ep.02 馬に乗ったハリー・ケスラー伯爵
マリアナ神皇国王都 衛星都市モンマルト
*)馬に乗ったハリー・ケスラー辺境伯
俺はルイ、奴隷だ。この子はリリー、同じく奴隷だ。
「おい、こんなエルフの逸材って嘘だろう?」
「口が悪いだけよ、直ぐに従順になるわ。」
「要らね~帰る。」
「受け取った代金は返しませんよ。」
「いいよ、助けてくれた駄賃よ。またな。」
この奴隷商人のソフィア・ルージュの目は節穴らしい。俺を雑なゲス扱いにしたこと、リリーも簡単に、それも夜とぎ用の玩具として売った事だ。それにクズ貴族に売りつけるのだから……あ~クズ貴族にはクズを売りつけるのか。
「あぁ、あんた。俺の金額って本当に十枚だったのか?」
「そうだね、道ばたで拾った子犬が高いさ。」
「なるほどお前は節穴ってか。いいよな、このご時世で人を奪って売りつける。この国も先は亡いね。」
亡国には二つの意味がある。過去に滅んだ国、それと国を滅ぼさんとする事だ。俺が言う意味は後者だな、……あ~タコが言うのよね茹で蛸が~。
「なんだって? よくも侮辱してくれたわね。お前たち、殺しておやり。」
「湯気出ているぞ……ソード・テイクアップ!」
「あ?」x5
「剣がない!」x5
「……何をしている、飛びかかればいいだろう、行け!」
「ツゥフォール!」
「ドテッ。」x5
「アハハ……ブス女! やっぱあんたはクズだったよ。私はこの男を気に入った。出て行くからね。」
「えぇ~忌々しい、外から連れておいで!」
「はい。」
「転べ・ツゥフォール!」
「ドテッ。」x5
「キャー! ルイさま、Hです。私だけで我慢されて下さい。」
「おいリリー、女の子をお淑やかにする魔法の呪文だよ。誰が好き好んで好く見たいと思わないぞ。」
「好好好……好々爺イヤ!」
「あんた……何者よ。」
「タダの……タダの? リリー俺はなんだ?」
「魔法使いさん……だと思う。」
「だそうだ。俺の売り上げだけは頂いて帰るわ。またな~。」
「ヌヌヌヌムムムム……。」
「待って下さ~い、ルイさま、ドテッ、ウギャ!……キャッ!」
「ほら言っただろう? 動いたらパンツが丸見えって……䆤いていない?」
「リリーを脱がせたままですよ!……もう。」
䆤が転じて穿と変化したのか? 穴に牙と書く意味がようやく理解出来た。穿は誤字だな。
「シルフィだったか、動かないがいいよ。動いたらパンツが見えてしまうよ。」
「待って下さ~い、ご主人さま~ドテッ、ウギャ!……キャッ!」
「……䆤いている?」
「いや~ん、お嫁に行けない~。」
「だったら好きな処に行けよ、お前は自由だからね。」
「はい♡!!」
「明日はこのモンマルトを見限って王都へ発つ。」
「はい、ルイさま!」
「私も付いて行きます。」
「シルフィ……お前は却下だ、国へ帰れ。」
「捕まってまた奴隷落ちになります。」
これぞ「一粒で二度美味しい」というのだろうか。美人奴隷は何度でも同じ金額で売買されても値が下がらない。
「これから旅支度を調えて宿屋へ行くよ。」
「はい、ルイさま!」
「ヌヌヌヌムムムム……。」と茹で蛸が俺を睨んでいる。この奴隷商人のソフィア・ルージュも明日になれば貧乏人へと格下げに? させておいた。夜中に奪った金貨は二千枚も在ったぞ。
俺は奴隷落ちしたから気分が悪い、衛星都市モンマルトを見限って王都へと向かった。分岐点に差し掛かるも方向なんて気にしない。
「魔力・サーチ……ラウル……。」
……あ~ぁ~……あ~ぁ~……魔法の言葉が頭に響く。……チャポン……。ヒットしました、ここから真っ直ぐ行って二十分の地点です。
当然だろうか、俺らは奴隷商人のソフィア・ルージュから刺客を送られるも、俺らの行き先とは別な王都へと追いかけていた。だから知らない。
僅か五日で書き上げたこの物語は短編集だ、道中の事は割愛・省略・端折るのだな。
ケスラー伯爵領 辺境伯都市ラウル
