ep.04 シャールの魔法とは?
マリアナ神皇国王都 ケスラー伯爵領 辺境伯都市ラウル
*)トンだハプニング!
「うふふ……私を無視するルイさまが悪いのですよ?」
「さぁ~みんな、ルイさまを見つけたら爆弾の投下よ? よろしくね~♡!!」
「マジック……鳩の糞!」
「クク~クク~……、」x18
どうも俺には罰が降って来ているようだ。なして鳩の糞が毎日のように俺のグリグリを目がけて落ちてくるのだ?
シャールかシャルロットとかいうお姫さまとシルフィを忘れていた。農民が煩くて俺も忙しくてついつい忘れてしまっている。
「ルイさまは……きっとお忘れです。良かったのですか?」
「何をだい、リリー。」
「鳩はお城で飛んでおりますよ、きっとシャールがお怒りになってあるのでしょう?」
わ~ぉ、伯爵様の娘を呼び捨て!!
「あ、あ~忘れていたね。アレも機嫌が悪いだろうか。」
「アレこそを”放置すべきですわ。」
「納得した。リリー……お前?」
「いいえ、タダのメイドでしたわ。」
はは~ん、リリーも俺を信用してくれたのだろうか、言葉使いが優しく丁寧になってきた。妃に支えるメイドだったら……打ち首だろうが、妃やお姫さまに仕えるメイドは優秀なはずだ。さすがにリリーがお姫様だったって落ちはよしてくれ。
「ルイさま、何か失礼なお顔をされてはありませんか?」
「いやいや、シャールかシャルロットに謁見してみるか。」
「そうなさいませ、ご主人様♡!」
俺は右手を上げて人差し指をかざす。指の先に光る魔法陣が大きくなって、
「シルフィ……召喚!」
……あ~ぁ~……あ~ぁ~……魔法の言葉が頭に響く。……チャポン……。
「ヒットしました、池の中です。」
「ぅわっ……俺は殺されそうな予感しか浮かばない。」
「シルフィさまが池に浮かんできました。次回から頑張りましょうね? ご主人様!」
リリーはシルフィの災難にいい気味だわ! と笑いを押し殺している。蓮根の葉を胸に当てた姿のシルフィがやってきた。」
ここは貧しい村だから蓮の葉とは言わない、あくまでもレンコンなんだぞ?
「ルイさま、酷すぎますわ!」
「服か?」
「はい、ご主人様のお好みに合わせてきましたが、これでは歩く事も出来ません。」
「良かったな、最悪は免れているだろう?」
「?……まぁ、狼とサギのお話しではありませんわ……臭いから直ぐに戻して……いいえ、お風呂に誘って下さいませ。」
「リリー頼む。」
「アハハ……すみません。イヤですわ、クチャイ!」
「フギャ! シャー!!」
「猫か?」
「ニャン。……ニャンニャンしよう?」
俺が、シルフィを村の銭湯へと連れて行くしかなかった。リリーは笑い転げてイヤダーと言うだけ。根性も寝そべっているらしい。根性が座る?……根性が据わるだよ~。だがリリーが寝転ぶ意味は? 梃子でも動かない嫌だ、と自己表現に努めているのだろうか。ようは我が儘娘……? 駄々っ子なお姫様なのか?
「リリー着替えておいで。」
「はい、」
「シルフィは銭湯の湯船に沈めてやるが、……服は何処に置いている。」
「館のお部屋にありますクローゼットです。」
「分かった、後で取り出してやるよ。」
俺はシルフィを浴室に入れて頭から何度も何度お湯をかけてやった。
「イヤ~ン♡!!」
「変態。」
「もっと~♡!!」
リリーみたく綺麗に洗ってやれば……全身は綺麗になるも? 手に負えない程に乱れてしまった。
「ホホホ~ルイさま、慣れた手つきで。それでは女子は喜ぶばかりじゃよ。」
「バァさん、居たのか?」
「出て行ったらお楽しみを邪魔してしまうしの、老婆心じゃよ。」
俺の右脚に抱きついて縋り付いて離さないシルフィの頭を必死で押えている。可愛いと言えば可愛いだろうが、一度でも手を付けたら未来は嫁さん……地獄の未来しか選択肢はない。
「村の様子はどうだい、少しは芽がありそうか?」
「産婆の経験もあるて、任せてくだされ。」
「多くの子供が生まれたら嬉しいよ。」
「先ずは……あんたが先だろうな。ほれ、そこの女……もう妊娠OKの顔をしているぞ?」
「ウギャ~ウギャ~ウギャ~ウギャ~離せ、キモイ、嫌だ離せ~……転送~~~~!」
「あれ~……♡!!」
「ふ~危なかったぜ。これならば元の部屋へ飛んでいっただろう。」
「ホェ~?」
「バァさん、内緒だぞ?」
「あ、そうだね。こりゃ驚いたわい。」
俺はうっかりとこのバァさんに魔法を見せてしまった。遅い早いの違いはあれど、時期に大盤振る舞いは決定事項なのは変わらない。このバァさんは四人目だった?
