表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/71

5月21日(金)

5月21日(金)


今日は朝から雨が降っている。


折角、龍太の分もお弁当作ったのに屋上で一緒に食べれない。


運良く冷凍庫に海老があったので、せっかくエビフライ作ったのに。


お昼休み、奴を携帯で呼び出し、廊下でお弁当を渡した。


「お弁当箱、月曜日に返してくれればいいから」


「サンキュ」


あたしに紅茶のペットボトルを差し出す龍太。


今日もあたしの分、買って来てくれたんだ。


「ありがとう」




放課後、麻子と昇降口まで行って、立ち止まる。


やっぱり、まだ帰りたくない。


「あたし、ちょっと用事思い出したから、先帰って」


「うん」


龍太のことだと分かったのか、麻子は心配そうな顔をしながら一人で帰って行った。


部活は観に行けない。


でも、教室で待っていたらすれ違う可能性がある。


練習、何時頃に終わるんだろう?


雨降っているから、外で待っているのは寒いし。


結局、体育館まで行き、入り口の所に座って待つことにした。


すると、あたしと同じ様に待っている女の子が6人程いた。


何この人達。


部員の彼女かしら?


それとも、追っかけとか?


龍太目当ての子とかいるんだろうか?


隣に座っている子に聞いてみる。


「すみません。練習って何時頃に終わるのか知っていますか?」


「いつも7時頃には終わるけど」


「あ、そうですか。ありがとうございます」


「あなた、1年生?誰のファンなの?」


ファンって何だ?


「1年D組の藤本花です。えっと、ファンて言うか、今日は、ちょっと様子見に来ただけです」




やっと部活が終わり、着替え終わった部員がぞろぞろ出てきた。


うちの男子剣道部は坊主頭にしている奴は少なく、結構格好いい奴が多い。


待ち構えていた女の子達は、まるで芸能人を見たみたいにキャーキャー騒いでいるが、直接彼らに話しかけたりしない。


一番最後に確か部長の何とか先輩と龍太が出てきた。


龍太はあたしを見るとちょっと目を見開いたが、そのまま外に出て行く。


何よ、その態度。


2時間半も待っていた彼女を無視すんのかよ。


だけど、龍太は外に出て傘を開くと、振り返ってあたしに向かって言った。


「帰るぞ」


「うん」


慌てて龍太の側に行き、自分の傘を開く。


本当にでかいな、こいつ。


黙って並んで歩く。


雨じゃなかったら、もっと近くに行けるのに。


「練習大変なの?」


「もうすぐ、インターハイ予選始まるからな」


「試合観てみたいな」


「……」


こいつって本当に会話続かないんだよね。


「…えっと、龍太って電車通学?」


「ああ」


「家、どこの駅?」


「おまえと同じ」


「え?何で知ってるの?」


「ん?」


「駅」


「前、見たから」


「ふーん」


「……」


何か嬉しい。




電車の中でもあたしからずっと話しかけ続け、駅を出た所で別れた。


「あたし、こっちだから」


「うん」


「また月曜日にね」


「おう。そうだ、これ」


奴がバッグから出したのは、お弁当箱。


「美味かったぜ」


笑って言われたその一言に胸がドキンとした。


やっぱり、あたし、龍太のこと好きなんだろうか?


そんなことないって言い切れない自分が怖い。


一人で歩きながらも、顔がニヤけてしまう。


「ただいま」


家に帰ると思ったとおり、お母さんに言われる。


「どうしたの。遅かったのね」


「うん。ちょっと、友達の部活終わるの待ってた」


「ふーん。部活って何部?」


「…えっと、剣道部」


「ボーイフレンド?」


やっぱり、きた。


その質問。


「…うん」


うわ、何か恥ずかしいぞ。


「毎朝、花が一生懸命お弁当作っているのも、その子のため?」


まだ、皆寝ているうちに作っているから、お母さんは知らないと思ってた。


「…うん」


あー、照れくさい!!!


でも、お母さんは、


「今度、紹介してね」


と言うと、台所に戻ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