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10月7日(木)
「ねえ、龍太って坂本先輩とフランケンシュタインやるんだってね」
朝、龍太に文化祭の劇のことを聞いてみると、嫌そうに顔を顰めた。
「……」
「主役なんて凄いね」
「……俺達が部活行ってる間にクラスの奴らが勝手に決めやがった」
「絶対観に行くね」
「何で俺が怪物やんなきゃなんねえんだよ」
ブツブツ文句言っている。
あたしが笑い出すと睨まれた。
「でも、やるならちゃんとやってやろうと思って、原作読んだ」
「へーえ」
龍太って真面目なんだね。
鞄から出した文庫本をあたしに差し出す。
「貸してやる」
「面白かった?」
「まあな。ちっとだけ奴の気持ちが分かる気がした」
あたしも読んでみよう。
怪物の気持ちが分かるって言った龍太がちょっと気になった。
フランケンシュタインって顔が継ぎ接ぎの化け物でしょ?
何でそんな化け物の気持ちが分かるんだろ?