新たな職業
とんでも皇子、ハロルド殿下からの説明が続きます……
「えっ、これってハロルド皇子のお考えなんですか!?」
話の途中で声を上げるなんて、あまり礼儀正しくないどころか下手したら叱責を受ける行為。だが……
(一国の皇子が魔術院の実習内容を考えたりするの???)
型破りな皇子であることは十分に分かってる。それこそ身をもって。だが、皇子といえば大臣や他国を相手にしたことを考えるのではないだろうか。
(実習内容なんて魔法院の上級法術士が考えれば良いんじゃ……)
一体何を考えてるの、この人。
「いい反応だ。やはり見込みがあるぞ、イザベラ!」
何なの!? おちょくってるの、この人……
「皇子は全く……イザベラ、実はこれはただの実習じゃないんだ」
レオナルド様はハロルド皇子にため息をついた後、いつものような優しい声で私に説明してくれた。
「実は皇子は魔物への対処についてある画期的なアイデアを持っておられるんだ」
「画期的なアイデア……ですか?」
現在、魔物の討伐は六つある騎士団がそれぞれ地域を分担して行っている。ただ、騎士団の仕事は魔物の討伐だけではない。むしろ他国からの干渉──例えば、国境侵犯や軍事的な挑発行為など──が本業だ。なので、しなければならないことが重なった場合、どうしても魔物の討伐が後回しになることが課題になっている。
「ああ。皇子は魔物の討伐を担う職業を作れないかと考えておられる」
「!!!」
そんなこと出来るの!?
(だって魔法が使えるのは貴族だけだし、武器を使うにしても訓練を受けるには騎士団に入らなきゃいけないし……)
そして騎士団に入れるのは貴族のみ。だが、貴族だけで魔物と戦うのであれば、それは今と変わらないんじゃ……
「勿論、今のままでは駄目だ。魔法や武具のない平民が魔物と戦うことは出来ない。しかし、たとえそれがクリアされても、平民では騎士達のように皆が全てを揃えることは無理だろうから騎士団のような集団戦は出来ない」
何処かのループで騎士の強みは皆が一丸となって仕掛ける集団戦だと聞いたことがある。突撃したり、盾を並べて魔物の攻撃を防いだりというのは全員が同じような装備と技術をもっているから出来ること。もし、馬や盾のない騎士がいたらこうしたことは出来ないのだ。
「だから新しい戦い方を考える必要がある。この実習はそのためのものだ」
何かとてつもないスケールの話……
(私が役に立つとは思えないけど……)
“大丈夫デシ! 聖女の力があれば防御と回復は完璧デシ!”
でもそれじゃ魔物は倒せないんじゃ……
「騎士ではない平民の戦い方、それは役割分担だ」
ハロルド皇子は得意げに話し始めた。
「騎士のように全員が同じ行動を取るのではなく、防御と攻撃、回復を分担するんだ。例えばレオナルドが攻撃をするときにはイザベラが防御する。昨日の防壁魔法があればばっちりだ」
ば、ばれてる……
(あれ、知ってたなら助けてくれても良かったんじゃ……)
魔法院に誘ったのはハロルド皇子なんだし……
「助けはいらなかっただろ?」
う、顔に出てたのかな……
「それにアンジェラと仲良くなれたそうじゃないか。私も君の実力も確認できたし、良いことづくめ。問題無しだ」
そうかな? それは結果論でしかないと思うけど……
「話を戻すが、今日の実習はこの新しい戦い方が魔物の討伐に通用するかどうかを試したい。まあ、行くのは雑魚しか出ない場所だ。心配はいらない」
本当かな。信じていいのかな……
ホント、大丈夫なのか? 次話は明日の夕方6時に投稿します!
……あと、厚かましくはありますが、筆者のモチベに直結するポイントやブクマ等もお願い出来れば大変大変大変嬉しいです。