プロローグ
1月1日の朝8時、世界的には特別な日だが、恋人がいない俺のとっては何も変わらない日の筈だった・・・はずだった!!
なのに俺の隣には、銀髪美女が全裸で俺の右腕を枕にして、スヤスヤと幸せそうに満面の笑みを浮かべながら寝ていた・・・右腕の血が止まりが痺れて辛いな。
銀髪美女の寝顔をガン見しながら考える・・・この女性は誰だろう?
俺には銀髪美女の知り合いなんていないし、ベットで一晩過ごす女性なんていない。
ってか、俺に彼女なんて17年間出来たこと無い!・・・どうしてこうなった!?
ヤバい!かなり混乱している!
一度冷静になって考えよう・・・思いだそう!
俺の名前は神藤 勇、年齢は17歳で自宅から五分の高校に通う。少し変わってるけど、普通の高校生だ。
家族は父さん、母さん、長男、次男、俺の5人家族だ。
神童家は由緒ある神那流古武術を一族で伝承している神那家の分家1つだ。
神那流は無手・刀・薙刀・弓・槍・棒などの様々な武術は当然で、何故か呪術や魔術などと言ったオカルト的なモノまで手を出している可笑しな流派である・・・正直、先祖の頭を疑いたくなる。
システムとしては、本家の人間に全てを習得させるが、保険として分家が一芸を完全習得して備える感じだ。
だから父さんが剣術、長男が棒術、次男が呪術だったりする・・・次男が呪術を任された時は猛反対してたな(笑)
俺は一芸を伝授されに本家に行った時に、稽古している親戚達を一度見ただけで全ての技を覚えてしまった。
見取り稽古だけで技を覚えられ、奥義や秘術は応用なので直ぐに理解された・・・本家的には立つ瀬がないわけだ。
なので、俺は本家からハブられて、本家に逆らえない親戚も無視しだし、最後には家族にさえ見捨てられた。
今回も年末年始で本家に集まっているが、俺だけ留守番だ・・・って!なんで家族紹介になってんだよ!
えっと、俺は童貞だ!・・・んな事は、どうでも良い!!
やっぱりかなり混乱してるな。
「・・・ふぅ、確か昨日の深夜だったな。いや、時間は12時過ぎてたっけ?」
一度深呼吸をしてから、深夜の事を思い出す。
確か・・・あれだ。1人寂しく寝てたら、12時少し前に目が覚めたんだ。
11時45分、枕元の置時計で時間を確認してからノッソリとベットから起き上がった。
別にトイレに行きたくて起きたわけじゃない。
一階から人の気配を感じたので起きたのだ。
人の気配と言っても第六感ではなく物音だった・・・しかも皿を落として割ったような音だ。
初めは家族が帰ってきたと思ったけど、時計を確認して違うと確信する・・・一年間の成果(決闘)を出してる時間だし
こんな時間に誰だろう?泥棒?
だったら下手だな・・・物音を立てたらイカンだろう。
ベットの下に置いてある木刀を取り出して、忍び足で一階に降りて行く。
ふむ・・・気配は台所からだな。
木刀を右手で軽く握ってから、左手で居間に通じる扉の取っ手に手をかけた。
アッチは俺に気付いてないみたいだな。
「ふふっ・・・おっと、いかんな」
相手が刃物を持っていたら?銃を持っていたら?と考えると自然と笑みが出てしまった。
どうやら先祖の神那は不利な状況を楽しんでいたらしい。
その子孫である俺も闘い楽しむ戦闘狂で、命の危険が高いほど興奮するらしい!
最悪な展開を考えれば考えるほどテンションが上がってく!
「・・・君は誰だい?」
スッと音も立てずに扉を開けたら、すぐに人影が視界に入った。
人影は台所で腰を落として、何かを探すようにゴソゴソとしていた・・・部屋は暗かったが目が慣れ始めて何となくわかった。
そして人影の背後に立って話しかけた・・・正直、人影を確認した瞬間に拍子抜けした。
「キャッ!!」
人影は可愛らしい悲鳴を上げて、コロンと転がって俺の足に寄り掛かってきたので上から見下ろした。
人影の体格は小柄だったので、男性ではなく女性だと予測したけど・・・声を聞いた瞬間に確信した。
この人は女性だ・・・しかもかなり弱い。
一気に高まっていた気持ちが冷めた・・・色々とヤル気が無くなった。
なにより女性の手に持っている生の大根が何とも言えない・・・齧ったのか噛み痕もあるし
「・・・・・・」
ボケッと俺の顔を見たまま固まっている女性を観察する・・・コレはコスプレか?
