9月25日(土)(三)
R15シーンです。ご注意ください!
…………っ!!!!!!!!
無我夢中で何かに縋りつこうとしたあたしは、両脇にある龍太の腕を強く掴んで爪を立てる。
痛いだろうに龍太は何も言わないで、されるがままになっている。
目を開くと龍太が苦しそうな顔をしてあたしを見下ろしていた。
「辛いんだろ。ごめんな」
親指で涙を拭ってくれる。
「……幸せ……だから」
頭を振って小さな声であたしがそう言うと、龍太はあたしの頭を抱き寄せて耳元に低い声で囁いた。
「愛してる」
あたしも、あたしも愛してるって言おうとしたけど、もう言葉にならなかった。
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気が付くとシーツに包まれて龍太に抱き締められていた。
龍太の手が置かれたお腹がポカポカ温かい。
あたしが身動きすると龍太の声が頭の上から聞こえた。
「大丈夫か?」
「……うん」
やっぱり恥ずかしくて、龍太の顔が見れないよ。
龍太の胸に顔を埋めると、髪を優しく撫でられた。
ふと、気になっていたことを思い出す。
「ねえ、龍太」
「ん?」
「あたしって龍太の彼女だよね?」
「花って彼氏でもない奴とこういうことすんのか?」
「ちゃんと答えてよ」
「……愛してるっつったろ」
「うん、あたしも」
「何?」
「……」
意地悪。
龍太の意地悪。
龍太の肩を拳で叩く。
龍太は黙って叩かれている。
トントン叩いているうちに涙が出てきた。
急に泣き出したあたしを見て龍太が慌てた。
「おい、どうした?!」
「もう絶対、絶対……別れるなんて言わないで!!!」
「ああ」
「怖かったよ。新しい彼女ができちゃったかと思った」
「馬鹿」
腕に閉じ込められ、髪にキスされた。
龍太の腕の中で、くぐもった声で尋ねた。
「……あの女、誰?」
「ん?」
「前に廊下ですれ違った時に一緒にいた女」
「……ああ。あれ、平野っつうA組の女」
「ふーん。仲良さそうだったね」
できるだけ平気を装って言ったのに、声が震えてしまう。
「別に」
「……」
暫くして、龍太がプッと噴出すのが聞こえた。
「花ってすっげえ独占欲強いよな」
「だ、だって」
あたしが泣き声を出すと、よしよしと言うように頭を撫でられた。
「ヤキモチ嬉しいけど。俺、花の代わりに他の女なんて考えらんねえから」
「うん」
「でも、マジ辛かった。この1ヶ月間」
「ごめんね」
「今すっげえ幸せだから許してやる」
よかった。
龍太を失わなくて本当によかった。
「……龍太」
「何?」
「もう他の女の人とのエッチの話しないで欲しい」
「分かった」
そう答えた龍太は、少ししてからニヤニヤしながら言った。
「でも、あれ程積極的になるとはな」
「……酷いよ」
確かに龍太に裸で迫った女の話聞いて、同じ様なことしちゃったけど。
他の女とも、あたしとしたみたいなことしたんだって思うとすっごく苦しいよ。
頭をギュウと抱き締められた。
「泣くな」
「だって」
「花が信じらんねえくらい良かったから、他の女との記憶なんて全部吹っ飛んじまった」
「馬鹿」
「嬉しい癖に」
「……」
そう言ってくれて嬉しいよ。
過去は消せないけど、これからはあたしだけであって欲しい。
「あたしが龍太の記憶全部上書きする」
「うん、そうしろ」
龍太はあたしを見て嬉しそうに笑った。
「花」
「うん?」
「戻ってきてくれてありがとな」
「うん」
ずっと龍太の側にいたい。
もう絶対、龍太から離れたりしない。
だけど、もしあたしが龍太の家に来なかったら、あたし達本当に別れちゃったの?
龍太はそれでも良かったの?
「あのさ」
「ん?」
「もし、あたしが龍太んちに来なかったら、本当に別れちゃうつもりだったの?」
「花はどうなんだよ。俺が連絡しなかったらずっと放置プレイ続けてた?」
「放置プ……?! もう、龍太の馬鹿!!!」
あたしは真面目に聞いてるのに、龍太はいっつもこういうことしか言わないんだから。
だけど、龍太が顔を背けて話し始めた時、こんなことを聞いたことを後悔した。
「……俺の顔見るだけでも怯えてたから、マジで嫌われたと思った。理由はまったく思い浮かばなかったけど、花からは全然連絡ねえし。理由なんかどうでもよくなった」
「龍太、ごめん」
龍太の腕にそっと手を乗せた。
「毎日、今日こそ別れを告げられるかとビクビクしてた。廊下ですれ違った時、花に話すのが怖くて逃げた。だけど、それからも全然連絡来なくて、もう駄目だと思った。だったら、俺が開放してやるしかねえと」
「龍太、ごめんね」
龍太の頭を抱き寄せた。
あたしの腕の中から龍太のくぐもった声が聞こえる。
「苦しかった。もしかして元通りになるじゃねえかって思いを完全に捨て切れなくて。狂っちまうかと思った。」
あたしって最低だ。
自分のことばっかりで。
龍太の気持ちなんて全然考えていなかった。
龍太のこと、こんなに苦しめてたなんて。
「ごめん……なさい」
涙が溢れる。
龍太の頭を胸に押し付けて、頭の天辺に心を込めてキスをした。
龍太はあたしの腰に手を回してしがみつき、胸に頬を摺り寄せた。
こんなに大きな男が小さな子供みたいに思える。
愛しくて、愛しくて。
しっかり抱き締めて、あたしが泣いている時にやってくれる様に髪を優しく撫でた。
龍太のクシャクシャの硬い髪の毛。
もう絶対に龍太のこと傷付けない。
「……おい、いい加減に放せ」
「え?」
あたしに撫でられたりするの、嫌だったんだろうか?
「またやりたくなっちまうだろうが」
「龍太の馬鹿ぁ!!」
龍太を押し退けてシーツに潜り込んだけど、泣き笑いになってしまう。
「起きれるんだったら、服着ろよ。送ってく」
「あたしが服着る間、向こう向いてて」
「さっき全部見たから別にいいじゃん」
「さっきはさっき、今は今なの。向こう向いててよ!!!」
「面倒くせ」
それでも、ちゃんと背を向けてくれた。