*)馬に乗ったハリー・ケスラー伯爵
途中で白馬の王子様と遭遇した。凜々しく見えるお姿に虫酸が走る? 違うぞ、触手が動く・触手が伸びる……そうだった食指が動くと言う。
その白馬に跨がる大人と子供の二人なんだが、一人はハリー・ケスラー伯爵と言う気に食わない男だ、俺はこの男を見て虫酸が走る。子供は男の子で可愛い♡!!だ!触手が動く。
貴族が乗る馬車が一台に騎兵隊が百程度、武将や歩兵らが五百人ほどと多くの荷馬車が~? 行列を作り俺の目の前を歩いている。モンマルトから出て行った軍隊よりも大きくて格好いい。
ハリー・ケスラー伯爵へと俺の触手が伸びる。俗に言えば「国盗り」だな。
「ルイさま?」
「……だ、決めた。」
「はい、ルイさま!」
「ご主人、何を?」
「お前、売られろ。それで俺を手引きしろ。」
「いやです、せっかくご主人に巡り会えたのですから。」
「だったら俺を売ってくる。」
「はい~?」
「ダメです~ルイさま!」
「なに、チョイと喧嘩するだけだか見ていろ。」
「リリー逃げるよ。」
「だって見ていろって言われたよ?」
「直ぐに済む。」
「旦那、余興に俺と戦いませんか? 負けたらエルフの逸材を差し出しますが、勝ったら俺を雇って下さい。」
「よかろう……お前、行け!」
「はい。」
「デカ!」
確かに二分も掛からずにボコられて伸びてしまって、俺に喧嘩の才能はからっきしなんだと思い知る。俺は迷惑料にシルフィを差し出した。
「すみません、明日はこの子を賭けてまたお願いします。」
「今からでもいいが、……無理か?」
「はい、明日は勝ちますんでエルフの逸材は戻して頂きますし、雇用もお願いします。」
「ガハハ……好かろう。来いエルフ。」
「ごら~裏切るのか~バカ! カス! 死ね!」
「バイバ~イ、元気でな~……。」
「お姉ちゃんは……売られたの?」
「まぁな、厄介払い、とも言う。行くよ。リリーが居るだけで十分さ。」
「はい♡!!」
ここのキャンプ地に一緒になって留まる。食後に俺は荷物を見て回った。上級兵の寝具と武具に食料が運ばれていた。暗くなる前にまた軍隊が追いついて来た、はて……なんだ?
「なぁおい、あの軍隊はなんだ?」
「奴隷だね、戦利品を担がせているが、もう限界だろうな。」
「領地は遠いんですかね。」
「明後日……着けるかどうかだが、あの様子だと無理だろう。」
「今日のキャンプが早かったのは、待っていたからですかい?」
「だね、夜盗に襲われて奪われる事だって珍しくはないからな。」
「なるほど、奪う者から奪ってもいいんですよね?」
「そうだが、これほどの軍隊だ、襲えば間違いなく全滅させられて終わるさ、カッカカカ……。」
「教えてくれてありがとうな。」
「いいって事よ。」
「お礼だ、バレないように飲んでくれ。」
「お、いいのか?」
ドン……ドン……ドン……ドン……ドン……ドン……酒樽を六個も出してやった。ま、買収資金の代わりだ。
「明日は応援を頼んだぞ。」
俺はこの軍隊に付いて行き明日の夜にゴソッと荷物とお姫様を頂くと決めた。王子の格好をさせられていても、アレは女の子だと直ぐに分かった。序でにいけ好かないジジイは絞めておきたい。
今日も隊列の後方にドン……ドン……ドン……ドン……ドン……ドン……酒樽を六個も出してやった。少しアルコール分を強くしておいた酒樽だな、あのデカ物は一杯を飲んだようだぞ? と言う事はデカ物に情報を流す部下がいるものと推測される。
今日も夕食前に前座的な余興で俺とデカ物と闘いを始める。俺に勝てと涙を流すリリーとシルフィが応援してくれる。この二人だけの応援とはならない、下級の兵士らは俺への声援で賑わっている。
「お前……どうした?」
「何でも無い、二日酔いだ。いいから掛かってこい。」
下級の兵士から酒を横取りするのが悪い、コテンコテンに痛めつけてやりたい。今回も木刀を持って立ち向かうと?
