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第13話 俺の親友

俺の名前は立石達也(たていしたつや)


俺は早熟で身体が大きく、年下の兄妹も多かったので精神年齢も高かった。

頭も良く目端も効く方で、同年代の者が馬鹿に思える程だった。

だがそのせいで中学生の一時期、クラスから孤立した事があった。


中学二年の時、俺は些細な事でクラスの中心の生徒達と対立する事になった。

暴力や知識、言論では俺に敵わないと思ったのか、そいつ等は同じクラスや他のクラスまで巻き込んでいき、俺は無視や陰口を叩かれる様になってしまったんだ。

俺は馬鹿共とつるむ気はなかったので、大して気にはしなかった。


そんな状態で中学三年生になった頃、弟が同じ中学に一年生として入学してきた。

そしてまさかとは思ったけど、可愛い弟が奴らから虐めのターゲットにされてしまったんだ。


最初は弟が転んで怪我をしただけだと思ったが、次第におかしいと思った俺は後をつけて虐めの現場を捉える事が出来た。




ーーーーー




数人で弟を囲って跡が残らないように腹を殴りながら弟をなじる者達。

俺はカッとなって飛び出そうとしたけど、そこに現れたのが優太だった。


「君達何してるの?」

「お前には関係ない! どっか行けよ!」


「……でも、その子の泣いてるじゃん」

「うるせいな、このチビ!」


(パシャッ!)

「君達の事はこのカメラで写させてもらったよ。傷害罪って知ってる? 人に暴力を振るうと罪になるんだ。君達の親御さん達に迷惑がかかるかも知れないよ。これを僕が警察に持っていったらどうなるかな? 言っておくけど、このスマホを奪ってももうクラウドストレージに転送されていて無駄だから」


「くそっ! 覚えとけよ!」

「死ねっ! チビが!」

「必ずぶっ殺してやるからな!」


「……動画も撮ってるからね」

「……」


奴らは苦々しげに立ち去っていった。

あの様子だとまた仕掛けて来るかも知れない。


「海斗!」

「兄ちゃん!」


奴らが去って俺は飛び出して行き、泣きながら弟の海斗を抱き締めた。

海斗も俺が来たからなのか安心して号泣した。

俺の為に済まなかった……


「兄さんがいたのか、邪魔しちゃったかな?」


「弟を助けてくれて恩に着るよ。ありがとう」

「助けてくれて、ありがとうございました」


改めて見ると、優太は弟と同じくらいの背丈だった。

よく奴らに立ち向かえたなと思う。


「ううん。でも、また何かやって来そうな感じだったね」

「……」


俺は優太には自然と素直になり、今までの事を全部説明した。

優太が善意の塊の様な男で邪気を感じなかったからだろう。

弟にも事情を聞くと、俺に言うと困ると思って今まで我慢していたそうだ。

可哀想な事をしてしまった……


「う〜ん。一度、僕の父さんに相談してみようか。父さんは人の上に立つ仕事をしているらしいから、きっと良い知恵を貸してくれるよ」


話を聞き終わった優太は、俺達を自宅へ招待してくれた。

道すがら話し、俺と優太は同学年だけど隣の中学だと言う事がわかった。


弟と二人で夕飯をご馳走になり、帰ってきた優太の父に写真や動画と共に事のあらましを話して相談した。


「それはつらい思いをしたね。後は大人の私に任せておきなさい」


話を聞き終わった優太の父は、そう言って俺達に力強く宣言してくれたんだ。




ーーーーー




それから数日経ったある日、教育委員会のお偉いさんと弁護士がこの学校に来て、校長室に入るのを見た者がいたそうだ。


そして急に全校集会が行われて一つの通達があった。

この学校で個人を攻撃する陰湿な虐め行為が行なわれていると情報提供があり、このままだとこの中学からは全ての推薦が出来なくなるかも知れないとの事。


その後、全生徒へのヒアリングが行われた結果、奴らが主犯としてあぶり出される事になり、俺や弟へのいじめ行為は鳴りを潜める事になった。


次の日の夜、自宅に奴らが両親を連れて現れ、俺達に土下座して謝ってきた。

事情を聞くと、親御さんの会社や職場にも何処からか圧力が掛かって、謝罪しないと失職するかもしれないのと、証拠写真もあるので和解出来ないと少年院入りもあるかもと、代理人である弁護士から各家庭に連絡が入ったとの事だった。


奴らはただの遊びのつもりだったのかも知れないが、事が大きくなり過ぎてビビってしまい、後悔の涙を流して謝っている。

一体どんな力があれば学校を初め、ここまでの事が出来るのかわからないが、俺にはこの一連の騒動を起こして俺達を救ってくれたのが誰かはわかっていた。


実際に解決してくれたのは優太の父だがその切っ掛けを作ってくれたのは優太だ。

俺はこの恩を一生忘れる事はないだろう。


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