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百家争鳴 ―風紀委員を埋めてやる―  作者: 黒十二色
第四章 戦国の秋、後編
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3、韓非子ちゃんVS荀子ちゃんⅠ

 さて、一人がやられた後の孔子ちゃん一派に目を向けると、まだ青空の下でメシを食っていて、まだまだ余裕の様子。


「シロくん。このステーキ、生よ」


「まぁ、そうですね。レアステーキですから。ちょっと表面を焼いてあるだけです」


「この私に向かって生肉を出すとはどういうことかしら?」


「す! すみません、焼きなおします」


「ええ、早くなさい」


 どうやら、肉を生で食べるのは苦手らしい。美食家を気取ってるくせに。


 で、コウくんが孔子ちゃんの所に泣きながら敗北を報告しに行き、孔子ちゃんに優しく頭を撫でられたところで、次に進み出て来たのは鎖使いの荀子ちゃんであった。


 もはや手錠をぶっちぎって腕輪にしてしまい、好戦的に変わってしまった墨子ちゃんは俺の前に歩み出て、荀子ちゃんの前に立ちはだかったが、墨子ちゃんの更に前に立ちはだかった者が居た。


 我らがスコップ女子、韓非子ちゃんである。


 元々、荀子ちゃんを姉と慕っていた韓非子ちゃんであるが、法についての考え方を巡って対立していた。


「韓非子ちゃん、どうやらわかってくれなかったようね」


 韓非子ちゃんはしばらく黙っていたが、背後を振り返って俺に目線をくれた。どうやら近くに寄って通訳しろと言っているらしい。こんな時くらい人前で喋れって感じだが、まぁ恥ずかしがり屋さんなので仕方ない。


 俺は韓非子ちゃんに歩み寄ると、「私は、荀子ちゃんなんていう腐れ女に負けない」と言ってバッチリ通訳した。


「法の前に、まず尽くさねばならないことがあるでしょう」


 すると韓非子ちゃんが耳元で、「いくら礼を尽くしたところで、法が捻じ曲がることがあってはならない」と言ったので、それをそのまま伝える。


「もう、戻れないのね」


 荀子ちゃんのその言葉に、韓非子ちゃんはこくりと大きく頷いた。


 次の瞬間だった。


 荀子ちゃんの背中から突然翼を広げたように禍々しい十本の漆黒の鎖が飛び出した。


 勢いよく飛び出した鎖は十条の黒い線となって俺たちを巻きつけようと襲う。


 先端についた分銅の重みで、俺たちの周りを何度か回転し、俺と韓非子ちゃんと墨子ちゃんをまとめて拘束した。首から下の上半身が、全部見えなくなるくらいにグルグル巻きにされて、肉巻きされた三本のインゲンの一つみたいな気分だぜ。生肉じゃなくて鎖だってのが、まだ感触的にマシだが、でも鎖は冷たくて痛いので生肉の方が良かったかもな、とも思う。正直どっちも嫌だけど。


 それと、どうせなら背中合わせの形じゃなくて、こう、前を向いて女の子二人と抱き合う形で拘束された方が死ぬ前の良い思い出になる気がするんだけどな。


 荀子ちゃんは、この程度なの、とでも言うように一瞬バカにしたような笑いを浮かべたのだが、すぐに驚いた表情になった。


 墨子ちゃんが鎖を握力でもって潰し切って、壊れた手錠のついた手を外に出したからだ。何重にも重ねられた鎖たちの外に手が飛び出たことで、荀子ちゃんは、さぞ驚いたことだろう。本来なら、手が自由になるはずがなくて、そのための鎖の縄だったのだが、怒れる墨子ちゃんに鉄の鎖などというものは通用しない。自由になった手で折り紙の飾り鎖を扱うかのようにビリビリと金属を破り捨て、俺たちは自由を取り戻した。


 細切れにされた黒い鎖が、地面に落ちていた。


 すると、今度はこちらの番、とばかりに、韓非子ちゃんがゆったりとした服の中から取り出した宝刀スコップを一本だけ投げつけた。


 しかしこれは荀子ちゃんが瞬時に鎖を編みこみ、菱形の盾を形成。それを空間に浮かせて防御した。地面に落ちるスコップ。


 さらに韓非子ちゃんはスコップを次々に取り出し、右、左、右、と三本連続で投げる。が、これも変形する鎖の盾に阻まれて地面に落下した。


 韓非子ちゃんは、自分の一連の攻撃が防がれるのが予想していたようで、間髪を入れずに次の行動に移る。


 服に忍ばせていたスコップを六本、素早い動きで投げつけた。六本の高速スコップの弾道は弧を描きつつ、荀子ちゃんを外側から囲むように襲った。


 荀子ちゃんが六方からの攻撃を避けるために背後に飛び退くと、その動きを読んでいたかのようにスコップの動きは変化し、奥へと追尾。


 荀子ちゃんが瞬時に編んだ鎖の盾で防ごうとしたのだが、六本のスコップが同時に盾に触れた瞬間に爆発し、鎖は砕けて飛んだ。爆発物を取り付けていたらしい。


 なんとも多彩な攻撃だ。


 咄嗟に顔を覆った荀子ちゃんだったが、自ら繰り出した鎖の破片で少し頬を切ったようで、血が流れた。ところで、今更だが、どっからあんな量の鎖を出しているんだろうか。


「おとなしそうな顔して暗器使いだったのね、韓非子ちゃん」


 しかし韓非子ちゃんは荀子ちゃんに言葉を返すことなく、また新しくスコップを取り出す。


 三本のスコップを片手の指の間に挟みつつ取り出して手首のスナップをきかせながら上空に投げた。三方向にバラけたスコップは上空で破裂し、無数の小さなスコップに分裂して校庭に降りそそぐ。一体、そのスコップどんな構造になっているんだ。


 鎖の束と無数のスコップがぶつかる金属音が響く。


 荀子ちゃんは鎖を編んで作った漆黒のパラソルでスコップを防御していたが、韓非子ちゃんはまたスコップを三本取り出して、


「ッ!」


 今度は水平にそれを投げた。


 一本は荀子ちゃんに向けて一直線に向かっていき、残りの二本は何度も交差を繰り返しながら幻惑するように飛んだ。


 韓非子ちゃんのスコップは、ずいぶん空高く上がったようで、まだスコップの雨は止まない。


 荀子ちゃんは体正面に盾を展開させたが、一つが盾にぶつかって爆発し、煙と共に生まれた爆風で盾が吹き飛ぶと、その煙の中から猛スピードで直進してきた鋭利なスコップが荀子ちゃんの眼前に現れた。


 そのスコップを咄嗟に避けたところに襲ったのは、先刻投げた三本目のスコップであり、そのスコップは荀子ちゃんの目の前で多数の小さなスコップに分裂して襲った!


 しかし、荀子ちゃんはすんでのところで鎖の盾を取り出し、直撃を避けた。


 だが……鎖のパラソルを支えていた支柱部分が小型スコップの嵐で折られてしまい、青空から降ってくる篠突く雨のようなスコップ群に対処できなかった。スコップの群れに切り刻まれ、大きなダメージを受けた。


「あぅううっ!」


 小型犬の鳴き声のような、甲高い悲鳴が響いた。



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