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百家争鳴 ―風紀委員を埋めてやる―  作者: 黒十二色
第四章 戦国の秋、後編
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19、終戦と歓声

 試合終了後のことである。


 孔子ちゃんは仲間のもとへ申し訳なさそうに歩いていき、孟子ちゃんや荀子ちゃんをはじめとする仲間たちは落ち込む孔子ちゃんを必死で元気付けようとしていた。


 そして、いつの間にか姿を消していた老子ちゃんが、泥まみれのまま裏庭方面から尻の焼けた牛に乗って現れ、牛から降りるのも面倒くさがる彼女を荘子ちゃんが「先生! 先生!」とか言いながら何とか引きずり降ろすと、皆でハイタッチを交わした。


 老子ちゃん、俺、荘子ちゃん、墨子ちゃん、孫子ちゃん、そして韓非子ちゃん。それぞれが勝利を祝っていた。


 特に老子ちゃんのことを初ホームランを打った若手野球選手を手荒に歓迎するように、皆でポカポカ叩くなどして祝福した。


 やっぱり、老子ちゃんの活躍が無ければまず勝利は不可能だったからな。


「ちゃうやろ。皆で手にした勝利やん。特に……」


 老子ちゃんは言い掛け、俺に視線を向けた。というか、何故か皆が俺の方に視線を送ってきているんだが何故だろうか。「一人だけ男だから場違いでしょ」とかいうメッセージだろうか。俺はあらゆる意味でほぼ何もしていないのに。


 いや待て。この視線は、どうやらそういうマイナスの方向のものではどうもないらしい。


 俺のやったことはと言えば、最初の雑魚敵コウくんを倒しただけである。他の皆の方が圧倒的に活躍していたじゃないか。韓非子ちゃんが荀子ちゃんを倒し、墨子ちゃんが大車輪の活躍を見せて皆を助けながら孟子ちゃんを倒し、荘子ちゃんだってユニークな方法で一人を倒した。孫子ちゃんは裏方としてしっかり心強い戦力になった。水渡したり、カメに変なプログラム仕込んだり。それと色々理解しがたいことも説明もしてくれて助かった。そして何度も言うように何より老子ちゃんは他を寄せ付けない強さを見せて、彼女が居なかったら俺たちは完全敗北してただろう。


 老子ちゃんと、墨子ちゃんと、孫子ちゃんは、特に勲章をあげたいレベルの活躍だった。


「何言ってんだい。そもそも、みんなが共闘できたのは、あんたのおかげってことだよ」

 墨子ちゃんはそう言って、俺の肩を少し強く叩いた。


「あなただったから、皆がついてきたんだにゃー」

 これは荘子ちゃん。


「とっくにあなたが中心よ!」

 孫子ちゃん。


「ウチかて、キミじゃなかったら味方なんてせぇへんかったよ?」

 老子ちゃんまで。


「…………」

 最後に、無言で俺の手を掴んできたのは、韓非子ちゃんだった。


 韓非子ちゃんは、俺を観客席から連れ出して校庭の真ん中に連れ出すと、全校生徒の大歓声。


 しかも俺の名をコールしていた。


 校舎の連中まで、窓から身を乗り出して何度も俺の名を呼んでいる。


「いやいや……どうしろと……」


「あなたは、英雄になったのよ」


「一体なぜなんだ、それは。俺は開始早々に負けたというのに」


「だ、だ、だって、代表者、あなただもん」


「いつの間に俺が代表になったと言うんだ」


「果たし状に、そう書いたの」


「なんだと……」


「だから、私はあなたを支えたい」


「韓非子ちゃん、そりゃどういう意味だ?」


「と、と、とにかく、皆に手を振りなよ」


 韓非子ちゃんは俺の腕を掴むと、背伸びして、俺の腕を上空に掲げさせて、無理矢理に声援に応えさせた。一体何がしたいんだ、と思ったが、俺が手を空に向けただけで、学園中が盛り上がる。


 俺としては不本意なんだが、学園が平和になるならそれで良いのかもしれない。


 こうして俺は、学園を統一した。


 始皇帝。つまり、学園初めての皇帝となった。


 大歓声の中、韓非子ちゃんの満足そうな、満面の笑顔の横で。



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