女性の耳は独特で、魚のエラの様な形なのだが蛇のような鱗で出来ており、側頭部には竹の子のような立派な角が生えていた。
そして背中には大きなコウモリのような純白の羽が生え、手や足には見た事も無いような凶暴そうな純白の籠手とブーツだった。
服装は薄着で胸と腰回りを手足と同じような素材で出来た服だけを身につけ、尻からは太くて立派な蛇の尻尾を身に着けていた・・・あえて言うなら西洋の竜を擬人化したら、こんな感じだろうって姿だった。
「質問にも答えないか・・・警察に通報だな」
女性は黙ったまま進展がないので警察に通報する為に、電話の子機が置いてある場所に歩きだした。
「ちょ、ちょっと待って!」
歩き出そうとした瞬間に、俺のズボンを掴んできた。
「おい!?何してんだよ!今ズボンが少しズレ落ちたぞ!?」
今年一番の反応でズボンを押さえる・・・危ねえ!ズボンと一緒にパンツも掴まれてたからボロリするところだった!
「警察とかマジ勘弁です!」
女性がグイグイと引っ張るので俺の方がマジ勘弁です!
意外に力が強いからキワドイ場所までズボンを下ろされてる・・・チッ!仕方ない!
「解った!通報しないから離せ!なっ?」
「嫌です!離した瞬間に警察ですね!解りますよ!」
なにコイツ!
マジ面倒臭いんだけど!
「じゃあ、せめて力は抜け。じゃないとズボンが下がるから!」
「・・・わかりました」
そう言って、若干だが力が弱くなった・・・スンゲー疲れた。
「まず、君は誰だい?」
もう一度最初の質問をする。
色々聞きたいこともあるけど、コレが一番だろう。
もしかしたら本家から派遣された人かも知れないし・・・俺の監視に。
「私はこの世界とは違う別の世界、異世界の神様のような存在なんだよ!本来なら一目見る事も出来ない存在なんだよ!そんな私に会えて、話している君はもの凄く運が良いんだよ!」
この女性は頭のユルイ子だったか・・・ってか、言い放った時に身体を押し付けるように顔を近付けたのでヤバい。
女性の自己主張している胸が俺の股間に当たって、さっきとは違った感情が高まってくる!
「い、いい加減にしろ!!ウチで何してんだよ!?」
ズボンをしっかりと握って女性を振り払った・・・本気でヤバい。女性の服は下着や水着と変わらないし、身体はボンキュッボンの我儘ボディだからムラムラしてきた。
クゥ~
振り払って体勢を崩した女性の腹から虫の知らせが鳴った・・・理解した。
大根から予想はしてたけど、なんか情けなく感じるな。
この女性は腹を空かせて家に忍び込んだんだ。
女性は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにお腹を抱えて蹲って動かなくなった。
「はぁ、少し待ってろ」
女性の腕を掴んで立たせてから、無理矢理椅子に座らせた。
戸惑っているようだけど、ちゃんと素直に座ってくれた・・・尻尾が邪魔だな。
女性を視界の隅に入れながら冷蔵庫の中を確認する・・・肉と少しだけ野菜があるな。
「面倒だから焼肉とステーキで良いかな?」ボソッ
「え?肉?」
台所からテーブルまで3mほどあったのに聞こえたのか。
外見どおり肉が好きなのか・・・なんか予想通りでつまらんな。
「解ったから動くな。身を乗り出して見ようとするな。喋るな」
「・・・なんか酷くない?」
悲しそうな表情で問い掛けてきたけど、全然酷く無いと思うぞ。
本来なら犯罪者なんだし。
簡単に肉を適当に焼いて、冷蔵庫に入っていた焼肉のタレをかければ完♪
ステーキは塩コショウを1摘みかけるだけ・・・17の料理スキルを舐めるなよ?
ラノベの主人公が全員料理できると思ったら大間違いだ!!
「って事で、完成だ。贅沢に白米も付けてやる。感謝しろよ?」
合計3キロの肉をテーブルに乗せてから、丼にご飯をよそって箸と一緒に渡した。
3キロもの肉を焼いたのは嫌がらせと俺自身も少し食べたかったからだ。
「君は良い奴だな!こんなにも美味そうな肉を!・・・じゅるり」
彼女は眼を光輝かせながら、口元から流れた涎を腕で拭った。
俺の中で銀髪美人が崩れて残念美人になってきたorz
「誰も取らないから、ゆっくり食べろよ」
「ああ、本当にありがとう・・・そういえば、君は私の言葉が解るのだな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
「いまさらだな」
何で今になって言ってきたんだ?
