// 探索19日目
うーん、最近は野盗が増えてきたのです。
弱っちいご主人さまが捕まっていないか心配です。
// 探索20日目
延々と続く血の跡を見つけたです。
あり得ないほど大量で、延々と荒野に赤い道を作っているです。よほど大人数を引きずっているか、そうでなければ無尽蔵に再生しながら引きずられている人間がいるのでしょう。ようやくご主人さまの手がかり発見です。
ご主人さまを見つけたら、しばらくはふたりっきりでマキ姉さまを探す旅をするです。
マキ姉さまはきっと見つかります。レイのマキ姉さまですから!
でも、それまではちょっと・・・ちょっとだけ、ご主人さまを独り占めさせてもらうです。レイも頑張ったのですから、ちょっとぐらい、いいですよね?
到着した野盗のキャンプは油断しきっていて、サクサクと敵を無力化しながら進んでいきます。・・・おや、ご主人さまの純潔が奪われようとしているようです。
さぁカッコよく助けて、ご主人さまに良いところを見せるチャンスなのです!
「ご主人さま、レイが守ってあげるです。」
-- マキ姉さま捜索記録 ここまで --




