私たち、ひかりにとって何なの?
ギルド酒場は、修羅場だった。
エレナ「なんで勝手に薬草配合変えたのよ!」
リリア「効率が悪かったから」
セナ「そういう問題じゃない!!」
剣士エレナ、魔術師リリア、回復役セナ。
三人の冒険者パーティが、今まさに空中分解しようとしている。
原因。
テーブルの端で干し肉を齧っている、白い魔法使い——ひかり。
ひかり「……ぼく、何かした?」
全員、同時に振り向いた。
3人「した!!」
事の発端は簡単だった。
依頼帰り、全員が疲弊していた夜。
ひかりが何気なく言ったのだ。
ひかり「今日は、きみたち何もしなくていいよ」
その結果。
エレナは剣の手入れをやめ、翌朝まで爆睡。
リリアは研究を放棄し、初めて八時間寝た。
セナは回復魔法を使わず、座ってお茶を飲んだ。
その結果全員、めちゃくちゃ元気。
リリア「おかしいのよ!」
リリアが机を叩く。
リリア「ひかりがいないと、やる気が出ない!」
ひかり「それは依存」
ひかり、即答。
ひかり「依存はだめ」
セナが震える声で言う。
セナ「……じゃあ、離れるんですか?」
ひかり「うん」
その場の空気が、お通夜状態に。
エレナが立ち上がる。
エレナ「待って。じゃあ聞くけど、
私たち、ひかりにとって何なの?」
ひかりは少し考えた。
ひかり「……大人」
エレナ「軽っ!?」
ひかり「自分で立てる人たち」
エレナ「じゃあ、ひかりは必要ないの?」
ひかり「今は、ね」
この言葉で、三人の情緒が完全崩壊した。
翌日。
ギルドに張り紙が出た。
> 【注意】
> 白い魔法使い(魔法は使えない)に
> 懐きすぎないこと
> 感情のセルフコントロールを失う恐れあり
当の本人。
掲示を見て首をかしげる。
ひかり「……評価、高くない?」
通りすがりの受付嬢(女性・27)がぽつり。
受付嬢「ひかりさん、しばらくギルド出禁です」
ひかり「え」
受付嬢「女の子が次々“休んでいい”を覚えるので」
ひかりは帽子を深く被り、静かに呟いた。
ひかり「……また、やりすぎたか」
その夜。
酒場の裏路地。
エレナ、リリア、セナが、偶然を装って集まっていた。
エレナ「……会いたい」
リリア「依存じゃないわよね?」
セナ「……きっと」
遠くの屋根の上。
ひかりは焚き火代わりのランタンを灯し、空を見上げる。
ひかり「……ゆいなら、ここで止めるな」
異世界でも、ひかりは変わらない。
冒険者を救って、ちょっとだけダメにする。
今日も平和だった。




