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第10話 私の王子様

私の名前は渡辺心(わたなべこころ)


私の家はたくさん借金があり、もの凄く貧乏だった。

子供こごろに借金取りの怖いオジサンが、父と母に向って良く怒鳴り散らしていたのを覚えている。


家にお金が無いので、私は新しい洋服や文房具も全然買ってもらえず、いつもボロボロの同じ服を着ていたので小学校ではよく乞食女といって馬鹿にされていた。


給食費はなんとか払ってもらえたので給食の時間だけが楽しみだった。

半分命が掛かっているので、給食のお代わりを貰っていたけどそれさえも皆の嘲笑の対象になった。


ある週末の夕方、給食で栄養を摂ることも出来ず空腹のところに、また借金取りの怖いオジサン達が来てしまい、私は急いで家を出て公園に向かった。


私には一人も友達がいなかった。

私が他の子と遊ぶと決まってその子のお母さんがやって来て、私と遊ばないようにとその子に告げて連れて行ってしまうからだ。


公園に行っても遊ぶ友達も無く一人でブランコに座る。

朝からパンの耳を一切れだけしか食べていないので、お腹も凄く空いている。


公園にいる人達は私と目を合わせようともしない。

私は空腹感と孤独感に苛まれて涙を流す。


絵本で読んだように白馬の王子様が助けてくれるなんて事は無い。

いっそもう死んだ方が楽なのかもしれない……

そう思った時だった。


「どうしたの?」


私の耳に優しそうな声が聞こえてきた。

驚いて顔を上げると、私と同じか少し歳下位の男の子が立っていた。

背は少し低くぽっちゃりとした体型だけど、私を凄く心配そうに見ていた。


「大丈夫? どこか痛いの?」

「ううん。何でもない……」


私は強がりを言って男の子を拒絶した。

どうせ誰も私を助けてなんかくれないんだから。


(ググゥ〜!)


その時、私の意思とは無関係にお腹が鳴ってしまった!

男の子は私を馬鹿にするかと思ったけど、私の前にまわると両手を引っ張って立たせてくれた。


「とりあえず僕の家に来てよ!」


驚く私の手を、男の子は自分の家まで強引に引っ張っていく。

家に着くと上品で若々しいお母さんだと思われる人が奥から現れた。

凄く驚いている様で私はすぐに怒られると思ったんだけど、その人は優しく私に微笑んでくれた。


「いらっしゃい」


そして家の電話番号を聞かれ、夕食をご馳走していただける事になった。

熱々のお味噌汁に炊きたてのご飯、デミグラスソースのハンバーグ。

私にとっては凄いご馳走で、美味しくて涙を流しながら食べ尽くした。


その家のお父さんらしき人が帰って来たのもわからずに、何度もご飯をお代わりしてお腹いっぱい食べさせてもらった。

男の子も私の食べる様子を「凄っ!」と言いながらニコニコして見てくれていた。

いつも私の事を乞食女と馬鹿にしてくるクラスの男子とは全然違う感じだ。


食べ終わった後、私は男の子の親に今の自分の置かれている状況を聞かれた。

私はお腹が膨れて満足していたのもあり、包み隠さず全てを話した。

男の子とはお互いの学年と名前を交換して別れ、家まで車で送ってもらった。

同じ学年の五条優太くんというらしい。


送ってくれた後、両親と五条くんのお父さんで何やら話し合った様だった。

それから突然、毎日ご飯をお腹いっぱい食べられる様になった。

それと新しい洋服や文房具も買ってもらうことが出来た。


私が聞きかじった話では五条くんのお父さんが、父の違法な金利の借金を整理してくれて、一時金の立て替えと収入の良い仕事も紹介してくれたらしい。

あの取り立ての怖いオジサン達も、もう二度と家に来る事は無いとの事。


五条くん、いいえ優太くんと出会ってから私の人生は救われた。

きっと優太くんは私にとっての王子様だったんだ。


私はこの恩を一生忘れない。

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