8月7日(土)(後)
思い切り(?)R15シーンです。苦手な方はご注意ください。
8月7日(土)(後)
「ありがとう。さっぱりした」
窓にカーテンが引かれて、部屋の中は薄暗くなっている。
ドアの前に立ったままのあたし。
「花」
「何?」
「こっちに来い」
ベッドに座っている龍太に近づくと、手を取って強く引き寄せられた。
龍太の上に倒れこむ。
龍太はあたしを抱き締めたまま横に倒れ、あたしをベッドの上に仰向けに寝かせた。
龍太の手があたしの髪を撫でる。
龍太の顔が近づいてくる。
目を閉じると、龍太の唇があたしの唇に重なった。
すっごく久し振りのキス。
ずっと龍太のキスが欲しかった。
龍太の首に腕を巻きつけると、首をもたげてあたしから唇を強く押し付けた。
龍太は唇と舌を使って、あたしの唇を優しく愛撫する。
我慢ができなくなって、熱い吐息を漏らすと龍太の舌があたしの口に入ってきた。
舌と舌が触れ合うと、体にビクッと電流が走る。
お腹の奥がキュウンとして背筋がザワザワする。
最初は優しかったキスは段々激しくなり、あたし達は夢中で舌を絡ませ合った。
龍太の大きな手があたしの肩を掴み、背中を伝い、わき腹を撫でる。
頭がクラクラして、息が詰まる。
もう、我慢できない。
「龍太!!!」
龍太の胸を押して、起き上がる。
あたしを離した龍太が顔を覗き込む。
「……どうした?」
「苦しい」
「ああ」
「苦しくて死にそう」
何故か胸が締め付けられて、涙が滲んだ。
「今、楽にしてやる」
チュッと音を立ててあたしの唇にキスすると、龍太はもう一度、あたしをベッドに横たわらせた。
そして、指先であたしの喉を撫でる。
背中がゾクゾクして、掠れた声で龍太に懇願した。
「お願い。早く」
「分かった」
龍太の手があたしのTシャツの裾から入ってきた。
暖かくて気持ちがいいと思っていると、龍太の手が背中に回り、ブラのホックが外された。
Tシャツを捲り上げられ、体が硬直する。
龍太に見られるのが、ものすごく恥ずかしい。
真っ赤になった顔を両手で隠した。
その指に、龍太の熱い息と唇を感じて手が震えた。
自然と呼吸が荒くなってしまう。
恥ずかしくて死にそうだ。
頭がボーっとして耳鳴りがする。
心臓がバクバクしている。
龍太の手は優しくあたしの肌の上を滑る。
また、一定の箇所に留まってあたしを焦らす。
もっと、もっと触れて欲しい。
とっても恥ずかしいけど、すっごく気持ちがいい。
初めてなのに、こんなに気持ちよくって、やらしい女って思われないかしら?
口を硬く閉じていても、喘ぐ様な声が抑えられない。
堪らなくなって、呻き声を出して、あたしは龍太の頭を抱き締めた。
龍太の片手がスカートの裾から入り込み、あたしの太腿に触れるのを感じた。
急に正気に戻り、体がガチガチになった。
え、えっ、もう?!!
ちょっ、ちょっと待って欲しい。
そんなにどんどん進めないで。
龍太があたしの体を離し、急に体を起こしたので、あたしは目を開いた。
とうとう、その時が来てしまった。
怖い。
怖いよ。
どうしよう?
逃げ出したい。
泣きそう。
唇が震える。
早過ぎる展開について行けない。
あたしの足元に座った龍太は、フレアのついたジーンズ生地のスカートをあたしのお腹の上に捲り上げた。
「ちょ、ちょっと待って!!!」
震えて、情けない声が出てしまった。
「……どうした?」
「えっと、あの。まだ心の準備が」
泣きそうなあたしの顔を見て、龍太がフッと笑う。
「心配すんな。今日は最後までしねえから」
「え?」
「気持ち良くしてやる」
「ええっ?!」
「痛いことはしねえよ。ほら、腰浮かせ」
「あっ、や、駄目。止めて!!!」
泣き声を上げ、脱がせようとした龍太の手を慌てて両手で押さえた。
龍太はあたしの体から手を外し、スカートを元に戻すと、あたしの隣に仰向けにドサッと寝っ転がった。
気になってチラッと見ると、龍太はあたしの方を見ないで、天井を見つめている。
呆れちゃったんだろうか?
あたしって駄目だよね。
龍太に抱かれたいって思っていたのに。
実際にそういう状況になると、頭がついて行けなくて。
ここまできて、怖くなって止めて欲しいなんて。
龍太は動かないし、何も言わない。
その長い沈黙に不安になった。
嫌われちゃったの?
やっぱり、経験がない女は嫌?
龍太の方を向いて、震える声で呼ぶ。
「……龍太?」
「ん?」
龍太の視線があたしの方に下りてきた。
「龍太!」
泣き出してしまった。
あたし、本当にみっともない。
赤ちゃんみたいだ。
龍太は体をあたしの方に向けると、頭を撫でてくれた。
「……泣くな」
大きな手であたしの頬を包むと、親指で涙を拭われた。
「………ふぇ……」
「ごめん。ちっと急き過ぎた」
「……」
「花が嫌なこと、もうしねえから」
そっと抱き締められた。
「………うぅ……」
安心して更に涙が零れた。
もう、龍太のこと怖くない。
「しょうがねえな、延長戦か」
「……」
「だけど、いつかは攻め落とすからな。覚悟しとけよ」
からかうような声で言われた。
「……うん」
龍太はあたしの顎に指をかけて顔を上げさせ、優しく額と瞼に口付けた。
胸の中がホコホコ暖かくなって落ち着く。
龍太の側にずっとこうしていたいな。
「…龍太?」
「ん?」
「インターハイ、どうだったの?」
「男子団体で準優勝、個人で3位」
「うわっ、すっごいじゃん!!! おめでとう」
もうちょっと嬉しそうな顔したらいいのに。
一番になれなかったから悔しいのかな?
「…サンキュ」
「観たかったな。応援しに行きたかった」
「来年は絶対来いよ」
へえ、来年も出場できる自信あるんだ。
「うん」
龍太は家まで送ってくれた。
歩きながら、さっき聞きたかったことを思い出す。
「ねえ、龍太ってギター弾けるの?」
「……ん? ああ、部屋にあったあれか」
「うん。あれってエレキギターだよね?」
「ベース」
「ふーん」
「弟がバンドやってて、時々ベースの奴が都合つかない時に駆り出される」
あれ?
って言うことは、弟と仲いいのかな?
「ライブとか?」
「ああ」
「見たいなー」
「嫌だ」
「どうして?」
「……ハズいから」
「何で恥ずかしいのよ。あたしにだってサックスやらせたじゃん」
「下手だし。花が見てたら絶対間違える」
こいつ、結構負けず嫌い?
剣道の試合は強いから観に行ってもいいけど、ライブは下手だから駄目なのね。
「龍太の意地悪」
こりゃ、龍太の弟と仲良くならないと駄目だな。