やる男
※ 露骨な描写はありませんが、いちおう微エロにつき閲覧注意でお願いします。
「あの・・・ほんとに、わたしで、いいの・・・?」
簡素なベッドに腰掛けたイリスは、頬を真っ赤に染めながら言った。ここはネコの町にあるランスの家、みんなの家の一室である。ドラゴンに乗って帰ってきた一行は、町を一通り混乱におとしいれながらも、とりあえずの夜を迎えた。みんな各々の部屋で寝静まり、そしてウォーリーとイリスも・・・初めての夜を迎えている。
イリスの可愛らしくも妖艶なネグリジェ姿は、ハルが「いざという時のために」と持っていたものを借りたもの。ハル自身は着たことがないそれはとても薄手で、イリスの豊かなボディラインを際立たせ、その可憐な表情と相まって極めて危険な魅力を放っていた。ウォーリーはまっすぐに彼女の目を見つめて言う。
「貴方がいいのデス、イリスサマ。」
当然と言わんばかりの言葉に、イリスはさらに顔を赤くする。ウォーリーの表情は普通の人間には読み取れないが、どういうわけかイリスにはわかった。彼は今、とても真剣な表情をしている。普段のウォーリーを知っている者なら信じられないかもしれないが、この状況においても彼は真剣な態度を維持できているのである。彼は本当にやる男だ。
「あの、その、気に入らなかったら、本当にいつでも言ってね?わたし、その・・・普通の経験はないから上手にできないし、とても、汚されちゃったから・・・きゃっ」
イリスの言葉を遮って、ウォーリーは彼女をそっとベッドに押し倒した。そのまま目をそらす彼女をじっと見下ろす。乱れた髪が頬にかかり、ネグリジェがはだけて白い肩が露わになる。その姿はいっそう魅惑的で、彼の良心回路は焼ききれる寸前だ。
「あなたはどこも汚れてなどいまセン。心も身体も、我が知る誰よりも美しいデス。」
「・・・ウォーリー・・・ありがとう・・・。」
イリスは覚悟を決めたようにウォーリーの目を見つめ返し、両手で彼の頭を優しくはさんだ。
「・・・きて?」
しかしウォーリーの優れたアイカメラは見逃さなかった。イリスの手が震えていることを。それは緊張だけが原因ではない。彼女がしてきた体験は彼女の心を深く傷つけた。男というもの、性というものへの根深い恐怖心を植え付けたのだ。恐怖心を押し殺してウォーリーを受け入れようとしたのはただ愛情ゆえか、それとも彼に見捨てられたくない、ガッカリさせたくないという気持ちからか。そんな彼女の内面に、我らがやる男ウォーリーが気づかないはずがない。ウォーリーは大きな身体をゆっくりとどかし、彼女をベッドの上にそっと抱き起こす。ヒザをついてベッドに腰掛けるイリスと同じ高さに目線をあわせてから、戸惑う彼女に優しく言った。
「イリスサマ、焦る必要はありまセン。」
「・・・でも、わたしがしてあげられることなんて、これくらいしか・・・」
少し涙目になるイリスに、ウォーリーはそっと首を振る。
「愛していマス。イリスサマ。」
「・・・!」
「我は、貴女とずっと一緒にいタイ。だから、どうか無理はしナイで。自分の気持ちを押し殺さないでくだサイ。」
「・・・。」
「いつかイリスサマが・・・したくなる・・・時まで・・・我は待ちマス。それまでは、こうして少しずつ触れ合っていくだけにしまショウ?」
「・・・でも・・・いいの?」
「我は3000年間ひとりでいられたのデス。待つのは得意中の得意デスよ。」
イリスはウォーリーに抱きつくと、彼の頭を胸に抱えたままわんわん泣き出した。ウォーリーは黙って優しく抱きしめ、その背中をポンポンと叩く。
「ウォーリー・・・グスッ・・・大好きよ・・・ごめんね・・・」
しばらくそうしていた後、イリスはいつの間にか眠ってしまった。今日は色々なことがありすぎて、疲れていたのだろう。ウォーリーはそっと彼女をベッドに寝かせると、静かに部屋を出た。
「ぐ・・・グフぅ!」
そして部屋を出てドアを閉めると、そのまま地面に崩れ落ちた。頭部からプシューと勢い良く熱い煙が吹き出し、明らかに熱暴走しているのが分かる。
「こんなことだろうと思ったです。」
いつの間にかウォーリーのすぐ横に、レイのネコが立っていた。口にくわえた容器から冷たい水をバシャバシャとウォーリーの頭にかけると、蒸発した水がジュウジュウと音を立てて空中に消えていく。
「興奮しすぎて熱暴走したですね。しかも彼女に悟られないように放熱を止めて。CPUが焼き切れ寸前です、バカですかウォーリーは?」
呆れたようにいうレイに、ウォーリーは倒れたまま言った。
「レイ・・・聞いてくだサイ。」
「なんですか、バカ豆腐?」
「おっぱい・・・めっちゃ柔らかかったデス。」
「・・・そのままスクラップになりやがれですぅ!」
その後、熱が冷めたウォーリーはティッシュの箱を抱えてどこかに消えていったという。彼のその後の行動を知る者はいない。