*)領地の見学と鳩の糞……?
シャール様の魔法は鳩のテイムと自分の姿を変えて見せる幻影魔法だった。特に幻影はシャールさまの姿がありのままに見えていたから、気がつくのはだいぶん遅れたのは事実。俺と他人が同じ人物を見ても変わって見えていただなんて誰が気づけるものか。
「うふふ……私を無視してシルフィを召喚されてしまいましたわ。それもこれもどれも全部ルイさまが悪いのですよ?」
「さぁ~みんな、ルイさまを見つけたら爆弾の投下よ? よろしくね~♡!!」
「マジック……鳩の糞!」
「クク~……クク~……、」x18
どうも俺には罰が降って来ているようだ。なして鳩の糞が毎日のように俺のグリグリを目がけて落ちてくるのだ?
「キャー!」
「んまぁ~シルフィじゃありませんか。」
「あ、シャールさま。お見苦しい処をお見せしました。お目汚しです、すみません。」
「シルフィ……とても綺麗よ?♡!!」
「あ、これはルイさまに全身を洗って頂き……あれ~~~…………。」
「まぁ足の裏までも、何処で何をされたらこんなに綺麗になるのですか!」
「はい、村にある銭湯に入れられて磨かれて入れられて……あぁ~ん♡!!」
「入れられて………………?」
シャールとしては聞くに堪えぬシルフィの声に……メラメラ~と炎が点じてしまった。領主の城と言えばいいのか、大きな館だと言えばいいのか、地方貴族でも伯爵様の家だ、きっと立派な風呂は備わっているはずよね?
「ここからここまでのですね、大っきい湯船がありましてお湯も沢山……あ~初めての経験でしたわ~ウットリ♡!!」
「んまぁ……大っきな銭湯?……湯船ですか?」
「はい。」
このマリアナ大陸に銭湯という概念と、庶民の風呂文化なんていうものは無い。粗忽者の俺は禁断の園を開いてしまった……らしい、大変だっ!
「シルフィ、私をその村まで連れて行きなさい。」
「はい、喜んで……? 場所が分かりません。」
「私は見ていますからね、館の北東に在る村ですわね。行きますよ。」
「す、直ぐに支度いたします。」
「私は給仕係に出かけると言ってきます。」
支度と言ってもシルフィが服を着てシャール様の着替えとシルフィの着替えを用意する程度か。お忍びで行くとなれば護衛は付けられない、いや寧ろ、護衛に女の子とバレたらいけない。
その心は?……お風呂に入れば隠しようがない!
「シャール様、女の子の服はお持ちではない?」
「あ、……私は息子に仕立てられていますね、男の子の服しかありませんわ?」
「うっ……大っきいですよ?」
「小さいと言いたいのかしら?」
「いえ、着てみてください。」
「はぁ……胸が……すっすっすーするわ。」
「脚も?」
「はい、開放感は……すっすっすーよ♡!!」
「でももうすぐ夕方になります、今からでは遅すぎる帰宅となりましょう。」
「マジック転移して行くから、付いて来なさい。」
「はい、喜んで~♡」
このシャールもまた魔法使いだった。シルフィはルイの部下でもあり魔法は秘匿するべし、との教育を俺から受けていると言っていた。真っ赤な嘘である、このシルフィお姉ちゃんは存外に出鱈目な知恵と性格をしているのか?
