5月11日(火)
5月11日(火)
高校に入学して早一ヶ月。
学級委員なんかになってしまった。
それも何故か委員長だ。
学級委員になっての初仕事がGW明けの体育祭で、一応体育委員は決まっていたんだけど仕事は色々あり、先週まで滅茶苦茶忙しかった。
放課後、職員室に呼び出され、プリントのコピーを取ってるあたしは結構お人好しだと思う。
副委員長の山田はバスケ部で部活があるので放課後の雑用はあたしに回ってくる。
はぁー、あと12枚か。
こんなことしてる暇ないのにさ。
やっと取り終わった人数分のプリントを抱え、教室に戻りながら腕時計で時間を確かめる。
やばい、もう5時半過ぎてる!!!
何で今時腕時計なんかしてるのってよく聞かれるんだけど、これは中学に入学した時にお祖父ちゃんとお祖母ちゃんからもらったお気に入り。
丸くて小さいシルバーの腕時計で文字盤は薄いピンクでとっても可愛いんだ。
家は両親が共働きなため、親がいない月、火、木はあたしが夕食当番だ。
妹の香代はまだ小学生。
手伝ってはくれるけど、買い物から料理まで一人では任せられない。
急がなきゃ!!!
脇に抱えたパタパタするプリントを片手で押さえながら廊下を全速力で走る。
ドンッ!!!!!
角を曲がろうとした時、あたしは前から来た大男に力いっぱいぶつかった。
「きゃあ!!!」
バサッと飛び散るプリントの束。
両手が塞がっていたあたしは、見事に後ろにひっくり返り尻餅をついた挙句、床に頭もぶつけた。
ああ、折角コピーしたプリントが!!!
「痛え」
あの勢いでぶつかっても、ビクともしなかった男はそのまま立ち去ろうとする。
電信柱かこいつは。
「ちょっと、あんた。これ拾うの手伝ってよ」
慌てて散らばったプリントを拾い集めながらそう言うと、そいつは立ち止まって振り向いた。
「そっちが勝手にぶつかってきたんだろ」
冷ややかな目で見下ろす男を睨み付ける。
何よ、こいつ。
そりゃそうだけどさ。
女の子が倒れてんだから、助けるでしょ、普通。
「ちょっと、待ちなさいよ!!!」
背を向けて歩き始めたそいつを急いで追いかけようと立ち上がったあたしは、拾ったばかりの数枚のプリントをまた落としてしまう。
更に落ちているプリントを踏みつけてしまった。
あーもう、最悪!!!!!
でも、そいつはそのまま振り返りもせずに行ってしまった。
「最低!!糞馬鹿野郎ッ!!!電信柱男-!!!!!」