分担
いよいよ魔物討伐実習! 一体どうなるのか!
ザシュ!
レオナルド様の剣がブルーボアの急所を切り裂いた!
(凄い! 流石レオナルド様!)
実習地についた私達は早速ブルーボアという猪型の魔物の群れに遭遇した。が、何のことはない。レオナルド様とハロルド皇子が剣を振るうと、あっという間に全滅してしまった。
(でも、これじゃ連携も何もないんじゃ……)
私のしたことと言えば低レベルの防壁魔法を二回ほど使っただけ。後は手を出す暇もなく、レオナルド様とハロルド皇子が魔物達を倒してしまったのだ。
(それにしても、ハロルド皇子って戦える人なのね)
最初はついてくるだけかと思っていたのだけれど、ハロルド皇子はレオナルド様と肩を並べて戦っている。手慣れているところを見ると、初めてではないのだろう。
(魔物と戦う皇子なんて他にはいないだろうなぁ)
ほんと色んな面で規格外な皇子様だ。
「イザベラ、怪我はない?」
私のことを気づかってくれるレオナルド様……なんとお優し──
「あるわけないよな。ブルーボアはそっちにいってないんだから」
「………」
確かにそうだけど、言い方が他にもあるんじゃないでしょうか、皇子!
「ハリー、あのな」
「良い感じじゃないか? イザベラが防御、俺達が攻撃。分担すればスムーズだ」
「確かに……」
え? どういうこと?
「イザベラのおかげで戦いがスムーズだった。おまけに俺達は怪我一つしていない」
「それは殿下とレオナルド様がお強いからでは?」
「これだけの数なら普通怪我はするな。何せ攻撃と防御を同時にすることは出来ないからな」
……そうなのかしら?
「君の防壁魔法は素晴らしいってことさ、イザベラ」
ドキッ
甘く囁かれたその言葉に思わず心臓の鼓動が高鳴る。
「レオナルド様……」
ああっ……駄目……好きになっちゃ駄──
「まあ、実際にはイザベラのような後衛の仕事はもっと多いだろうな。俺達レベルの剣士ばかりじゃないから」
「確かにな」
ハロルド皇子と話すレオナルド様……なんて凛々しいんだろう……
「次はもう少しイザベラの出番を作ろうと思うが……いけるな、イザベラ?」
「……」
「イザベラ?」
「っ!」
しまった! 私っ!
「分かりました! 行きましょう!」
「「えっ!?」」
誤魔化すように急に歩き出した私に二人は驚くが……仕方ない。今の顔を二人に見られる訳にはいかないから。
※
〈マーガレット視点〉
(バカな人ね。サザーランド学院を出ていってどうするつもりかしら)
シエンナは自分で言った通り身一つで出ていってしまった。学院はその話で騒然となっている。
(これでイーサン様……いえ、侯爵夫人の生活は私のもの)
私の家は男爵……つまりは貴族としては最下位。サザーランド学院で学ぶうちに自分の家では手に入れられないような贅沢な服、豪華なアクセサリーが目に入るようになると我慢が出来なくなってきたのだ。
(それにしても男って馬鹿ね。ちょっと媚を売るだけでよってくるし、女の嘘も見抜けないんだから)
この調子だったら結婚後も上手くイーサンを操縦してやりたい放題できそうね。
(なのに男一人に本気になって馬鹿正直に……そんなんだから横から掠め取られちゃうのよ)
シエンナとイーサン様はすれ違いが多かったけど、どれも時間が解決するような大したことのない問題ばかり。でも、そこに付け込むのは簡単だった。
でもまあ、でもいいじゃない。シエンナはイーサン様と結婚しなくても贅沢な生活ができるんだから。
(フフフ……まあ、あのお嬢様にもいい勉強になったんじゃないかしら)
濡れ衣を着せて邪魔なシエンナを追い払うことに成功して数日はそんなふうに優越感に浸っていたんだけど……唯一誤算だったのはイーサン様だ。
「父上に怒られる……どうしたら」
イーサン様はその日を境にすっかり様子が変わってしまった。意気地のない人。別に私がいるから良いじゃない。
そんなこんなでシエンナが学院を去ってから一週間経った頃、一つの転機が訪れた。
「イーサン、面会ですよ」
「はひっ! は、はい!」
先生が面会人が来たことを告げるだけでこの有り様。まったく……
(まあでも、時間的に家の使いである可能性はあるわね)
放っておいてもいいのだが、イーサンが緊張のあまりちゃんと喋れなかったら困る。あまり良いことじゃないけど、ちょっと聞き耳を立てておきましょうか……
どちらも修羅場!? 次話は明日の夕方6時に投稿します!
……あと、厚かましくはありますが、筆者のモチベに直結するポイントやブクマ等もお願い出来れば大変大変大変嬉しいです。