6月21日(月)
6月21日(月)
朝から学校では、昨日の剣道部の活躍の話で持ちきりだった。
龍太と一緒に校門を入ると、周りの生徒達が遠巻きながら憧れの眼差しで見ている。
得意な気持ちと照れくさい気持ちが半々。
付き合ってるってだけで、別にあたしは何もしてないんだけどさ。
龍太は全然いつもと同じ風なんだけど。
教室に入ると、既に来ていた麻子が側に来た。
「花、あんたの彼氏、我がS高のヒーローじゃない!」
「そうみたいだね」
「応援に行ったの?」
「うん」
「だけどさぁ、最初はこんなに長続きすると思わなかったよね」
「え?」
「もう付き合って1ヵ月以上経つんでしょ」
「うん」
「彼、本気だったりして」
「…それは、ないと思う」
「どうして?花には優しいんでしょ、あの黒澤先輩が」
「そうだけど。あっ、先生来たよ」
本気な訳ない。
龍太の気持ちは分からない。
だけど、龍太の気持ちがあたしにないことは分かる。
それは、とても辛いことだけど、ルールを守らなかったあたしが悪いんだ。
ゲームのルールは、恋に落ちては駄目だということだったのに。
麻子に言われなくたって、自分が傷つくって分かっていたのに。
それでも、龍太を好きだという気持ちを抑えられなかった。
今は自分の気持ちを龍太に伝えないようにするのに精一杯で。
いつか、あたしは言ってしまうのだろうか?
龍太に、好きだと。
でも、それは、気持ちを抑えることが、別れることよりも辛くなった時だ。
今はまだ、龍太の側にいたい。
お昼休み、学食で龍太に聞いてみる。
「ねえ、週末って一日中剣道やってるの?」
「…いや」
「土曜日は何時まで練習があるの?」
「4時頃」
「あのさ、うちの親がね。龍太に会いたいって」
「……」
「で、もしよかったら、今度の土曜日の夜にご飯食べに来ないかって」
「そういうの苦手」
「うん、そうだよね」
そりゃ、本気でもない彼女の親になんて会いたくないよね。
あたしだって嫌だもん。
だけど、うちの親は昼間いない分、香代とあたしのこと心配してるんだと思うんだ。
悪い友達と付き合うじゃないかって。
麻子もうちの親に何度も会ってるし。
香代の友達だって、週末に家に何度も来ているから、あたしも知っているし。
今まで、彼氏なんていたことのないあたしだから。
「…何時に行けばいいんだ?」
「えっ?来てくれるの?!」
「1回きりだぞ」
「うん、ありがとう。うちの親、心配性だから」
「俺見たらもっと心配すんじゃね?」
「そうだね。あんまり不機嫌な顔しないでよ。怖いんだからあんたの怒った顔」
「ふん」
優しい龍太。
今夜、家で話したら大騒ぎになるんだろうな。