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04 勇者の非道
目が覚めた私はおそらく錯乱していたのだろう。
よりにもよって魔王を頼るなんて。
しかしその時の私は、それが良いアイデアの様に思えてならなかったのだ。
だから私は、いかに勇者様が邪悪な存在か話した。
「勇者様は、私の手足を切り落として氷漬けにして、道具のように幽閉するつもりなんです」
「なっ、なんだ、と。仲間に対して何という非道をっ」
「それに勇者様は、第二の魔王となって、魔族も人間も等しく滅ぼしてしまおうと考えているのです」
「そっ、そんな事が! やつは同胞も手にかけるというのかっ」
「それだけでなく、勇者様は仲間を手にかけて、自分の罪をなすりつけるありさまで」
「くっ、なんと卑劣なっ!」
魔王様は意外に純粋だった。
そして、私が大勢の人に訴えかけて信じてもらえなかった話を、魔王様だけは信じてくれるようだった。
今までは魔王というだけで問答無用で邪悪な存在だと思っていた。けれど勘違いしていたのかもしれない。