表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/71

8月8日(日)

8月8日(日)



昨日は色々あってすっごく疲れた。


そのためか、今朝は、すぐにバイトに行かなくてはならない時間まで、寝坊してしまった。


夏は稼ぎ時なので、アイスクリーム屋は7、8月は無休だ。


バイトは週に1日休みを取れるけど、土日は休めないことになっている。


今日も忙しくなりそうだ。


龍太は今日は何か用事があるみたいで会えないと言っていた。


明日の朝、あたしがバイトに行く前に会う約束をしている。


約束の時間を6時にしよう、って言ったら、アホかと怒られた。


確かに、龍太はゆっくり休める時ってこの数日しかないから、寝坊したいんだろうね。


学校行ってる時も、いつも朝は不機嫌だったしね。


結局8時に家に迎えに来てもらい、バイトの時間までブラブラしようということになった。


今朝、バイトに行くと案の定、皆が色々聞いてきた。


静香さん:「花ちゃんの彼氏、すっごいイケメンじゃない。びっくりしちゃった」


あたし:「え? そうですか?」


イケメン、かなぁ?


顔怖いじゃん。


格好いいとは思うけど。


静香さん:「好みだなー。ウチの彼氏よりいいよー。年下じゃなかったら、アタックしちゃうんだけど」


あたし:「えー?! 静香さん、人の彼氏取らないでください。それに、そんなこと言ったら静香さんの彼氏に悪いですよ」


静香さん:「フフッ。花ちゃんと彼氏ってどっちから告白したの?」


あたし:「あたし、かなぁ?」


付き合ってって言ったのは龍太だけど、先に好きって言ったのはあたしだ。


大田さん:「彼、背が高いのねぇ。何かスポーツやってんの?」


あたし:「はい、剣道やってます」


保君:「へえー、彼氏、剣道部なの。何か高校時代が懐かしいなー」


あたし:「保君は高校では何部だったんですか?」


保君:「あー、僕はサッカー部だった。レギュラーじゃなかったけど」


静香さん:「タモッチーのことはいいから」


保君:「うわっ、それ酷い。分かったよ。花ちゃんの彼氏の話すればいいんだろー? 彼氏はレギュラーなの?」


あたし:「はい。すっごく強いんです」


保君:「そりゃ、恋してりゃね。相手は完璧に見えるだろ」


あたし(ちょっとムッとして):「他の人から見ても強いですよ。インターハイで3位だったんですから」


保君:「負けたー!!!」


大田さん:「それで、昨日のデートは楽しかった?」


あたし:「あ、はい」


龍太の家でしたあんなことやこんなことを思い出し、思わず赤面してしまう。


そんなあたしを見て静香さんが笑う。


「花ちゃん、真っ赤になっちゃって。可愛いー!!!」


あーもう、恥ずかしい。


「いいなー、いいなー。僕も彼女が欲しい!!!」


保君はまた不貞腐れている。


今日も一日中忙しくて、家に帰ったらぐったりだった。




お父さんとお母さんと3人で夕食を食べている時、お母さんが言い出した。


「ねえ、花。お母さん達、お盆休みは田舎に行く予定だけど、あなたはどうするの?」


「あたし、バイト休めないし。留守番してるよ」


「でも、女の子一人で心配だし。バイト、2日ぐらい休めないの?」


「今、お店一番忙しい時だから、週末に休んだら迷惑だよ。あたし、もうすぐ16だし、一人でも大丈夫だよ」


「何かあったら嫌だし。どうする、幸太郎さん?」


「そうだなぁ。お隣の佐野さんちも帰省するって言ってたからなぁ」


「上原さんは今年も沖縄?」


「うん」


上原さんとは麻子のことだ。


麻子は毎年8月に入るとお父さんの田舎の石垣島に里帰りする。


中2の夏には、あたしも一緒に連れて行ってもらった。


真っ青な海でシュノーケリングしたり、天文台で星を観測したり、麻子の従兄弟達と一緒に海辺で花火をしたり、お祭りに行ったり、とてもとても楽しい夏休みだった。


「黒澤君は? やっぱり田舎に行くのかしら?」


えっ?


何でそこで龍太の名前が出てくるのよ?


「…行かないと思う。16日から合宿だって言ってたし」


「だったら、14日と15日の晩、黒澤君に泊まりにきてもらえばいいじゃない?」


何?!


今、何て言ったの、お母さん?!!!


そんなことできるかー!!!!!!


その方が危険じゃないのよ。


お父さんだってギョッとしているよ。


「……いや、和子。それはちょっとまずいんじゃ」


「黒澤君だったら、私も安心して花を任せられるし。親から頼めば何もしないと思うわよ。彼、そういうとこ、真面目そうだし」


「龍太だって用事あるだろうし、迷惑だよ」


「そんなの聞いてみなけりゃ分かんないじゃない?」


「やだー!!! そんなこと絶対しないでよ」


「あら。そうしなかったら、あなたを無理やり連れて行くか、お父さんだけ行ってもらうことになるわ」


そんなこと言ったって、お母さんの田舎でしょう?


香代も迎えに行くんでしょう?


お父さんも何で黙ってんの?!!!


うちのお母さんは言い出したら聞かない頑固者。


絶対お父さんは尻に敷かれてるよ。


ああ、もう嫌だ、こんな親。


結局、携帯電話を取り上げられてしまった。


「もう、分かった。分かったから。龍太の電話番号教えるから携帯返してよ」


「だから、最初から素直に教えてくれればいいのに」


お母さんが電話をかけに部屋を出て行った後、ガックリとソファに腰を下ろす。


お父さんは居心地悪そうに、ウロウロしていたが、結局リビングを出て行ってしまった。


少しするとお母さんが戻ってきて、あたしは顔を上げた。


「OKですって。向こうも未成年だから、お母さんに代わってもらって、事情を説明して承諾いただいたわよ」


ああ、もう嫌だ。


もし迷惑だったとしても、うちのお母さんから頼まれたら拒否できる訳ないじゃないの。


明日、龍太に会うのが憂鬱だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