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カミサマ専門情報屋  作者: 光龍
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1話

※初投稿なので諸々の勝手が分かっていません!もし何か問題ありましたら教えていただけると助かります。

※初めはギャグに寄りますがちゃんとホラー展開に移ります。

「あ~!その条件に当てはまる生贄ならこの辺りの地区によくいますよ!」


「カミサマが上手く招来出来なかった?……それ、魔法陣の書き方間違えてます。狂信者の癖に何で間違えてるんですか。」


「カミサマの好きな物教えてくださいって……そりゃあ血でしょ。あと処女。」



カミサマ専門情報屋、今日も仕方なく迷える狂信者こひつじとお話中。



──────────────



深夜1時。日本の某所。

インターホンの音が鳴り、仕事場の主は小さく欠伸をしながら椅子から立ち上がる。

橙の髪を後ろで結い、水色の大きめな瞳を数度瞬きさせた彼はインターホンの画面を見た。


フードを被りいかにも怪しい人を醸し出す画面の向こう側に苦笑いをしながらもボタンを押す。


「もしもし」


当たりを見回し少しの間が空いて、ようやく口が開く。どうやら男性のようだ。


「あの……狼が逃げ込んでいませんか。」


「いいえ。」


「狐でしたか。」


「そ!」


橙髪の彼はインターホン越しに小さく笑って玄関扉を開けに行く。今の流れが「合言葉」となっているらしい。流石にこんな身なりでこの時間に普通の人間が来られても彼は困ってしまうだろうが。


ガチャと音を立てて開けば扉の前で待っていた黒ずくめの男は「ぇ……」と零した。驚いているのかその後の言葉は生み出されず、橙髪の彼の方も首を傾げている。扉が開き、見つめ合い、妙な間が流れてから訪ねてきた男は呟いた。


「お父さんかお母さんいるかな……?」


「はぁ!?!?」


深夜に響き渡る大声に男はビクッと肩を揺らす。


「おいおい、確かにオレは156cmしかないけどなぁ!?これでも26歳なの!!!!喧嘩しに来たのか!?!?」


「大人ぁ!?!?男!?!?」


この2人、凡そ20cm差である。子供だと思われたことに頬を膨らませる様はどこからどう見てもその通りなのだが、本人はかなり不服そうだ。性別まで間違えたせいかいつもより怒っている。可愛らしい顔立ちにポニーテールなのだからこれに関しても幾度か間違えられたことはあっただろう。

全てを知った男は慌てて頭を下げる。


「す、すみません……なんせ名前しか知らなくて……」


そうして、とても申し訳なさそうな声色で続けた。


「ジェイク・フォスターさん、ですよね……??」


フン、と鼻を鳴らす彼は否定の言葉を紡がない。彼こそが狂信者界隈で有名になっている情報屋、ジェイク・フォスターだ。







お茶を出され少しソワソワとしている男……今回情報を貰いに来た狂信者はフードを取りソファに座っていた。対面にジェイクがペンとメモ帳を持って腰掛ける。


「僕優しいので先程の件は許しますけど~。開店早々来るとは相当焦ってるんですね。」


深夜1時、というのはジェイクが情報屋として活動し始める時間帯だ。昼間はオカルト記者を名乗り情報集めを行っている。一応そのような雑誌を作る会社にいるのだが社員はジェイクの裏の顔に全く気付かないのだから面白い。適度な情報の隠蔽もお手の物である。


「そう、なんです……ジェイクさんが記者活動されてる時間からずっと話しかけるタイミング伺ってて……」


「え?」


「13時、喫茶店入ってましたよね…あそこのコーヒー美味しいんですよね…」


「ストーカーするのは自分のカミサマだけにしてくれませんかねえ……」


ジェイクは狂信者達と関わりがあるものの本人が狂信者という訳では無い。たまに起こる常人からして可笑しいと思うような行動にはドン引きするのもあるあるになっていた。


狂信者とはいえ上手く日常生活を送っている人間が多い為 ジェイクも気付かなかったのだろう。微妙な顔をしていれば狂信者の男は再び頭を下げた。明らかに元気が無い様子で、ここまで急いできたとなれば何か重大なことらしい。


「本題……なんですが……」


「カミサマを呼んで町を壊滅させたのですが、どうやらその町が敵対教団の縄張りだったみたいですごく怒られていて……」


「もういっそ、アイツらを皆〇しにしようと思うんですが本拠地って分かったりします……?」


さて、とんでもない事を言っているな。とジェイクは呆れた顔で思った。

そういえば3日ほど前に近くの国で町が竜巻に襲われ壊滅したという話を聞いたが、竜巻だけとは思えない町の荒れようや人の死体が少ないということでオカルト界隈では湧いていた話だ。ジェイクもそのニュースをコーヒーを啜りながら眺めていた記憶がある。どうせこんな事だろうとは思っていた。


