再出発
【前回までのあらすじ】
・主人公、野盗に捕まる
・貧乳はステータス
「レイ様・・・本当にありがとうございました。そして、申し訳ございませんでした。」
俺は月明かりの下、全裸でレイに土下座していた。
身体をグルグル巻きにしていたダクトテープから開放されてすぐに土下座をすると、服を着ていなかったので自動的に全裸土下座になったのだ。言わずと知れた最上級の謝罪スタイル。そんな俺を見て、レイはどうしていいか分からないのか居心地悪そうにしている。
「ごごご・・・ご主人さま、ちょっとやめてくださいです!レイがご主人さまを助けるのは当たり前なのです!」
「いえ・・・いくら取り乱していたとはいえ、レイ様には酷い暴言を、私のウンコのような口からいくつも吐いてしまい・・・」
俺の言葉にレイはぴくりと反応する。首を振って、それから悲しい顔をした。
「マキ姉さまがあんなことになったのですから・・・しかたないです。レイにもっと力があれば、姉さまを助けることができたかもしれないのです。」
「いや・・・あの状況ではあれしかなかったと思います。レイ様は悪くありません。それどころかウンコ以下の存在である私を命がけで助けてくださり・・・」
「ご主人さま・・・レイ様っていうのと・・・敬語、やめてほしいです・・・。立ってくださいです。」
「はい・・・いや・・・うん・・・」
おずおずと立ち上がる。レイの方を見ると、真っ赤になって顔を背けていた。
「それとあの、あの・・・は・・・はやく服を着てくださいですぅ・・・。」
立ち上がった俺の股間のUSB端子[オス]が月の光に照らされて、青白く光っていた。おまけに赤くなるレイが可愛かったので、端子も少し立ち上がっていた。とてつもなく申し訳ない気持ちで軽く死にたくなる。
違うんです、俺は反省してるんです。本当なんです。
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野盗のキャンプに俺以外の生存者はおらず、みんな見事に首を切断されて息絶えていた。
レイさんハンパない上に容赦もない。さすがの元戦闘用アンドロイド、見事な手際である。俺は比較的汚れていない衣類と銃、そして奪われた腕時計と端末、ホワイティを探しだしてキャンプを出た。空は満点の星空、大きな月が青白く荒野を照らしている。
「それにしてもレイ・・・よく俺の居場所がわかったね?」
レイは得意げに、フンスと鼻を鳴らして答えた。
「普通のネコやレーダーウサギはご主人さまのハッキングでちょろまかされてしまうので、レイみずからトラン・ホークを使って、目視で上空から探していたです!ここまでは、血の跡をたどって来たですよ。」
「ああ・・・やっぱりあれ、レイだったのか・・・。」
身を隠していて正解だったか・・・しかし見つかってしまった以上、やっぱりみんなに知らせるよな。そのために俺を探してたんだもんな。
・・・正直、まだみんなと顔をあわせたくない。情けない姿を見られるのも嫌だし、みんなを傷つけてしまうような気もする。マキちゃんを失った俺は、まだ冷凍前の引きこもり精神に戻ってしまっているのだ。
「なぁ、レイ・・・。」
なんとかみんなに連絡しないでもらえないか切り出そうとする俺に、レイは早口でかぶせるように言った。
「ご主人さま・・・端末に、レイが上空から調べた残骸のデータを送ったです。これでシミュレーションの精度がグッと上がるですよ。」
「・・・え?」
あっけに取られる俺に、レイは当然と言わんばかりの態度で続ける。
「マキ姉さまを探すですよね?さ、行くです。ここからはレイとふたりなのです。」
「だって・・・いや・・・うん・・・。」
俺の心情を察して、レイは歩き出しながら言った。俺に背を向けホログラムを消しているのでネコの尻しか見えず、その表情は分からない。
「みんなには町を守って待つように言ってあるのです。無事だっていう連絡はしておきますけど・・・ご主人さまがまたみんなのところに戻りたくなるまで、レイとふたりだけですよ。」
「・・・レイ。」
「なんです?」
「ありがとう。」
「・・・えっと、その、あの・・・お礼を言われるとレイも困ってしまうのですけど・・・」
「?」
何がいいたいのか良くわからなかったが、とにかくレイのネコはしっぽを立てて、夜の荒野を歩き始めた。俺は素直にその後をついていく・・・が、すぐにあることに気がついて声をかけた。
「・・・なぁ、レイ。」
「なんですか?頼れる上に優しいレイちゃんに惚れてしまいましたか?」
「・・・いや、歩くより野盗の車に乗って行ったほうがよくない?」
「・・・ふふん!」
レイのネコはくるりと反転して、キャンプに戻っていく。しまらない感じのスタートになったが、レイと俺の探索の旅が始まった。