「行くぞ~。」
「うわ~……お~危ない危ない。」
「どうした~屁っ放り腰か~?」x200
「煩い、今からだぞ。」
もう完全に飲み過ぎ、一杯だけではないのか? これでは軍隊長なんて無理な性格で怠慢だな。こいつはクビにしたい男のナンバーワン!
俺はこの男に二日酔いの治療を施してやった。案の定に大きく目を回して倒れかかるから、デカ物のよろめきに合わせて木刀を振り抜いた。
「ゲボ……!」
「ワオ~……、」x200
「凄いぞ兄ちゃん、勝っちまったよ。な~ぁ? 俺が言ったとおりになっただろう?」
「あぁ凄いな。あの兄ちゃんは何者だ?」
「ルイさま!」
「勝ったぞ。」
「ありがとうございます。ご主人様。」
「お前は知らん。」
「そんな~ルイさま!」
リリーとシルフィは喜んでくれた。これで俺も騎士の仲間入りとなる訳だが、俺に騎士や歩兵は務まらない。どちらかと言えば戦闘狂の類いだと考えるから、魔法士のスタンドプレーを希望したい。だが魔法は秘密だぞ。
「ケスラー伯爵……俺を雇って下さい。」
「面白い、いいだろう。」
「雑兵からでも構いません。」
「フハハハ……雑兵か。軍師でもいいぞ。」
「はい~喜んで~。」
「フハハハ……面白い。」
「それで、王子さまで?」
「そうだが、まだ幼すぎだ。今は鍛えている。あ~酒を徴発出来たのか持ってこい、ガハハ……。」
「……よろしくお願いします。……ヒさま!」
「え?」
俺はこの王子さまだけに聞こえる声で語りかける。
「俺が攫ってあげますよ、お姫さま。」
「まぁ……。」
どうしてケスラー伯爵が娘を男の子として言っているのかは分からないが、子種が無い……これだな! 妃に伯爵の兄弟を当てているのだろうかね。それで男の子が産まれたら……この姫さんは何処かに売られていく未来がありそうだ。
「イヤだと言われないのですね?」
「はい、弟がいます。時期に交代させられるのですが、戦争で戦死させたいのが本音のようです。」
「あ、なるほど~でしたら俺が、貴女様を女王へと押し上げてみせますが、乗られますか?」
「うふふ……。」
返事をしないのは俺の実績を見てみたいと考えているのだろうか、強かそうで気に入った。俺は護衛にとシルフィを付けてやる。
「シルフィ、お前に特命だ。このおひ……王子さまの護衛を務めろ。イヤだとは言わさんぞ。」
「イヤで……はい、承知しました。」
俺が指先に魔法陣を出したら渋々ながらに了承してくれた。
「このエルフ……使えます。美味いモノを与えてこき使って下さい。」
「まぁ……ありがと。」
やはり地は女の子だ、別に隠し立てはしないようで安心した。
「シルフィ……夜とぎは禁止だぞ。」
「え~……は、はい。手を出しません。」
俺が指先に魔法陣を出したら渋々ながらに了承してくれた。やっぱり決めた、この女の子は俺が、頂くのだからな。
俺も腹が減ってきた、リリーを連れて群れから出る。こんな男臭い場所に居られるかっつう~の。
俺の家は焦げ臭い……あ~晩飯のおかずが~まっ黒なんだ!
全九話を五日もかからずに書き上げました、故に中身がありません。
また明日に……。