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第12話 王子様と私の幸せ

学期末の試験結果で優太くんは学年で一位になった。


中学時代でも優太くんは勉強ができる方だったけど、この結果は正直に凄い。

私も勉強は得意だけど今回は十位だったので、今後もずっと優太くんに着いていく為にも頑張っていかなきゃと思う。


あの女、優太くんを裏切った大谷麗華は、五十位以内には入っていない様だった。

それどころか最近は授業もろくに集中出来ていない様で、時折先生に聞かれた質問にも満足に答える事が出来ていなかった。


嬉しい事に、今は優太くんへの不当な噂はほとんど聞かなくなっている。

噂を流していると思われるテニス部員が二人も退学になったからだ。

なにやら匿名で証拠が学校側に届けられ、それが元で処分されたみたい。

誰がやったのかわからないけれど、本当にありがたいと思った。


それとあの女が優太くんを捨ててまで靡いた赤羽先輩が、複数の女子と同時に付き合っているという噂も囁かれるようになった。

それが本当なら天罰だと思うし、いい気味だと思う。


それともう一つ。

優太くんは大器晩成型なのかどんどん背が伸びて成長し、格好良くなっていった。

私は優太くんがどんな容姿だろうと、お金が無かろうと気にはしないけど、優太くん自身が凄く喜んでいるし、私もそんな優太くんを見るのが嬉しかった。




ーーーーー




優太くんにランニングしようかなと相談された私は、その話に飛びついて一緒に走らせてもらえる事になった。

それを切っ掛けに、夏休み中は優太くんと一緒に勉強したり、優太くんの友達とも一緒にプールに遊びに行ったり、二人きりで夏祭りに行ったりもした。


段々と距離を詰めた私は、夏祭りの帰りに思い切って名前呼びを提案し、優太くん、心ちゃん、とお互いを名前で呼びあえるようになった。


夏休みの終わり頃に、優太くんのお母様の紹介で二人で美容院にも行った。

私達に対応してくれたのは何やら凄いカリスマ美容師との事で、地味だった私は自分でもびっくりするくらいの容姿になった。


優太くんもまるで芸能人の様にもの凄く格好良くなっていた。

身体もランニングの効果もあってか、かなり絞られた筋肉質な体型になっている。


私も運動したせいか少し身長が伸びて以前よりもスレンダーな体型を手に入れた。

眼鏡からコンタクトに変えてみたら、皆が私の容姿を褒めてくれるようになった。

でも私は優太くんが喜んでくれれば、それだけでいい。




ーーーーー




その後、私と優太くんは楽しく充実した高校生活を送る事が出来た。


体育祭では優太くんの大活躍で、クラスは学年優勝する事が出来た。

文化祭は優太くんと実行委員になり、皆で一体となって成功させる事が出来た。


そして文化祭前にあの女は学校を辞めていった。

噂によると妊娠したらしい。


そして二年生のテニス部員の赤羽も、同じく学校を辞めて行った。

複数の女子テニス部員にも手を出していた様で、たくさんの女子生徒を妊娠させたのが問題になったとの事だった。


あの女は今頃どんな心境なんだろうか。

幼馴染の優太くんを捨ててまで選んだ男はクズみたいな奴で、色んな女に手を出した挙げ句妊娠させ、自分も学校を辞める羽目になっている。


優太くんを裏切らなければきっと素晴らしい未来が待っていたんだと思う。

優しく格好良い優太くんやそのご両親に包まれて、何不自由なく人生を楽しめたはずだ。


あの女は子供の頃からそこに一番近い位置にいたはずなのに、いつの間にか一番遠くなってしまっていた。

優太くんの立場になって考えると、自分を捨て他人の男の子供を妊娠までした女を愛する事は絶対に無いだろうと思う。


その年のクリスマス、遊びに行った帰りに優太くんが私に告白をしてくれた。

もちろん食い気味にOKした私は、晴れて優太くんと恋人同士になる事ができた。


思い出す子供の頃絶望していた私に差し伸べられた手の温もり。

ずっと夢に見ていた優太くんとの未来。


それを手に入れたと思うと、今までの優太くんへの想いが溢れてきて号泣した。

優太くんは優しく私を抱き寄せて、耳元でずっと一緒にいようと囁いてくれた。


私は絶対に優太くんを裏切らない。




ーーーーー




25年後、私が主人である優太くんと結婚して18年が経っていた。

あれから主人は義父の跡を継いで社長になり、忙しい毎日を送っている。


私達の間には一男一女が生まれていた。

長男はもうあの頃の主人と同じ歳だ。

少し背が低いけど、主人の様にまた一気に伸びるだろう。


主人は私と家族をとても愛してくれて、私は当初夢見た時のまま幸せな日々を送っている。

主人に不満な点はマヨネーズを使い過ぎる事ぐらいしかない。

それだって私が健康に気を付けてあげれば良いだけだ。


私は義母から高級ブティックを引き継いで、子育ての合間に経営している。

その収入から私の両親にも仕送りを送ることができ、親孝行も出来ていた。

幼い頃、両親と共に空腹に喘いでいたのが嘘のように思えるほど幸せだ。


今日は主人は資産整理の為、昔住んでいた家屋の状態を見に行っていた。

もしかしたら、まだあの女はあそこに住んでいるのかもしれない。

きっとあの女はずっと後悔している事だろう。

主人というダイアモンドを捨て、何とか先輩とかいう石ころを選んだのだから。


でも私の主人は凄く優しい。

昔の幼馴染の罪はもう許しているのかも知れない。


今日は何故か主人が早く帰ってくるような気がする。

私は主人がいつ帰って来ても良いように、主人の大好物を準備しよう。


主人の笑顔が私の一番の幸せなのだから。


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