入院中
入学式後一ヶ月後に俺はT医大35階のある病室のベッドの中にいた。
その日はケイゴが見舞いに来てくれた。ベッドの周りを仕切るカーテンを開けてすぐにケイゴは大笑いした。
「鈴木、うけんな。顔パンパンじゃん。」
大学生活が始まり数日が経ち、体育の授業の初日のことだった。選択により体育は柔道だったのだが、その初日俺は事故に遭い怪我をしてしまった。というのは、前周り受け身という立った状態からでんぐり返しして受け身をとるという柔道の基本の技で事故が起きてしまった。俺が前周り受け身をしようとしたら前方から同じように前周り受け身をしようとした学生の足が俺の頬に直撃したのだ。衝撃に仰向けになったまま頭がクラクラしたのだが、ぶつかった頬をさわってみると陥没しているのがわかった。うわぁと大声を俺はあげた。その後先生の指示に従い柔道着から私服に着替えタクシーに乗り大学の指定病院に行ったのだがそこでは診てもらえず、またタクシーに乗りT医大の受付に顔面骨折してしまったんですけどと言うはめになってしまったのだった。
ケイゴはクシャクシャの袋から雑誌を何冊か俺に手渡し
「入院中いるだろ?トイレこの階あんの?」
とお古のエロ雑誌を置いてしばらくして帰っていった。
次の日はカキシタがやってきた。彼女と一緒だった。
カキシタはケイゴと同じ高校、つまり俺とケイゴとカキシタは同じ高校の同級生で、顔立ちは中田英寿に似てるとよく言われていてかなりモテる男だった。
小一時間で帰っていった後、ケイゴに用事があり電話した際
「カキシタあいつ彼女つれてきたんだけど。俺の入院をデートスポットがわりに使ってんじゃねえかな。今日で来たの二回目なんだけど。」
と俺が言うと、ケイゴはケラケラ笑っていた。
その二日後にタケウチと坂元が見舞いにきた。
「これ見舞いに。」
とおもむろに封筒をよこした。表を見ると御霊前と書かれていた。俺はあえて何も言わず中身を確認すると十円玉一枚と五円玉一枚が入っていて、キレそうになったが我慢してると、タケウチがニヤニヤしながら
「こいつが考えたから。」
と責任を坂元になすりつけた。坂元は黙っていた。
タケウチと坂元が帰った後ベッドに横たわり目をつぶった。大学で知り合った女を思い出した。あっちから声をかけてきてたまに挨拶する程度の関係だったが、容姿はかなり端麗で、あのこが見舞いに来てくれないかとありえない夢をみて眠りに落ちた。
携帯電話のバイブレーションの音で目が覚めた。真夜中の11時だったので携帯電話のがめんがやけにまぶしかった。手にとり画面を見ると新着メールが一件と表示されていた。メールボックスを開くとタケウチからのメールだった。
(坂元が事故って運ばれた)




