たらしって言われるの、心外なんだけど
目を開けた瞬間、ひかりは理解した。
ひかり「ここ、異世界だ」
石畳。
中世風の街並み。
鎧とローブと獣耳。
ひかり「……なるほど、そういう世界観ね」
とんがり帽子を直し、ひかりは淡々と歩き出した。
魔法? 使えない。
でも問題ない。
ぼくには——冒険者をダメにする才能がある。
第一被害者:剣士エレナ(22)
ギルド酒場。
傷だらけの剣士が、一人で酒を飲んでいた。
エレナ「また失敗した……」
隣に座ったひかりは、何も言わずに包帯を差し出す。
エレナ「え?」
ひかり「巻き方、違う。貸して」
数分後、完璧な応急処置。
エレナ「……なんで、そこまで」
ひかり「剣、重すぎ。バランス崩してる」
次の日。
エルナは生涯最高のコンディションで依頼を成功させる。
エレナ「ひかり……一緒にパーティ組まない?」
ひかり「いいよ」
この時点で、エルナはもう戻れない。
第二被害者:魔術師リリア(24)
魔法研究に行き詰まっていた。
リリア「詠唱が安定しない……」
ひかりは帽子から紙と紐を取り出す。
リリア「呼吸と姿勢。魔法じゃなくて身体の問題」
「ゆっくりと呼吸を整え、背筋を伸ばして顎を引く」
魔法は安定。
リリアの評価は急上昇。
リリア「ひかり……君がいないと不安で……」
ひかり「それは、依存だからだめ」
優しく断るのが、余計に刺さる。
第三被害者:回復術師セナ(21)
常に他人優先。
自分を削るタイプ。
ひかり「無理しすぎ」
セナ「でも、私がやらないと……」
ひかり「今日は、きみは座ってて」
代わりに、ひかりが指示を出す。
戦闘は安定。
誰も倒れない。
セナ「……私、休んでいいんだ」
セナは涙が止まらなかった。
周囲からは、ひかりが何かしたと完全に誤解される。
ひかりに関する噂話
「白い魔法使い(本当は奇術で魔法は使えない)」
「冒険者を甘やかしてダメにする存在」
「一緒にいると強くなるのに、いなくなると心が不安定になる」
ギルドではこう囁かれる。
「ひかりに懐かれたら終わり」
「でも、会いたい」
「離れたくない」
本人談
焚き火の前で、ひかりはぼそっと言う。
ひかり「……ゆいほどじゃないけど」
異世界でも、やっていることは同じだった。
- 出来ることを全部やる
- 要求しない
- 見返りを求めない
- でも、必要な時は突き放す
結果。
女の子たちの心が揺れる。
ひかり「……たらしって言われるの、心外なんだけど」
帽子を深く被り直す。
ひかり「ぼくはただ、“安心できる場所”を作ってるだけだよ」
なお、被害者(冒険者)は今日も増えている。




