三日目 悔しい、でも幹事長
初めに断っておくと、決していかがわしいマッサージではない。
三日目ともなり、二人の疲労が限界に達してきた。
普通の速度歩くだけでも脚が重く、とても観光を続けられそうになかったのでマッサージを受けることとなった。
タイの町を見渡すとนวด(マッサージ)と書かれた看板が結構見つかる。
私たち二人の行ったところは日本人が多く訪れる場所のようで、店員は日本語喋れるし日本人観光客ばかりだった。
何分私はマッサージを受けたのは今回が初めてなので、ひどく緊張してしまった。
しかしいくら個室で二人きりになるとはいえ、
体のあんなところやこんなところを刺激されたとはいえ(実際かなり痛い)、
どう見ても五十過ぎのおばさん相手に勃……
よし、なかったことにしよう。
黒歴史は記憶から抹消するべきだ。
マッサージを受けた後、身体が軽くなった我々はバンコク一の中華街、ヤオワラート通り(ถนนเยาวราช)へと向かった。
ここは日本人観光客が来る場所とはうってかわって雰囲気が完全に中国で、いるのも大体中国人か華僑だった。観光客が来ると中国語で話しかけて来たりもする。
町の看板は全部漢字で書いてあるし、なんだかわけのわからない漢方薬のようなものをそこらじゅうで売ってるし、道端には食べ物や土産物の屋台やらが犇めきあってる。
我々二人はその中の一つ、海鮮料理を主に売っている中華料理屋の屋台で飯を食ったのだった。
味は申し分なく非常においしい。
この日食べたのは炒飯、エビフライ、海鮮鍋などだったが、いずれも何を食べても辛いタイ料理とは違って日本人の口に合う気がした。前日その辺の屋台で食った炒飯があまりに辛くて舌が痛くて死にそうになっていた私にとって、これは大きな救いだった。
タイ料理というのとにかくどれも辛い。甘いと言われるグリーンカレー(แกงเขียวหวาน 甘い緑色のゲーン、名前に「甘い」が入ってる!)ですら日本人の舌には辛い。そしてただでさえ辛いのに、その上に唐辛子だのなんだのといったさらに辛くする調味料をかけて食べるのだ。
しかし時間帯が時間帯だったせいか人が多く、おまけに中国人は飯を食っているときも平気で喋るのでものすごく煩かった。とにかくその場にいる全員が欲望むき出しで飯にありつくさまはまるで豚舎のようで、千と千尋の神隠しの冒頭のシーンを思い出してしまった。
いやはや、アジアの町はパワフルである。