8月14日(土)(後)
R15シーンを含みます。苦手な方はご注意ください。
8月14日(土)(後)
「そう言えば、明日は花ちゃんは一日バイト?」
お母さんに聞かれた。
「はい」
「お父さんとお墓参りに行く予定なんだけど、雄二はどうするの?」
「久し振りだから、一緒にお祖母ちゃんちに行くよ」
「龍太は?」
「俺は合宿の準備があるからパス」
「そう。そんなに遅くならないうちに帰ってくるつもりだけど、夕飯どうしようか?」
お母さんがお父さんに聞いた。
「帰ってきてから何か出前でも取ればいいだろう?」
「何か作っとく」
龍太がそう言ったのでびっくりした。
「あら、久し振りにお兄ちゃんの手料理食べられるわね」
嬉しそうにお母さんが言った。
「あたしもバイトから帰ったら手伝います」
「明日の夜、帰ってくるのが楽しみだわ」
食事が終わると、お母さんがハーブティーを入れてくれた。
お父さんは食事が終わるとすぐ書斎に引っ込んでしまった様だ。
お母さんと雄二君はリビングでテレビを見ながらお茶を飲んで、チョコレートを食べている。
後片付けは龍太の仕事みたいだ。
あたしも食器を洗うのを手伝った。
リビングに戻ると、お母さんが言った。
「花ちゃん、お部屋に案内するわ」
1階の客間に案内された。
「自分の家みたいに何でも好きに使って頂戴」
「ありがとうございます」
そうだよね。
うちのお母さんに娘を預かってくれって頼まれて、付き合っているとしたって、流石に息子と同じ部屋はないよね。
龍太の部屋に荷物を取りに行く。
ベッドに寝転がって雑誌を読んでいた龍太が顔を上げた。
「今日は疲れたから、もう寝るね」
そう言ったあたしを手招きする。
「何?」
龍太はベッドに近寄ったあたしの手を握って引き寄せた。
抱き寄せられて耳に囁かれた言葉に頭が沸騰した。
「後で夜這いに行くから、部屋の鍵かけんなよ」
「ばっ、馬鹿龍太!! な、な、何言ってんのよ!!!」
ニヤニヤしながら、暴れているあたしを離すと龍太は言った。
「また後でな」
「鍵かけるからね!!! 絶対来ないでよ」
エロ馬鹿龍太。
もう、何でいつもああいうこと言うんだろ。
部屋に鞄を置いて、洗面道具の入っているポーチとパジャマを出す。
リビングを覗くと、お母さんが一人でテレビを観ていた。
「あの、洗面所お借りしていいですか?」
「どうぞー。あら、花ちゃん、もう寝るの? 」
「今日、暑かったから、ちょっと疲れちゃって」
「お父さんは夜中まで書斎から出てこないから、お風呂でも何でも遠慮なく使ってね」
「あ、はい」
バスルームは広くて、とても綺麗だった。
青と白のタイルが敷き詰められ、籐の家具、テーブルの上には観葉植物、そしてお風呂は何とジャクジーバスだった。
だけど、お風呂に入るのは遠慮して、顔を洗って軽くシャワーを浴びた。
パジャマを着て、歯を磨いた。
「おやすみなさい」
リビングのお母さんに挨拶をして、部屋に戻った。
鍵かけた方がいいのかなあ。
だけど、龍太が本当に来て鍵がかかってたら、あっさり引き上げてくれるんだろうか?
ドアの前で騒いで、龍太の両親に聞かれたりする方がやばくない?
どうしよう?
結局、鍵はかけないことにした。
あんなこと言ったけど、冗談かも知れないし。
もしかして、あたし、ちょっと期待しゃちゃってる?
何、考えてんの?
ここ龍太の家だよ。
龍太の両親も弟もいるんだよ。
やだ、やだ、さっさと寝ちゃおう。
ベッドに入ったけど、疲れているのに眠くならない。
あたし、枕が変わるとなかなか眠れないんだ。
本、持ってくれば良かったなあ。
眠れない時って羊数えるんだっけ?
羊が1匹、2匹、3匹……
………………
…………5387匹……
あれ?
87匹だったっけ?
それとも97匹?
分かんなくなっちゃった。
龍太のことが頭から離れない。
羊を数えている間もずっと暗闇の中で耳をすましていた。
今、何時だろう?
枕元のランプを点けると、腕時計を取った。
11時40分。
ベッドに入ったのは9時頃だったから、もう2時間以上も悶々としてるんだ。
来る、来ない、来る、来ない、来る……
……やっぱり来ない………
ああ、もう馬鹿みたい。
さっさと眠ろう。
そして、ランプを消そうと手を伸ばした時、ドアノブがカチャッと小さな音を立てた。
来た!!!!!
慌ててベッドの上に起き上がる。
膝を立てて座り、口元までシーツを引っ張った。
龍太は部屋に入ると後ろ手にドアをそっと閉めて鍵をかけた。
ドクン、ドクン、ドクン……
胸がドキドキして顔が熱くなる。
黙ったまま龍太が近づくのを待った。
龍太はベッドの上に腰を降ろすとあたしの方を見てニヤッと笑った。
「待ってた?」
「……馬鹿」
龍太は目を逸らすあたしの頬に手を当てると、自分の方を向かせてじっとあたしの瞳を覗きこむ。
そして、あたしの唇に優しくキスをした。
最初は啄ばむ様だったキスは段々と激しくなる。
熱い吐息を漏らすと、龍太が耳元に囁いた。
「声、出すなよ」
キスを続けながら、龍太の指はあたしのパジャマのボタンを次々と外していく。
耳朶を甘噛みされ、出そうになった声を慌てて飲み込む。
ベッドの上に柔らかく押し倒された。
龍太は、いったんあたしを離して着ていたTシャツを脱ぐと、またあたしの上に覆いかぶさってきた。
甘い刺激に体がビクビクと反応する。
必死で声を耐えた。
ものすごく恥ずかしい。
手を下に伸ばしシーツを探すが、どこにあるのか分からない。
あたしの膝を割ろうとする龍太の手を押さえる。
「やっ、駄目!!!」
声にならない悲鳴を上げたあたしをなだめる様に、龍太はあたしの横に寝そべって、あたしの体を引き寄せた。
そして、真っ赤になって涙目のあたしを優しい目で見つめた。
「怖がんな。昨夜みたいに気持ち良くしてやるだけだから」
髪を撫でて額にキスされた。
羞恥心に押しつぶされそう。
ガチガチになったあたしの体をほぐす様に龍太の手が触れてくる。
全然やらしくない優しい優しい愛撫。
気持ちがいい。
あたしの体から力が抜けると、龍太は起き上がってあたしの足元に座り、さっきみたいに膝に手をかけた。
だけど、体中の力が抜けてしまって、抵抗できない。
声を立てないように自分の手の甲を噛んで刺激に耐える。
そして、次から次に襲ってくる大きな波に飲まれ、あたしは意識を手放した。