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野生の電子レンジが襲ってくる世界にきました -天才ハッカーのハッキング無双ライフ-  作者: じいま
長距離通信網その3 第13機密兵器研究所編
118/202

レイの実家

【前回までのあらすじ】


・首都までの通信網を構築中

・ドラゴンが邪魔してたのは解決しました

「よーしドラちゃん、ご飯だよ。」


ドラゴンの町から戻って数日が経った。エドがリヤカーに乗せた大量のトラン・ホークをドラゴン・・・いや、ドラちゃんの前に運んでいる。ナナとふたりでニコニコしながら世話をしていて、さながら捨てられたイヌかネコを拾ってきた感じである。かわいい呼び名を付けられた天空の支配者は、その巨体によく似合う、低く威厳のある声でおずおずと小さな主人に話しかけた。


「エド様・・・その、『ドラちゃん』という呼び名はなんというか」


「ん?なあに、ドラちゃん?」


「・・・いえ、なんでもございませぬ。」


ドラちゃんは何か言おうとしたがすぐに諦めたようにうなだれ、リヤカーに積まれたトラン・ホークの山をむしゃむしゃと食べ始めた。彼にとっては主人であるエドの言葉は絶対らしい。もちろんエドにとってはナナの言葉が絶対だ。ヒエラルキーの最下層に置かれるドラゴンかわいそう。ナナは目をキラキラさせながらドラちゃんの食事を観察していて、エドはそんなナナとドラゴンを楽しそうに見ている。


ちなみにエサのトラン・ホークは最初からAIを消去してある「食肉用」とでもいうべき状態でプラズマライフルの木から生成している。いちいち食べられるためだけに生きた機械を産み出すのはなんだかかわいそうなので、こういう仕組みを考えた。人道的配慮というヤツだ。


「エド、ドラちゃんの小屋はどんな感じ?」


「いい感じですよ。ね、ドラちゃん?」


「はっ。ワシは野ざらしでも構わぬのですが・・・このような立派な巣をご用意していただき、感謝の言葉もございませぬ。」


ドラちゃんの小屋・・・ドラ小屋はプラズマライフルの林に作った。ドラちゃんは大きすぎて、自宅の庭先に住むというわけにいかなかったのだ。戦闘機サイズのドラちゃんが入っているので、どう見ても小屋というより格納庫といった風情である。ナナとウォーリーはこういう簡単な小屋を作るのに慣れていたので、大きさのわりにはあっという間に完成した。さて、ドラちゃんと落ち着いて話ができるようになったので、色々と気になっていることを聞いてみることにしよう。


「ところでドラちゃんってさ・・・どこから来たの?」


「はるか大地の先から、ですな。人間が済む地域から遠く離れた地に、ワシのようなドラゴンの群れが住んでいる谷があります。」


「なにそれこわい・・・。じゃあわざわざあんなところで何してたわけ?」


俺の質問に、エドが代わって返事をした。


「師匠、その答えはドラ小屋の中にありますよ。」


「ん・・・?」


黙って話を聞いていたナナが静かにドラ小屋の扉を開くと、小屋の一番奥にどこかで見たような、大きな鋼鉄の玉が3つ転がっている。なんだっけあれ・・・確か空母の格納庫で・・・


「あっ・・・!タマゴか!」


そうだ、あれは空母の中で見た、戦闘機のタマゴによく似ている。エドが感心したように言う。


「師匠、よくわかりましたね!そうです、ドラちゃんは産卵のために栄養が必要で、エサを食べに来ていたんですよ。」


「あかちゃんドラゴン、はやくみたいねぇー!」


ナナが言いながら、静かにドラ小屋の扉を閉める。その丁寧さはいつものおてんば娘ではなく、まるで寝ている赤ちゃんを起こさないようにしているお母さんのようだった。そんな娘を微笑ましく思いつつ、俺の口から素直な感想が漏れた。


「・・・っていうかドラちゃん・・・メスだったのか・・・。」


俺のつぶやきを聞いてドラちゃんが低い声でうなる。あ、いや、なんかすいません。分解しないから許してほしい。



「おーい、新婚さん。」


「ぬっ・・・ご主人サマ、おはようございマス。」


「あっ・・・おっおっおっおはようございます、旦那様!」


俺が現れると、小さな家の玄関先でくっついていた人影が2つに別れてあいさつを返した。ウォーリーとイリスさんの新婚カップルである。見ればイリスさんは顔を赤くしているし、ウォーリーは湧き上がる「いいところだったのに」感を隠そうともしない。


