スタート地点
【前回までのあらすじ】
・レイさん、主人公をナチュラルにハブる
「つまり・・・あと3日以内に第13機密兵器研究所をなんとかしないといけないってこと?」
俺の質問に、レイがうなずいた。レイから得た情報を統合するとこうだ。
・「第13機密兵器研究所」は空飛ぶ研究所です
・強いやつを探して攻撃してきます
・ナナより強い戦闘用アンドロイドが100体以上いるので勝ち目はありません
・あと3日でこの町にきます ← New!
「なるほど・・・よし、逃げよう。」
俺の言葉に、マキちゃんは当然の疑問を投げかける。
「それでは町はどうしますか?当然、我々がいなくても攻撃を受けると思いますが。」
「・・・スヤァ。」
「タヌキ寝入りは(撮影済みなので)もういいですわ。」
それにしても困ったぞ。こんなのどうしろっていうんだ。この町、また存亡の危機じゃん?もう町の人たちを連れてどこか安全なところに移住しよう。無理か。この世界では人間が住める場所も少なければ、安全に移動するのも難しいのだ。少なくとも3日ではどうにもならない。
俺がタヌキ寝入りしながら考えていると、レイが何かを思い出したようだ。
「そうです、モリサワの役員だけが知ってる『識別信号』を発信できればアンドロイドたちは攻撃してこないです!第13機密兵器研究所の中に侵入できるですぅ!」
「おお・・・中に入りさえすれば俺が・・・俺っていうか、マキちゃんがハッキングでどうにかできるかもね。レイはその識別信号を知ってるんだよな?」
「・・・ボディと一緒に、綺麗さっぱり消し飛んだです!」
「じゃあダメじゃん・・・。」
意気消沈する俺に、今度はマキちゃんが言った。
「その識別信号ですが・・・ひょっとして、『M-NET』にアクセスすれば入手できるかもしれません。」
「M-NET!その手があったです!」
レイとマキちゃんの間では通じているようだが、俺にはさっぱりわからない。なにそれ?
「えむねっとって・・・なに?」
マキちゃんは空中に「モリサワインダストリー」のロゴを表示して、説明してくれた。モリサワインダストリーはかつて存在した超巨大企業。アンドロイドやロボットを製造していたハイテク企業である。マキちゃんもモリサワ製品、ナナもモリサワ製品、レイもモリサワ製品、そういえばウォーリーだってモリサワ製品だ。
「M-NETはモリサワインダストリーの社内ネットワークの通称ですわ。超巨大企業であるモリサワは、世界各地にビルや研究施設を持っていました。それらの施設を独自の地下ネットワークで結び、重要な情報が外部に漏れないようにしていたのです。」
「ふぅーん・・・でも、もう地下ネットワークなんて残ってないでしょ?こんな世界だし、3500年ぐらい経ってるみたいだし。」
「はい、そう考えるのが妥当でしょう。しかしネットワークにつながっていた端末やサーバ機器は各施設に残っている可能性がありますわ。そこには当然、役員に送られたデータも残っているでしょう。少なくとも探してみる価値はあると思いますわ。」
「なるほど・・・でも、今も残ってるモリサワの建物ってどこ?ウォーリーとナナがいた、モノリス遺跡とか?」
「あそこはハッキングしたことがありますが、M-NETに繋がる機器はすぺて破壊されていました。」
「じゃあ、もう心あたりなんてなくない・・・?」
「いいえ、ひとつだけ・・・確実に現存している施設がございます。ご主人様もご存知の場所ですわ。」
「んん・・・?」
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「というわけで久々に来たね、ここ・・・。」
「おとーさん!へんなカエルがいるよー!」
ジメジメした密林の中に、ひときわ明るい声が響いた。声の主は小さな女の子。透き通るような白い肌に長い髪、ピョコピョコと跳ねるように歩き回る姿はまるで人形のようだ。その花が咲いたような笑顔は暗く湿ったジャングルに爽やかな春の風を吹かせ、美しく整った顔は将来とてつもない美人になることを目にした者すべてに確信させる・・・もちろん、機械である彼女の身体が成長することなどないのだが・・・とにかくその完璧な美少女は、もちろんナナだ。その後ろをフラフラしながらついていくのはメガネの頼りなげな少年、エドである。
「あははははははは!これみてエド、へんなのー!」
「へえ、これは初めて見たなぁ。ちょっとバラしてみようか、ナナ?」
ナナが電卓カエルを捕まえてキーを叩きまくり、エドは興味深そうに愛用のプラズマカッターを取り出した・・・おい、いきなりなにをする気だ。エドがすぐに分解しようとする様子を見て、ここまで乗せてきてくれたドラちゃんが大きな身体を縮こまらせていた。
ここはジャングルの真ん中・・・俺が眠っていた、懐かしい冷凍施設の入り口である。なんとここ、モリサワの施設だったらしい。
ドラちゃんで移動することわずか10分。脱出するのに何日もさまよったジャングルも、ドラちゃんに乗ればちょっとコンビニにいく感覚で来ることができた。トラクターに襲われたり炊飯器に食われたりしたジャングルは俺にとって最高に恐ろしい場所だったが、ナナとドラちゃんがいる今となっては動物園を見て回るような気楽さで歩き回れてしまう。ふふ・・・俺もずいぶん成長してしまったな。
「いいえ、ご主人様は特になにも変わっていませんわ。」
「うん、わかってるから心を読まないでくれる?」




