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9月26日(日)

朝、随分遅く目が覚めた。


下に下りると誰もいなかった。


台所のテーブルの上には、買い物に行ってきますと書置きがあった。


髪の毛がごわごわになっていたので、朝からお風呂に入った。


裸になると昨日のことが思い出されて、お風呂の中で一人恥ずかしさのあまり悶絶していた。


思い出すと物凄く恥ずかしいけど、でもやっぱり幸せだ。


髪を拭きながら自分の部屋に戻り、引き出しにしまってた写真をボードに貼り直した。


ついでに龍太にメールする。


「To :黒澤龍太


Sub :おはよう


今日も剣道の稽古頑張ってね」


台所で紅茶を入れて、パンを齧っていると返事が着た。


「From :黒澤龍太


Sub :RE おはよう


今起きたの? 体調は?」


気遣ってくれるのは嬉しいけど、恥ずかしいじゃん。


「To :黒澤龍太


Sub :RE RE おはよう


元気だよ。龍太は?」


「From :黒澤龍太


Sub :RE RE RE おはよう


すっきりさっぱり、絶好調」


エロ馬鹿龍太ー!!!


「To :黒澤龍太


Sub :RE RE RE RE おはよう


バカ!!」




お母さん達が帰ってきた。


「おかえりなさい」


「ただいま。やっと起きたの?」


「……うん、さっき」


「昨日は楽しかった?」


「うん」


何か気まずいなあ。


お母さんの顔がちゃんと見れないよ。


バレちゃうじゃん。


「ねえ、お母さん。今度はあたしも行っていい?」


香代の質問に救われた。


「そうね。高校生になったらね」


「えー、どうしてー?!! お姉ちゃんと一緒だったら危なくないよ」


「そんな小さい頃から遊び歩かなくていいの」


「だって、香代が高校生になったら、雄二君バンド辞めちゃってるかも知れないじゃん」


「他に観に行きたいのが出てくるわよ」


「雄二君のバンドが観たいのにー」


「駄目」


そりゃ、そうだよね。


あたしだって香代の年では夜遊びなんかしてなかったよ。


昼食の後、天気がよかったので、庭で宿題をした。


あっ、そうだ。


麻子にメールしなくちゃ。


「To :麻子


Sub :あいあむはっぴー


龍太と仲直りしたよ。心配かけてゴメンね」


暫くすると麻子からメールが着た。


「From :麻子


Sub :RE あいあむはっぴー


めでたし、めでたし。後で電話するね」




「お母さん、ちょっと出てきていい?」


「どこに行くの?」


「麻子んとこ。夕食までに帰るから」


「宿題は終わったの?」


「うん」


「気をつけてね」


「はーい」


麻子が話したいことがあるからちょっとだけ出て来れないと言った。


学校近くの駅のコーヒーショップで待ち合わせた。


お店に入ると既に麻子は来ていた。


「呼び出してごめんね」


「ううん。どうしたの?」


「加奈の従姉妹ね、結局明日から転校してくるみたいよ」


「あ、そうだったんだ。一緒のクラスになれるといいね」


「それは大丈夫みたい。加奈のご両親が校長に話しに行ったって言ってたから」


「よかったじゃん」


「でね、花は絶対そんなことしないって分かってるけどさ。あの話は極秘だよ」


「うん、誰にも言ったりしないよ」


「噂流されたら終わりだからね」


「うん」


そうだよね。


龍太にも言っとかなきゃ。


龍太も絶対に口外したりしないと思うけど。


そう言えば、龍太は色んな噂立てられても、全然気にしてない風なんだよね。


あれってどうなんだろう?


「黒澤先輩と仲直りできて良かったねー」


「うん。実はね……」


小声で仲直りの顛末を伝えた。


「それは、それは、おめでとう!!」


「……うーん、ありがとう?」


「何ではてなマークが付くのよ?」


「……だって」


恥ずかしいじゃん。


「ヤバイ。明日二人が一緒のところみたら想像しちゃいそう」


「ちょっと麻子!!! 恥ずかしいから、変なこと言わないでよ」


「とにかく、よかったね」


「うん、幸せだよー」


「花の嬉しそうな顔、すっごく久し振りだから。こっちも幸せになってしまうわ」


「麻子は? 柴崎とはどうなったの?」


「進展なしかな。夏休み中は何度かメールやり取りしたんだけどね」


「脈ありそう? 休み時間とか結構話してるよね?」


「友達って雰囲気から、中々抜け出せないんだよね」


「麻子から告白しちゃいなよ。その方が絶対早いって」


「おい、人事だからって」


「違うよ。あたし、自分だったらそうするよ。だって、もしOKされたらラッキーでしょ? もし駄目だったら諦めつくじゃん」


「あー、でも、あたしはやっぱり男から告白されたいんだわ」


「そりゃ、乙女の夢だな」


「花とは違って、あたしは正真正銘の乙女ですよ」


「そうゆうこと大きな声で言わなくていいから」


「あらら、真っ赤になっちゃって。先輩はあんたのこと可愛くて仕方ないんだろうね」


「……そうかなぁ?」


「自覚ないの? もう花ったら、ニブチンなんだから」


「何でよ?」


「男がどんな目で自分を見てるのか全然気づいてないんだもん」


「えっ?」


「中学ん時からだよ。近づこうとする男子をバッサバッサ切り捨てんの。側で見てて可笑しくってさあ」


「えーっ?!! そんなこと、今まで何も言ってくれなかったじゃん」


「言ったよー。クラスの誰々は花に気がありそうとか言ってたじゃん。あんたは笑ってそんなことある訳ないって」


「あれ、冗談じゃなかったの?!!」


全然気付いてなかった。


からかわれてんだと思ってた。


悪いことしちゃったな。


しょんぼりしたあたしを麻子が慰めてくれる。


「気付かなかったってことは、好きじゃなかったんだから仕方ないよ」


「うん、そうだけど」


「よかったじゃない。黒澤先輩が初めて付き合った相手で」


「うん。そうだよね」


「花が羨ましいよ」


麻子にも幸せになってほしいな。


柴崎とのことあたしがどうにかできるのかしら?


でも、こういうことはあまり他の人がちょっかい出さない方がいいって言うし。




夜、ベッドに入ってから龍太に電話した。


何か緊張するんだよね。


龍太に電話するのって。


「はい」


「龍太、今話しても大丈夫?」


「……ああ」


「あのさ。この間、友達の従姉妹の話したでしょ?」


「うん」


「あの子、明日からうちの高校に来るんだって」


「ふーん」


「龍太はそんなことしないって分かってるんだけど。あの話、絶対に口外しないで欲しいんだ」


「しねえよ」


「うん」


「……」


「ねえ、龍太?」


「……ん」


「あたしって幸せ者だよね」


「……」


龍太は何も答えないけど、何やら笑っている気配がする。


「ちょっと、何で笑うのよ!!」


「……いや」


「真面目に話してるのに」


「可愛いなと思って」


「……」


今度はこっちが黙り込む番だ。


さっき麻子が言ってたことを思い出す。


恥ずかしいけど、嬉しいな。


「……じゃな」


「うん、また明日」


「おやすみ」


「おやすみなさい」


電話を切った後もドキドキしてるよ。


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