8月13日(金)(後)
R15シーンを含みます。ご注意ください。
8月13日(金)(後)
そして、そっとあたしに口付けた。
優しいキス。
蕩ける様に甘いキス。
段々激しくなるキス。
貪る様な激しいキスにあたしは一生懸命応えていた。
怖いけど。
まだちょっと怖いけど。
龍太にあたしを全部預けたい。
目をきつく閉じて、ビクビクしながら龍太の次の動作を待ち構える。
もう、キスに集中できないよ。
唇を離した龍太に呼ばれた。
「花」
「なっ、何?」
「俺のこと見てろ」
優しい目であたしを見つめる。
龍太の綺麗な切れ長な目。
いつもは、周りを威嚇するような鋭い目つきをしてる癖に。
今は、あたしを愛しそうに優しく見つめている。
吸い込まれそう。
啄ばむ様なキスが何度も繰り返される。
その間もずっとあたし達の視線は絡み合っていて。
好き。
好き。
龍太が好き。
大好き。
龍太の首に縋りつく。
体が熱い。
融けてしまいそう。
もう何も考えられない。
頭がおかしくなる。
もっと、もっと。
……あと少し。
そして、何も分からなくなった。
気が付くと、あたしはシーツに包まれて、龍太の腕に抱かれていた。
身動ぎしたあたしに龍太の声が聞こえた。
「目覚めたか?」
「……うん」
「気持ち良かった?」
「……」
もう、そんな恥ずかしいこと、答えられる訳ないでしょ!!!
赤面して黙り込んだあたしの顔を覗いて龍太が言った。
「滅茶苦茶可愛かったぞ。花のイク時の顔」
「馬鹿!!!」
チュッと音を立ててあたしの額にキスをした龍太は笑いながら起き上がった。
「じゃ、俺、帰るから」
「え?だって、龍太はまだ」
「延長戦でいいっつったろ?」
床に落ちていたTシャツを拾って、頭から被りながら龍太が言った。
「……龍太」
「いい加減服着ろよ」
「えっ?今、何時?!」
「5時過ぎ」
そんなに長い間あたし眠ってたの?!!
お母さんが帰ってきちゃうじゃん!!!!!
慌ててベッドから飛び降りて床に落ちている服を拾い集める。
「大胆だな」
ブラをつけようとしていたあたしは、龍太の声で我に帰った。
「キャー!!!!! 龍太のスケベ!!!! こっち見ないでよ」
「折角いい眺めだったのに」
ジー……
「ちょっと、あんた、何デジカメ出してんのよ?!!!」
まだ半裸のあたしはカメラを向けられても、手に持った服で体を隠すことしかできない。
カシャ、カシャ、カシャ……
「撮るなー!!!!! エロ馬鹿龍太!!!!!!!」
急いで服を着て、デジカメを取り返そうと龍太に近づくと、奴は撮った写真を満足そうに眺めている。
「すぐに消してー!!!」
「やだ」
「デジカメ返してよ!!!」
「この写真、俺にくれたら、俺のこと撮らせてやる」
そう言って龍太はデジカメを返してくれた。
慌てて見てみると、龍太の撮った写真にはあたしの顔だけ写っていた。
髪ボサボサで真っ赤な顔で。
目を丸くして口を尖らしてるあたしの顔。
大きな口を開けて何か怒鳴っているあたしの顔。
変な顔じゃん。
何でこんな顔してる写真が欲しいのよ?
だけど、餌が大きすぎる。
「……いいよ。もっといい顔した写真も撮ってくれるなら」
髪を手で梳り、衣装箪笥の鏡で確認してから、龍太の方を見てにっこりする。
「後でメールで送るね」
そして、龍太のことも撮らせてもらう。
「ねえ、龍太。ちゃんとこっち見てよ」
「……」
「そんな怖い顔してないで。ほら、もっと笑って」
「さっさと撮れよ」
あたしは笑ってる龍太の写真が欲しいのに。
「ずるいよ、龍太。あの写真あげたら、撮らせてくれるって言ったじゃん」
「笑顔でなんて言ってねえぞ」
「あたしは龍太の笑った顔がいいの!!」
「カメラに向かって、にやけたアホ面できるか」
「カメラじゃなくて、あたしに笑ってくれたらいいじゃん?」
「意味なく笑えるか。おい、撮らないなら帰るぞ」
仕方なく急かされて不機嫌な龍太を撮った。