1/5
01 逃避行の最中
雷が鳴り、雨粒が叩くように降り注ぐ。
早く逃げなければ、この嵐に乗じてできるだけ遠くに。
私はあの人の本性を知ってしまった。
誰からも尊敬される素晴らしい勇者様の裏の顔を。
あんなにも、平和を求め、人々のために働いていた、勇者様の本音を。
このままでは私は殺されてしまうだろう。
だから、あの人の手の届かないところまで逃げなければならない。
私のこの聖女の力を悪用されたら、どんな事になるのか。
あの人は、魔王を倒すための勇者なのに、第二の魔王になろうとしている。
新たなる世界の恐怖の根源に。
そんな事あってはいけないけれど、非力な私ではとめられない。
だから、逃げるしかないのだ。