5月13日(木)
5月13日(木)
放課後、また職員室に呼ばれたあたしは、とんでもないものを見てしまった。
あたしのクラスから職員室に行くには、2年の教室の前を通らなければならない。
2年B組の教室は扉が半分ほど開いていた。
前を通り過ぎる時に聞こえた女の声に思わず立ち止まってしまった。
「ねえってば、黒澤君!!」
「うるせえな。何だよ?」
「私と付き合ってるなら、ちゃんと彼女にするみたいにしてよ」
「…何して欲しいんだ?」
「そ、そりゃ、一緒に帰ったりとか、キス…とか…」
ドンッという音と共に、奴に壁に押し付けられる女が見えた。
「きゃ!!!」
うわ、ひどっ。
「んっ…」
そして、糞馬鹿男は彼女に噛み付く様な乱暴なキスをした。
彼女は胸を触り出した奴を押しのけようと必死になっている。
びっくり仰天したあたしは、そこを逃げ出そうとしたんだけど、体が動かない。
泣き出した彼女が足元に崩れ落ちるのを助けようともせずに、奴は言った。
「おまえが強請ったんだろ?腰抜かしてんじゃねえよ」
そして、奴はあたしが立っている扉に向かって来た。
やばっ!!!
覗いていた扉から飛びのいて知らん振りしようとしたが、既に遅く、見つかってしまった。
後ろ手に扉をピシャンと閉めた奴は、あたしのことをじろじろ見ている。
「覗きが趣味だったのかよ、やらしい奴」
「ちっ、ちがっ!!糞馬鹿龍太、あんた最低だよ」
「んだと?」
「彼女に優しくできない男なんて最低!!!」
「おまえに関係ねえだろ。スケベ苺女」
「何よ、その苺って?」
「この前、苺柄のパンツ見せてたじゃん」
ニヤッと笑いやがった。
頭が沸騰した。
「あ、あれは見せた訳じゃなくて転んだんじゃん!!!糞馬鹿龍太なんかくたばっちまえー!!!!!!!」
通りすがりに奴の横腹に一発食らわして、職員室まで走った。
やっぱり、こいつは最悪最低な男だった。
苺柄のショーツ、子供っぽいから嫌だったのに。
お母さんがバーゲンで安かったからって、妹とあたしにそれぞれ6つも買ってきたから、仕方なく履いていたのに。