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ヒーローは誰でもなれる! ~私は悪堕ちヒロインだけどね~  作者: ミント


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ヒーローの仕事の工数

 戦隊ヒーロー派遣会社。企業である以上、その成果は目に見える形で残すべきであり今回の戦闘も報告のためにまとめをしなければならない。


「というわけで今回、俺たちが倒せた戦闘員の数は一人当たり七人くらいだ。この調子だと先月の工数を下回ることになっちゃうから、次回は頑張ってより多くの敵を倒すようにしてくれ」


 グラフを見せながらそれらしく、ご高説を垂れる深紅郎。それで終わるならまだいいが、「特に黄美花はもう少し頑張ってくれよ」なんて言うから桜子と蒼汰から冷たい視線を浴びせられた。


 ほら見ろ、やっぱりお前のせいだ、足手まといだ。口にはしないが、日頃の態度と見下すような表情を見れば言いたいことはすぐわかる。だが、深紅郎はそれに気付いているのかいないのかまだ私に言葉を投げつける。


「黄美花は一般市民を避難させたり、救助者の看護に時間をかけすぎなところがある。それ自体は悪いことじゃないけど、他のみんなはそれをテキパキやってるだろ? 黄美花はそれに時間をかけすぎて、戦闘の効率も下がってるんだよ。だからもっと、頑張ってくれよ」


「頑張ってる、けど……」


「ヒーローは悪い連中と戦うのが仕事だろ? だからもと頑張らなきゃ。気合い入れて、やる気あるところ見せてくれよ」


 言い聞かせるような口調の深紅郎に、私は黙って俯く。


 反論できない、というところもあるがそれ以上「何を言っても無駄だ」という諦めの方が強かった。深紅郎は「頑張れ」「やる気」「気合い」という言葉が好きで、何でもそれで解決しようとする。「ヒーローの仕事は戦うことだ」とも……それらの言葉は決して、悪い意味を持つものではない。むしろ本来なら正しい言葉であり、大切に抱えるべき思い出はあるのだろう。




 だが――私はどうしても思わずにはいられない。


 ヒーローとしての出来を、倒した敵の戦闘員の数だけで決める。どんな戦いがあったにせよ、それをは「工数」としてしか評価されない。


 なぜそうなったか、現場の状況、そしてその場に居合わせた人々の事情……それを全く考えていないのは、「ヒーロー」として正しいことなのだろうか。


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