死神へのクリスマスプレゼント
サンタさんお願いです。僕良い子になるからママを返して下さい。
私は海斗の側でいつも海斗を見守っていた。
そう、私は交通事故で先月亡くなったのだ。
息子の海斗はまだ七歳なのに、まだまだ海斗と一緒にいたかった。
夫は以前から愛人を外に囲い、私が亡くなったのを良い事に、後妻としてその愛人を迎え入れた。
まだ海斗を可愛かってくれるなら許せたけど、
夫も愛人も海斗を蔑ろにして、子育てを放棄していたのだ。
私は海斗が心配で成仏出来ず、いつも海斗の側で見守る事しか出来なかった。
すると、愛人が海斗の部屋に入って来てコンビニのお握りを一個放り投げて、一瞥して無言で出て行ってしまった。海斗はお握りを一個寂しそうに食べていた。可哀想な海斗、だけど何もしてあげられないのだ。
そして、ママに会いたいと一人で泣いていた。
私は、サンタさんに息子を守って下さいと、心の中で何度も何度もお願いをした。私はどうなっても良いからどうかどうか海斗をと。サンタクロースなんていない事は解っていたけど、藁にもすがる思いだったのだ。
すると、私は自分の意思に反して体が導かれるように動き出したのだ。
スーっと扉をすり抜け、階段を下り愛人のいる部屋へ。
そして何と愛人の体に入り込んだのだ。
すると、愛人の魂がスーと抜け何処かへ消えてしまった。
私は愛人の体の中に入ったまま、海斗の部屋へ行った。すると、海斗はママーお帰りなさいと抱き付いて来たのだ。
見た目は愛人なのに、海斗には愛人の中の私の存在が解ったようだ。
愛人の魂はというと、何ここー暗いし狭いし出してーと何処からともなく声が聞こえて、
ふと振り返ると、黒の衣装を着たサンタクロースが骸骨にマントを羽織ったどう見ても死神にしか見えない人物と並んで立っていた。そして、サンタの持っている袋から愛人の声が聞こえて来ていたのだ。
すると、サンタは黒ずんだ騒がしい丸い塊を出すと、死神にメリークリスマスと言ってプレゼントをした。
サンタは海斗と私の願いを叶える為なのか、
死神に愛人の魂をプレゼントしたのだ。
そして、更にもう一つ袋からどす黒い塊を出して、オマケだと言い渡していた。
その後、私は愛人の姿で海斗と親子として幸せに暮らしました。
サンタさん、素敵なクリスマスプレゼント有難う。
夫はというと、その日たまたまマンホールの蓋が空いていて、深い穴の底に落下して亡くなったらしい。きっとオマケのどす黒い塊は夫の魂だったのかも知れませんね。