私はヒーローを止めた
全力で戦いに臨んだ。今までで一番、力を込めた。検討した、頑張った。
――だが、やはり結果は出なかった。
「……短い間でしたが、今までお世話になりました」
頭を下げた私に、労いの言葉をかける者は誰もいない。
桜子は心なしか、嬉しそうにすら見えた。深紅郎は諦めたような顔、蒼汰はただ冷たい目を向けるばかり……私から目を逸らす樹だけが、良心的といえば良心的だろうか。いずれにせよ、ヒーローを辞めた私はもう「運命戦隊サバイバー」にとって無関係な人間なのだ……その事実を驚くほどあっさりと突き付けてくるメンバーに、改めて「自分は必要とされない存在だったのだ」と認識させられる。
ヒーロースーツは返還した。退職後に必要な書類は後から送られてくる。髪だけは、まだ黄色に染めたままだが……とにかく私はもう、ヒーローではなくなった。本来なら絶望的な状況だが、心のどこかで安堵している自分もいる。
ヒーローでいることは、正直辛かった。
一般人に気を配りながらの戦闘。容赦なく敵意を向けてくる相手への攻撃。それはまだ、「ヒーロー」の仕事だと思えば我慢できた。
だが――工数や業績を優先した、「弱者を助けるため」ではなく「会社のため」の戦い。根性論だけを語り、「できないのは自分のせい」と決めつける方針。スポンサーへの接待や管理職からの圧力。そして、本来なら協力すべきメンバーとの不和――私が望んだヒーローは、そこに存在していなかった。
誰かを助けられるヒーロー、世界を救うために立ち向かえるヒーロー。私はそれを目指したが、実際のヒーローはそんなものではなかった。
結局、私はヒーローに向いていなかったのだ……ならヒーローなんて辞めて良かった、ヒーローとしての活動なんて止めて正解だった。
そう、納得したつもりだが――深紅郎の「次のメンバーは」という一言で一気に私は現実に引き戻された。