それにしてもそうだな。
銀髪だから日本人ではないな・・・外国人?
しかし言葉は日本語だから日系人か・・・ならなんで聞いてきたんだ?
日本語なら理解して当然だろう。
「?・・・うん、気にしないでくれ」
彼女は一度首を傾げてから、何かを理解して満足そうに頷いた。
なんなんだろうか?・・・それにしても彼女や女性って言うのも変だよな。
「今更だけど、俺の名前は神藤 勇だ。あんたは?」
「シンドー、ユー・・・うん、わかった。シンドーだな。私はアハト・ドラゴニアだ。名の通り私は8番目の子だ。姉が3人と兄が4人だ」
名前だけを聞いたのに家族構成まで喋りだしたな。
それから他愛のない話をしながらアハトが肉を食べるのを見ていた・・・山盛りの肉がどんどん減っていくのは何とも言えない感じだったな。
結局3キロの肉は全部アハトが食べた・・・1欠片も残らなかったな。
「御馳走様でした」
ちゃんと両手を一礼してくれた。
自分の作ったものを美味しく食べてくれるのは嬉しいな・・・まぁ、肉を焼いただけだけど。
「お粗末様です」
綺麗にカラになった皿と丼を持って台所に戻った。
本当に綺麗だ。
米一粒残ってない。
「こんな御馳走をしてもらったんだから、なんか御礼をしなきゃな・・・言葉が通じるからアレも頼みたいし」ボソッ
「あん?最後なんて言った?」
最後の方が小さすぎて聞き取れなかった。
まぁ気にしてもしょうがないか・・・どうせ今後会う事もないんだし。
「なんでもない。それよりも何がいい?私が出来る事なら何でもいいぞ?」
皿と丼などを浸けてからアハトの席まで戻った。
アハトを上から見下ろしたので上乳がエロいな。
そっか、何でもか!何をしてもらおうか!?俺に彼女なんて居なかったから、どんな事までが大丈夫なのか解らん!
「ふむ」
「どうした?」
アハトはジッと俺の目を見つめたままだ。
どうせ今日だけなんだし、思い切った事をしてみようか?・・・うん、そうしよう!
「俺はお前が欲しい」
ちょっと男らしい事を言いながらアハトの胸を鷲掴みにした。
アハトは混乱してるのか呆けたように、自分の胸を見た後に俺の顔を見てきた。
・・・・・・正直死にたいorz
俺は何を言って、何をしてるんだ!?
「えっと・・・すまん」
「わ、わかったよ!じゃあシンドーの部屋に行こう!・・・私は初めてだから優しくしてくれ」
罪悪感から心が押し潰されそうになって、アハトの胸から手を放そうとしたら手を握られた。
俺の手は、アハトの手と胸に挟まれた・・・軟らかい。
アハトの上目使いが可愛く感じた・・・え?
マジで良いの?本当に良いんですかぁぁぁあああああ!?
「あ~、思い出した。俺の部屋に行ったのは日付が変わった1時半だったかな?」
自由な左腕で置時計を掴んで思い出す・・・寝たのは7時だっけかな?
「んっ、ユゥは起きるの早いんだね」
アハトが眠たそうに眼を擦りながら起きた。
俺の呼び名が一日で君→シンドー→ユゥに変わったな。
アハトは裸なのでシーツで隠した・・・これはこれで良いな。
「大丈夫か?なんか飲むか?」
ベットから出てアハトの方に向き直った・・・血が流れてイッキにキたな。
そしたらアハトがモジモジしてシーツを口元まで上げて見てきた・・・やめてくれないだろうか?コッチまで恥ずかしくなる。
「えっと、別の事を頼みたいのだが・・・良いだろうか?」
「何でも言ってくれ。俺達の間に遠慮する事無いだろう?」
俺達の関係ってなんだろう?
恋人じゃないだろう・・・しかし、俺の言葉が告白みたいなモノだったな。
ってか、告白だな、うん。
そしてアハトは承諾したから、やっぱり恋人かな?
