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第四話 「麺類結構好きだけどお腹張るからこまる」

例えばゼロが1だとして,そうすると4は21になる。ここまではみんなわかりますよね?でもこの1がもしも34だったらどうでしょう?そう。実は板東英二なんです。

この世界の真理はそのようにして,少しずつ明らかになる。

そんな小説魔法少女キ☆ヨミちゃ☆ん第四話。

〜AM 7:30 サウジアラビア〜

 マイケルは自分の置かれている状況が理解できなかった。確かに,自分は今,飢餓によって苦しんでいたはずだ。しかし,意識は未だある。むしろ今までよりはっきりとしている。これだけ頭が冴えるのは何年ぶりだ?しかしマイケルはものごとをうまく思い出せなかった。マイケルの記憶には,自分の名前と飢餓によって苦しんでいたこととそしてかなわなかった夢しか残っていなかった。なにか1つでも自分のことを思い出したい。そう思いあたりを見渡すと,マイケルはぎこちない笑みを浮かべている自分の姿を発見した。

 「オレが,二人?」

 「いいや違うな」

 聞き慣れない男の声だった。

 「そこに転がっているのは貴様の死体,つまりお前はもう死んでいる」

 「誰だ?」

 振り返ると全身黒ずくめの,長身だが体重の軽そうな男が立っていた。

 「俺は死神。貴様を地獄へ送ってやるためにここに来た」

 マイケルは平静を装った。

 「死神?ここはファンタジーの世界か?」

 男は大きな口を奇妙にひん曲げている。笑っているつもりらしいが恐怖以外の印象を受けない。

 「違うな。これは紛れも無く現実世界での出来事だ。ただ貴様らのポンコツな頭では理解することも認識することもできない」

 ますます意味がわからない。

 「しかし貴様はどうやら他の奴らとは少し違うらしいな。ここで始末してやる」

「面白くなってきたじゃねぇか」

しかしセリフに反してマイケルはひどく怯えていた。魂が震える。しかし、オレはどうやらこいつと戦わなければいけないらしい。ここから逃げ出すために。この世界に存在し続けるるために。

自分の夢を叶えるために。


〜PM 1:30 長崎県佐世保市〜

キヨミはもう、弱くなかった。彼女を止められる人間はもういない。

「こい!魔道書ぉ!」

キヨミのもとへ飛んでいく魔道書。

「分かった!じゃあ僕と契約して魔法少女に…」

グヮシィィィィ!!魔道書がセリフが言い終わる前にキヨミは彼を力強く握りしめた。

「痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛ぁぁぁ!」

なぜか魔道書は意識が薄れていった。あれ?こいつ主人公だよね?

「うるせぇぇ!時間がねぇんだろ!急ぐぞ!上へ行くぜ」

全力ダッシュだが丁寧に一段ずつ階段を上るキヨミ。

「どういうことだよ!あの異能を破るには、僕の魔力が必要不可欠だろ!」

「このパープリンがぁ!!必要なのは魔力じゃねぇ。朕は物理で悪霊ども倒す、ゴリゴリガテン系魔法少女なんだよ。もうあいつの能力<夕焼けお止まりスキャンダル・サタデーナイトフィーバー>の弱点は見切った!!」

もう疲れた。死にたい。さっきまでハイテンションだった魔道書は3分間ほどで絶望の淵に陥れられた。そういえばこの人、一人称が「朕」だ。JCなのに。

 「おい!さっきからどういうことだ?俺の能力を弱点を見切っただとっぉ?」

 男は衝撃のあまり棒立ちしてしまっていた。自分の能力が最強だと思っていたのだ。

 「残念ながらてめぇの能力の価値は,スーパーの食品売場で三十円で売ってる用海うぉっちの指人形以下だ!!」

 「要するに,三十円以下だ!!」

 魔道書は話についていくためになんとか口を挟む。

 「一体どういうことだ‥.?」

 「てめぇの能力<フィーバータイム・シューティングスター・サロン・ドブロ>には制約があるんだよ」

 得意気ににやけるキヨミ。

 「何ぃ?」

 ついに階段を登り切る。実はこの図書館,1階と2階は吹き抜けになっているため2階まで上がると1階がまるまる見渡せるようになっている。

 「朕が図書館にはいった時,もう能力は発動していた。そうだな?」

 「あ,ああそうだが?」

 「だから図書館からは子どもたちの賑やかな声や受験生が勉強する音はおろか老人が安らかに寝息を立てる音すら聞こえなかった。つまり皆,貴様の能力によって音を失っていた。ただひとつの存在を除いて」

 「さっきから口調が変わりすぎだよキヨミ」

 存在を証明しないと,空気になってしまう。

 「黙れエロ本」

 「」

 もう一度深く息を吸い,気を取り直すキヨミ。

 「音を失っていなかった存在。そう時計だ。朕は確かにアナログ時計が時を刻む音を聞いた」

 「一体何が言いたい?」

 「そうだ!何が言いたいんだキヨミぃ!…」

 魔道書のホコリを払いながらキヨミはうつむく。

 「そしてその後朕は床に座り込んだ。そこで初めて朕に能力が”作用”した」

 2階のヘリに身を乗り出すキヨミ。男は体中から嫌な汗が吹き出していた。

 「身を持って教えてやろう」

 魔導書を持つ右手を前へ突き出す。

 「マジか」

 もう魔道書は何も感じなかった。

 「貴様の弱点は」

 右手の力をゆっくりと抜いていく。

 「そ‥そうか!」

 男はやっと理解したようだが,もう遅かった。

 「そう」

 魔導書がキヨミの手から離れる。

 「いやぁぁぁぁぁ助けてくれぇぇ!!!キヨミィィ!」

 そのまま魔道書は男の間抜けな頭目掛けて自由落下していった。


    ガッッッッしシャァァァァァァァン


 何かが砕けたような音が静寂を破る。

 「高さ,だ」


第四話 完


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