(イチャイチャしてたな・・・爆発しろ)


(イチャイチャしてましたわね・・・爆発してほしいですわ)


俺とマキちゃんの心の叫びがシンクロした。ここはランスさんの家から数分のところに新しく買ったウォーリーとイリスさんの家である。小さいながらもこの町では一般的なもので、住むには不自由しないだろう。本当は俺がもっと大きい家をドカンと買ってあげようとしたのだが、ウォーリーに「それは夫の甲斐性デス」と拒否された。ということでこの家は、彼が自分の貯金で買ったのだ。ちなみにウォーリーは給料を俺とランスさん両方からもらっていた上に全然使わなかったため、貯金はそこそこあるらしい。俺は幸せそうな新婚オーラ爆発中のふたりをしげしげと眺めてから言った。


「なんというか・・・まるで不自由なさそうだね。」


俺の質問に、ウォーリーはグッと親指を立てて答えた。


「かわいい奥さんと一日中イチャイチャできるのデス・・・ご主人サマにもこの幸せを分けて差し上げタイ。」


ウォーリーの言葉に、イリスさんが恥ずかしそうに小さくなって続く。


「ちょ、ちょっと、ウォーリー・・・!ごめんなさい、旦那様!ご存知の通り、うちの人・・・ちょっとアレなんです。・・・あ、中にどうぞ、今お茶を淹れますから。」


イリスさんが顔を真っ赤にしてウォーリーを優しくポカリと叩き、ウォーリーはそれすらも嬉しそうに首を揺らしている。ああもうなんだこれ・・・なんだこれ・・・。


「ああいや、様子を見に来ただけだからここで・・・うん、ウォーリーがアレなのはよぉーーーーく知ってるよ・・・。それでええと、困ったことがあったらなんでも相談してって言いにきたんだ。それと・・・」


「なんデス?」


「末永くお幸せに。もげろ。」


俺の言葉にウォーリーはハッハッハッハッと笑い、その横ではマキちゃんがイリスさんに細々と話をしていた。おそらく女性視点でのアドバイスやらなにやらだろう。イリスさんからすれば、俺やウォーリーには聞けないことがたくさんあるに違いない。さすが、マキちゃんはできる子だ。


「じゃあ、もう行くよ・・・またね。」


「はい、旦那様、マキちゃん様・・・わざわざありがとうございました。」


「後ほどお店で会いまショウ。」


この後、イリスさんはランスさんの店で働く予定である。彼女の体調や精神面のことがあるので無理する必要などないのだが、本人が強く希望した。多少心配だけど、まぁウォーリーがいるから大丈夫だろう。ハルがランスさんの店を手伝わなくなってから随分経ったが、またあの店に看板娘が復活するのだ。イリスさんならハルに負けない看板娘っぷりを発揮してくれるだろう・・・人妻だけど。いや、人妻だから逆にいいのか?俺がどうでもいいことを考えていると、ふいに背後からウォーリーの声がかかった。まだ玄関先でイリスさんと並んだまま、グッと立てた親指を俺の方に向ける。言葉はないが、意味はわかる・・・次は俺の番だと言っているのだ。マキちゃんがふふっと笑いを漏らし、俺は苦笑いしながら言った。


「爆発しろ。」



「うーん、苦労したけどこれでなんとかなりそうだねマキちゃん。ドラゴンまで仲間にして、ウォーリーは奥さんを見つけて・・・順調すぎない?」


俺はまた自室で、のんびりとマキちゃんが表示してくれるレーダーウサギの設置状況図を眺めている。首都へと続く長距離通信の道は開けた。600キロ地点で止まっていたレーダーウサギの設置作業はすでに再開しており、こうしている間にもトラン・ホークがレーダーウサギをひっつかんで運搬しているのだ。


「ご主人様、調子に乗っていると足元をすくわれますわよ。それにしても・・・どうしてドラゴンなどという珍しいものが仲間にできるのに、なぜ私のボディは未だ手に入らないのでしょうか。なぜですか、ご主人様?」


「うーん・・・スヤァ。」


「どうせやるなら、ちゃんと寝たフリしてくださいな。」


「スヤァ。」


「・・・ん。タヌキ寝入りしているご主人様もなかなか可愛らしいですわね。これは録画を・・・。」


「スヤァ!?」


最近のマキちゃんはちょっとけっこうかなりウォーリーに影響されている気がする。そんな調子で遊んでいると、静かな時間を打ち破る侵入者が現れた・・・レイだ。


「ご主人さま、マキ姉さま、大変です!レイの実家が!」


「・・・実家?」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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