「そうだよね!私達はもう番なんだしね♪」
どうやら恋人を通り越して夫婦になっていた。
なんでだろう・・・納得している自分がいる。
「色々引っ掛かる事があるけど・・・頼み事って?」
一応否定しておく。
「私の世界に来てほしい!そして私達の眷属を助けたくれ」
アハトがベットの上で正座をしてから、両手をついて額をベットに擦り付けて頼んできた。
アハトの心の底からの懇願・・・こんな姿は見たくない。
例えアハトの厨二設定でも叶えてやりたい・・・決して罪悪感からではない!
「ああ、任せろ」
アハトの跡一手無い綺麗な背中に視線を送りながら答えた。
柔らかそうな尻がチラチラと見えてムラムラしてくるな・・・あれ?
「そういえば着てた服はどうした?」
俺の部屋を見渡すに、アハトが着ていた服は見当たらないな。
「ああ、その事か」
何を思ったのか、アハトはベットの上で仁王立ちをした。
アハトは何も身に付けてないので、全てを見る事が出来た・・・夜は暗くて良く解らなかったしな。
「見ててくれ・・・Aufhebung 」
アハトが何処の言葉を呟いた瞬間に、光の粒子に包まれた。
そして光の粒子は各部分に集まり、角・耳・翼・尻尾を形作った。
「な・・・なんだそれ!?」
驚いて一歩後退った・・・後退ってしまった。
アハトの表情が悲しそうに歪んだ。
アハトの表情を見た瞬間、後悔の念が襲ってきた。
「私の世界の魔法だ。そして私は始祖竜神の子である祖竜神の八番目の子だ・・・やっぱり未知の力は恐ろしいか」
「違う!そうじゃない!」
そうじゃない。
確かに驚いたが、同時に喜びも感じた・・・俺の知らないモノがあるってことに。
「ん?・・・何を笑っている?」
どうやら俺は笑っているらしい。
こんな心踊ることはない!
なら、さっきまでの厨二設定も本当のことか・・・早く行きたい。
「俺はアハトを信じるよ。だから頼みも聞こう。ってか、俺自身が行ってみたいと思っている!だから行かせてくれ!!」
感情を抑えきれずにアハトに抱き付いて懇願した。
どんな奴が居るんだろうか!?
魔法があるって事は想像を絶する化物が居るんだろうな♪
「ちょっ!!離して」
「ヤダ!絶対に離さない!!」
アハトが顔を真っ赤にして俺から離れようとグイグイと押してくるが、俺は離れないようにさらに強く抱きしめた。
少しの間ちょっとした攻防を繰り返していたが、アハトが諦めたのか、俺の背中に手を回してきた。
「ユゥは強引だな・・・ありがとう。では契約を結ぼう。魂の契約だ」
「魂の契約?」
俺とアハトは抱き合ったまま話を続けた。
「そうだよ。今から行く世界、地上界は男性は魔法が使えず、女性でも限られた人物した使えない
。しかし、男性でも使える方法がある。それが魂の契約だ。魂の契約を結ぶ事で、結んだ女性の魔力を代用して、女性と同じ系統の魔法が使える様になる。因みに魔法属性は火・風・土・水・光・闇の6種類だよ。その6系統の上位にも同じく6つあるけど、今はいいよね?」
「うん、良く解らん。細かい事は、その時に覚えるから大丈夫だろう」
「ふふっ、わかったよ。じゃあ契約を開始するよ・・・んっ」
足元から不思議な光を感じたので、視線を少し下にずらした瞬間にキスされた。
しかも舌で口を抉じ開けられて、口の中に入ってきた・・・コレはアレだな。
えっと、なんだっけ?
「・・・ふぅ、今から細かい説明をする前に忠告するよ・・・私が一緒に行けないからって浮気しないでね?」
されるがままに口の中を蹂躙されてたら、左手の薬指に違和感を感じた。
視線だけを動かそうとしたら口が離れた・・・残念だ、名残惜しい。
そんな事を思っていたら、俺の胸に顔を埋めて言ってきた・・・一緒に来れないのか。
「ま、まぁ少しくらいなら許しても良いよ」
俺が黙ってたら何を勘違いをしたのか、頬を膨らませてソッポを向いた。
なんか罪悪感をヒシヒシと感じるんだが。
「努力するよ」
なんで否定しないんだろう・・・戦闘狂でも男って事かな?
「ふん!ある意味呪いをかけたからね。その代償だと思うよ」
怖い事を言われた!?
呪いってどんなのだろう?かなり気になる!
「じゃあ地上界の説明をするよ?」
「・・・わかった」
それから俺はアハトから地上界の説明を受けて、準備をしてから、もう一度アハトと一晩過ごしてから旅立った。
準備と言っても、アハトとデートだったけどね。