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ベヒモス

 異変の正体はベヒモス! 強大な魔物の前にシエンナ(イザベラ)は……

 ベヒモスは小屋くらいの大きさの体で長い牙と鼻が特徴的な姿をしていた。こう言うと別に怖さやおぞましさが伝わらないかもしれないけど、魔物は魔物。在るべき姿を歪められたもの特有の恐ろしさを備えている。


(……けど、動ける!)


 私は今まで通りレオナルド様の影に隠れながらベヒモスの目につきにくい場所へと移動する。


「さあ来い、化け物っ! 【ヘイト】!」


 ベヒモスはレオナルド様のスキル、【ヘイト】により標的をレオナルド様に向けさせられてしまう。


 ちなみにスキルとは魔力同様、子々孫々に遺伝していく力だが、魔法とは違い、詳しいことが分かっていないもののことを指すらしい。


「ブォォォッ!!!」


 ベヒモスが前脚をレオナルド様に向かって振り下ろす! レオナルド様は盾を構えつつもギリギリまで引き付けて……


 ザシュッ!


 飛び退きざまにベヒモスの脚に斬撃を放つ! 深い傷ではないけど、充分過ぎる。だって本命は……


 ブンッ!


 後ろをとっていたハロルド皇子が右足首辺りを狙って斬りつける! 多分腱を狙ったんだ!


「ブォッ!?」


 痛みなのか驚きなのか、ベヒモスが今までとは違った様子を見せる。だが、その隙にレオナルド様がベヒモスの前脚に斬りつける!


(これなら行ける! 流石レオナルド様!)


 と思ったのだけど……


“シエンナ!”


 斬りつけようと近づいたレオナルド様に向かってベヒモスが長い鼻を鞭のように振るう。前脚の攻撃よりも圧倒的に速いっ!


「【ライトシールド】!」


 ベヒモスの鼻が迫る左側に発動させた防壁魔法が攻撃からレオナルド様の身を守る。そして……


 ザシュシュッ!


 先程よりも深くレオナルド様の剣が突き刺さる。何とレオナルド様は鼻の攻撃に気づいていたはずなのにあえて無視し、全力で斬撃を放ったのだ!


“団長さんはシエンナが何とかするって信じていたんデシよ”


 そ、そうなのかな……


(でも、何か嬉しい……)


 レオナルド様は私のこと、信じてくれてるんだ……


(よしっ、ちゃんとその信頼に応えなきゃ!)


 私がそう思って前を向いた瞬間……


 ドッカーン!!!


 不意に爆音と共に暴風が暴れ狂った!


「キャ──」


 荒れ狂う暴風に吹き飛ばされ、漏れそうになった悲鳴を必死で飲み込む。今、声を上げてレオナルド様の邪魔をしてしまう……


“大きくなっていいデシか、シエンナ!”  


 完全に体が宙に投げ出されてしまったことにシロちゃんの焦った声が聞こえる。頼みたい気もするけど、自分の力で何とかしなきゃ……


(よし、防壁魔法で落下の衝撃をガードしよう!)


 地面へと落下しながらタイミングを計っていると……


 フワッ!


 唐突に体の落下が止まり、赤い何かが視界に映る。これは赤い……髪?


(ハ、ハロルド皇子!?)


 なんと私はハロルド皇子の腕の中にいたのだ!


「馬鹿か! ピンチの時くらいヘルプを出せ! “キャー”でも何でもいいから!」


 相変わらずの憎まれ口だが、いつもと違い、今は余裕がなさそうだ。


(もしかして私のことを心配して……?)


 いつもの素振りからしたら有りえないけど……


「まあ、間に合ったから良かったが」


 見ると、ベヒモスが体勢を崩している。さっきの暴風はベヒモスがレオナルド様の攻撃を受けて倒れ込んだせいなのだろう。


「チャンスだ! いくぞ、イザベラ!」


 そう言ってかけていくハロルド皇子の耳は赤くなっているように見えたけど……見間違い?


(ハロルド視点)


 前からおかしいとは思っていた。何故自分はイザベラを見るとからかったり、意地悪をしたくなるのか……


(俺に必要な才能だから……だからだと思いこんでいたんだが)


 だが、イザベラが宙に投げ出された瞬間、俺は自分の思いちがいに気付かされた。


(くそっ……まさか俺が女に惚れてしまうなんて!)


 俺は好かれたことはあっても自分から誰かを好きになったことはないし、それは当たり前だと思っていた。だが……


(いや、今はベヒモスだ。気持ちを切り替えろ!)


 俺は無理矢理思考を切り替える。一見それはそれで現実的ではある。が、俺は今度こそ分かっていた。俺にとって、今のこのイザベラへの想いに向き合うよりもベヒモスと戦うほうがはるかに容易いのだ。

 次話は明日の夕方6時に投稿します! ひとまず次話でフィナーレです! 


 ……あと、厚かましくはありますが、筆者のモチベに直結するポイントやブクマ等もお願い出来れば大変大変大変嬉しいです。


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