シルフィお姉ちゃんは不躾であり、無礼者の以ての外であるが今は猫被りだ。一皮むければ……大物になる、そういう未来が来るのだと奴隷商のソフィア・ルージュは見立てている。byリリーでした。
奴隷商のソフィア・ルージュは見立ては全く当てはずれである。
俺は村の土を見て回っている。土地の生産性は肥料が第一でも土の成分が悪いと作物のできは悪く、あまり利潤は生まない。
「水は森の小川が近いだけあって充分に引けそうだよ。」
「はい、ようございました。肥料の元は山の表土を削れば充分かとも思います。」
「そう……なんだがな、それはこれでも大変なんだぞ。」
「女どもに集めさせて畑地に撒けばよろしいのでは?」
「そうなんだよね、土に混じって虫も付いてくるからさ、そいつらを退治するのがメッチャ面倒臭い。」
「腐葉土をですね、森の木々を用いて焼き払って殺せばいいのですがね、領主さまが許してくれるかどうか。」
「あれは馬鹿だから却下するさ。先に大っきな虫退治をした方が建設的になるね。どうだい?……リリー?」
「嫌ですよ。人殺しは沢山見て参りました、でも当事者になるのは勘弁したいです。でもですよ?」
「あぁ……領主の死を待つ前に、準備だけは終えていたいものだね。」
「はい、準備がとても重厚長大ですから一年は掛かります。」
これから開墾したい土地に山から肥沃な表土を運んできて撒いておく。更に森から切り出した木材の枝葉を用いて焼き払い、腐葉土の消毒と灰の成分であるカリウムを補充したい。
「警告、警告。魔法の襲撃あり。警告、警告。魔法の襲撃あり。」
「なんだ? リリー襲撃がある、気をつけろ。」
「は~い~~??」
「何処だ!」
「ここから真っ直ぐ行って二十分の地点です。」
「またそれかよ。」
「村でしょうか、急いで戻られたがよろしいのでは?」
「帰るか……転移・俺の家まで!」
……あ~ぁ~……あ~ぁ~……魔法の言葉が頭に響く。……チャポン……。
「うわ~風呂かよ。」
「はい、シルフィお姉ちゃんの二の舞いです! クシャン!」
「悪いな~リリーだけが水桶でよ。」
「シルフィお姉ちゃんの気持ちが分かります。早くお風呂に入りたいです。」
「出て行くよ、てやんで~!」
「はい!」
「警告、警告。魔法の襲撃あり。警告、警告。魔法の襲撃あり。」
「なんだ? リリー襲撃がある、気をつけろ。」
「は~い~~??」
「何処だ!」
「ここから真っ直ぐ……頭上です!」
「うわ~~、」x2
「キャ!」x2
……ザブーン!……x2
と、天上付近からシャール様とシルフィの二人が突然に現れて湯船に落ちて来た。
「この女の子も大した事無い?……いやいや待て待てシャール様は魔法使いなのか?」
「ルイさまご主人様シャール様をご案内いたしました。」
「何処から来た。」
「お城……?」
「はい、ルイさま、私を……その引きあげて……いいえ、出て行って頂けましたら嬉しいのですが。」
「そうだね、三人でゆっくりするといい。俺は飯の用意をしておくよ。」
「まぁ……ご馳走になります。」
「ありがとうございます。」x2
「お前らな~……集る気満々やな。」
「はい。」x3
「いい香り~何をお湯に混ぜてあるのですか?」
「これはご主人様の趣味らしいです。お花を摘んできて乾燥させたとしか知りません。」
「うちにも欲しいわ……。お母様にも堪能させたい……。」
「今度お花の名前を訊いておきますね。」
「はい。頼みましたよ。」
「お花を摘んできて……?」
「……。」
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「リリーとシルフィ~最近太ってないか?」
「そうですわね、仕立てた服が小さくなりましたわ。」
「シルフィお姉ちゃん、メニューを減らそうね。」
「違うぞリリー。メニューは増やすものだぞ。」
「あ、ホントそうですわ。」
「シルフィお姉ちゃん……メイドのお仕事メニューを増やして差し上げましてよ?」
「いや~肉じゃがを減らして~お願いします。」
「ですってご主人様!」
「食費が減って嬉しいぞ。」
「んも~私で遊ばないで下さ~い。」