5月24日(月)
5月24日(月)
今日は朝から嫌なものを見てしまった。
週末、何度か龍太にメールしたんだけど、奴は返信してこなかった。
無口な奴だって知っているけどさぁ。
彼女からメール着たら、何か答えてくれたっていいじゃん。
それとも、週末は誰か別な女に会っているとか?
奴が二股かけたことあるっていう噂は聞かなかったけど、ありうるんじゃないだろうか?
チクン…
何この胸の痛みは?
あたし、どうしちゃったんだろ?
もしかして、奴がメールくれなかったから、あたし傷付いてるんだろうか?
朝、いつもより早めに家を出て駅で龍太を待ち伏せした。
早く会いたい。
メールくれなかった文句言ってやろう。
待ちくたびれて、やっと奴が歩いてくるのが見えた。
声をかけようとして、隣に女の子がいるのが見えた。
誰あれ?
制服着てるからうちの生徒だよね。
糞馬鹿龍太はあたしに気付かずに、そのまま行ってしまった。
ショックで暫くその場を動けずにいた。
ノロノロと階段を上る。
前の電車に乗って行ってしまったんだろう。
ホームにはもう彼らの姿はなかった。
胸がモヤモヤする。
あたしは龍太の彼女だけど、あたし達の間に恋愛感情はない。
ない筈。
絶対にないのだろうか?
どっちにしても、奴の方にはないだろう。
だから、奴が別の女を好きになるっていうことはありうる。
午前中の授業はさっぱり耳に入らなかった。
英語の授業で当てられて、とんちんかんな答えをしたあたしをクラスの皆は笑ったけど、あたしは泣きたかった。
麻子だけが心配そうにあたしを見ていた。
クラス移動中、麻子はあたしに話しかけたそうにしたが、他の子もいるので話せなかった。
でも、話したとして、だからあれ程注意したじゃないと言われるに決まっている。
あんなに言われたのに、あたしは恋に落ちてしまったんだろうか?
だけど、恋愛感情がなくても一応彼女だし、二股かけられたら怒るのは当たり前でしょう?
そもそも、二股かけられてるのだろうか?
もしかしたら、ただのクラスの子かも知れない。
偶々、道で会ったとか。
龍太と一緒に歩いていた女の顔を思い出す。
嬉しそうな顔して、一生懸命龍太に話しかけていた。
やっぱり、あれは好きな人に見せる顔だ。
龍太はどんな顔してたっけ?
女ばっかり見てたから、よく思い出せない。
いつもと変わらなかった様な気もする。
お昼休み。
いつもより遅く屋上に行く。
龍太の顔を見るのが怖い。
もしかして、別れを告げられたりするのかな?
どうせ、奴にとってはゲームだったんだし。
でも、まだ1週間も経ってないよ。
奴にとってはこれが付き合う平均期間なの?
恐る恐る屋上の扉を押すと、龍太が仰向けに寝転んでいるのが見えた。
今日は天気が良く暖かい。
もしかして、眠っちゃってるの?
静かに近づくと、あたしの影が龍太の顔にかかり、奴は目を開いた。
「遅かったな」
と欠伸をしながら起き上がる。
黙ってお弁当を渡すと、いつもの様に二人で黙って食べた。
あたしがお弁当箱を閉じると、いつもの様に紅茶のペットボトルを手渡してくれる。
でも、もう我慢できない。
はっきりさせないと、夜も眠れないだろう。
「ねえ。今朝の女、誰?」
「ん?」
「今朝、女と一緒に登校してきたでしょ」
「ああ。加藤亜由美」
名前聞いてんじゃねえよ、馬鹿!!!
「だから!あの人、何?」
「クラスの女」
「ふーん。毎朝、待ち合わせてんの?」
「いや」
「じゃあ、今朝は偶々?」
「んー。駅で時々会う」
「彼女、龍太のこと待ち伏せしてんじゃないの?」
「……」
「あたし、龍太の彼女だよね」
「…ああ」
「あたし、明日から龍太と登校したい」
「……」
「…駄目?」
「…いんじゃねえの」
「じゃ、じゃあ、明日から駅で待ってるね」
「ああ」
よかった。
あの女に特別な感情はないみたいだ。
でも、今日はキスしてくれなかった。
あたしからおねだりすれば良かったのかな?
無理、無理、無理!!!
絶対無理だ、そんなこと!!!!!