不思議なこと
あの日明日香は居なくなった。
俺は明日香と公園で鬼ごっこをしていた。
じゃんけんをして、俺が負けて鬼になった。
10秒数えてから周りを見る。
明日香がいた。まだ5歳だったとはいえ俺だって男だ。
すぐに追いついた。2人の距離はあと2m程。
そこで明日香が左に曲がって建物の影に入って見えなくなった。
俺も追いかけて建物の影に入った。するとそこには明日香は居なかった。
地面が淡く青白く光っていた。
僕は暗くなるまで明日香を探した。
だが、見つからなかった。
お母さんが僕を探しに来た。僕は見つけてほしかったんじゃない。
見つけたかったのに。
お母さんに怒られた。夜遅くまで何やってるの!等と言っていたが僕の耳には入らない。
僕はひたすら明日香が居なくなったと言った。
だが、お母さんは明日香を知らなかった。
どこにいるのかを知らないのではなく明日香の存在を知らなかった。
僕は僕の家の隣に住んでいる神崎 明日香だよ?いつも僕とあそんでいたでしょう?家に遊びに来たこともあるでしょ?
明日香のことを思い出してもらおうとした。
でも思い出してくれなかった。
明日香の家にも行った。だが、うちには子供はいないと言われた。
つぎの日幼稚園に行って、先生が出席をとった。
青木、井口、等聞いたことがある名前が呼ばれる。
だが、明日香が呼ばれるはずのところで呼ばれなかった。
先生に「神崎さんは?」と聞いた。
先生は「神崎さんって誰?」と言う。
それから幼稚園を卒園するまで先生やお母さん、いろんな人に毎日聞き続けた。
だが、誰も明日香を思い出してくれなかった。
卒園するまで毎日あの公園を探した。
でも、見つからなかった。
明日香は居なかったの?
あれは幻だったの?
そう思ったこともあった。
だが、あれは幻じゃない。あんなに温かい記憶が偽物の筈がない。
そう思い続けてきた。
・・・・・
そして今わかった。
召喚されると前の世界にはいなかったことになるんだ。
あの記憶はやっぱり幻なんかじゃなかった。
みんなが忘れただけだったんだ。
でも、どうして僕は忘れなかったんだろう?
これも調べないとな。