「本拠地…どうでしょう。相手の教団の名前教えてもらえます?」


狂信者は素直に教団の名前を口にした。ジェイクはソファから立ち上がり「ちょっと待ってて」と何処か別の場所へ歩いていった。


扉をひとつ抜け段ボールを退かし、床下の鍵穴に鍵を差し込む。1回転させて開ければ地下へ続く階段が現れた。真っ暗な中を降りていき1番下に着いたことを確認すると壁に触れる。正しくは電気のスイッチで、手馴れた様子の指に反応し明かりが着いた。


地下は本棚で敷き詰められている。主にジェイクが調べたオカルト関連のものばかりだが、中には狂信者から貰ってしまった魔術書や魔法陣の書き方など果たして一般人に渡していいものか怪しいものもある。


視線を本やファイルの背表紙から背表紙へ飛ばし、教えてもらった教団の名前を探し当てる。ファイルを手に取り前も見た文面を指でなぞった。


事件が起きた3日前、町を壊滅させるほどなのだから争い真っ只中なのだと思っていた。何処の教団が争っているのかと町の名前から調べてこの教団を引き当てたのだ。世界中を飛び回っているジェイクは勿論この教団のことも知っていたし何なら情報を渡したこともある。本拠地の場所も教祖の名前もそのファイルの中に綴られていた。


「情報どうしようかなあ~……」


情報を渡したことがあるということは、もし今情報を欲しがっている狂信者が下手を打って生存者を出してしまった場合 真っ先にジェイクが問い詰められるのだ。相手が一般人なら平気で渡したのだが狂信者であるため、バレたら死ぬより惨いことをされるだろう。なんなら呪文を得た狂信者はワープやらなんやらを使いこなしているので逃げ場が無さすぎる。最悪町か国ごと逝かれる。


うんうんと悩みながらもあまり時間が経ってはいけないと、ジェイクはファイルを棚に戻した。ヤバい人間相手も中々に大変だ。電気を消して階段を上り、床下の扉を見えないように段ボールで隠す。


ようやっと戻ってきたジェイクを狂信者は期待の眼差しで見つめる。そんな眩しい瞳が出来るなら真っ当な人間として生きればいいのに……なんて思うがジェイクは言葉を飲み込んで「お待たせしました。」と言った。


「本拠地の場所は判明していますね。ただ…」


「ただ?」


「本拠地というのは相手にとって最重要情報、僕も苦労を重ねて手に入れたものになります。代金はかなり高めにしますよ。」


ジェイクは笑顔を貼り付けて2本の指を立てる。


「2億でどうですか。」


「に、におく……!?」


狂信者は目を見開いて指とジェイクの顔を交互に見やる。それはまさに冗談だと言われるのを待っているようだった。

ジェイクの思惑としてはありえない金額を出して諦めてもらおうという算段だ。勝手に調べて勝手に争ってくれとそう願っている。危ない職であることは理解していても死にたい訳では無い。

これで助かったかと息を吐いたのも束の間、



「そんな安くて良いんですか……!?用意、出来ます!!この後すぐ!!!」


「間違えました。2京です。」



ですよねと項垂れる狂信者の見えないところで思わず表情が崩れる。彼の調査だと敵対しているどの教団も小さく そこまで金銭面での余裕が無かった筈だ。だから2億で十分だと考えていたのに安くて驚かれたことに驚いた。また再調査が必要になりそうだと考えると共に、2京という馬鹿の数字をすんなり受け入れた知能の低さに感謝する。


「払えないなら払えるようになってからお願いしますね。」


引き攣った笑みを浮かべながらそう言えば相手はか細い声で「はい」と答えた。何とか難は逃れたようだ。ジェイクは2を表していた指をそのまま横の髪へ持っていき、くるくると巻き付けて遊び始める。


「まぁこれは本拠地の情報だったから高かっただけですよ。他の重要度の低いものであれば出せるかも。」


「本当ですか!?」


やけに食い付きのいい狂信者にうっかり笑みが零れるも相手には気付かれていない。ジェイクの悪い所と言えば情報以外で嘘を吐く所だ。今だって金銭感覚緩々の狂信者を見て金を無駄に奪い取ろうという手口である。


「じゃあ……そうだ、敵の教団の幹部の情報とかあります?」


「ああ、それなら1人あたり1億で。」


「よっしゃ!」


玩具を与えた子どものようにはしゃぐ狂信者。ジェイクも大量収入がほぼ確定したので内心ウキウキである。会話内容以外は可愛らしい空間だろう。


「ところで幹部って何人いるんですかね……。」


「それは500万で。」


「なるほど……じゃあ明日用意できるだけのお金を持ってきます!」


行動力の化身というのは大抵褒められがちだが、この狂信者に至っては「軽率」と言った方が正しい気がする。見るからに教祖でも幹部でも無いようなのでどれほど用意できるかは謎だが明日に期待してみようとジェイクは頷いた。


その後、来た時とうって変わって周囲に花でも散らしていそうな勢いの狂信者は感謝の言葉を告げて出ていく。にこやかに手を振って見送れば建物内は静かになった。

一息ついてソファに腰を下ろす。

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