女騎士団〈白鋼〉
王都・第三訓練場。
そこには、完璧な隊列があった。
直立不動。
鎧は磨き上げられ、呼吸すら揃っている。
全員女性、全員歴戦。
——女騎士団〈白鋼〉。
アリア「異物を入れるなよ」
団長アリア(29)は、そう言ってから振り返った。
そこにいたのが、白いワンピースにとんがり帽子の少女だった。
アリア「……誰だ」
ひかり「ひかり。同行者」
王命なので拒否不可。
この時点で、敗北は決まっていた。
初日の訓練。
腕立て、剣素振り、模擬戦。
ひかりは木陰でそれを見ていた。
十分後。
ひかり「止めて」
全員が動きを止めた。
アリア「……何を言っている」
アリアが睨む。
ひかりは淡々と指摘した。
ひかり「疲労が蓄積してる。
このまま続けると三日後に故障者が出る」
アリア「甘えるな!」
ひかり「甘えじゃない。管理」
その日の訓練は中止になった。
——なぜか。
二日目。
ひかりは女騎士たちに椅子を出した。
ひかり「今日は座って」
アリア「なぜだ!」
ひかり「立ちっぱなし、腰に悪い」
五分後。
全員、座っている。
誰も逆らえなかった。
団員「……座るの、久しぶり」
誰かが呟いた瞬間、空気が変わった。
三日目。
ひかりは言った。
ひかり「今日は、何もしなくていい日」
女騎士団、沈黙。
次の瞬間。
団員「……本当に?」
団員「鎧、脱いでいい?」
団員「昼寝しても?」
アリアが止める。
アリア「正気に戻れ! これは罠だ!」
ひかり、首をかしげる。
ひかり「罠じゃない。休息」
結果。
- 団員A:初めて八時間寝て泣く
- 団員B:鎧を脱いだら肩が軽くて戻れなくなる
- 団員C:食堂で笑顔を思い出す
戦闘能力、なぜか上昇。
統率、完全崩壊。
団長アリア、ついにひかりと対峙。
アリア「……貴様、何が目的だ」
ひかり「目的?」
アリア「女騎士団を壊すつもりか」
ひかりは少し考えた。
ひかり「壊してないよ」
アリア「じゃあ、これは何だ!」
背後では、騎士たちが毛布に包まれてお茶を飲んでいる。
ひかり「……本来の状態」
その瞬間、アリアの剣が落ちた。
翌日。
王城に緊急報告。
女騎士団〈白鋼〉
・士気:高
・戦闘力:高
・規律:消失
付記。
白い魔法使い(魔法は使えない)
騎士団への立ち入りを禁止すること
城門の外。
ひかりは帽子を直し、呟いた。
ひかり「……また、やりすぎた」
その背後。
アリアが追ってきていた。
アリア「待て」
ひかり「なに?」
アリア「……また、来い」
ひかり「依存になるよ?」
アリア「わかっている」
真顔で言う。
ひかりは、少しだけ笑った。
異世界でも。
ひかりは規律を守らず、心を守った。
なお、女騎士団は今日も強い。
ただし、昼寝の時間が増えた。




